ボーイングCEO・MAX8:2機墜落・誤作動認める!

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失速防止装置MCASA!
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米航空機大手ボーイングのミュイレンバーグ最高経営責任者(CEO)は4月4日、新型旅客機737MAX8の2件の墜落事故で、失速防止装置が「いずれも不正確な情報をもとに作動した」とする声明を発表した。装置の誤作動が2件の事故を誘発したことを認めたうえで、同様の問題発生を防ぐ操縦システムの改善を急ぐ方針を強調した。
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3月発生したエチオピア航空機の墜落で、事故原因を調査していたエチオピア航空当局は4月4日、「操縦士は(ボーイングが)定めた手順に従い対応したが、機体をコントロールできなかった」とする暫定結果を発表。操縦士を擁護するとともに、ボーイングに対して操縦系統の改善を求めた。
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ミュイレンバーグ氏はこれを受けて声明を出し、同型機に搭載された「MCAS」と呼ばれる失速防止装置が誤作動したと明言した。同氏は「リスクを除去するのはわれわれの責任だ」と指摘。「その方法は分かっている」として再発防止策の早期実現に自信を示した。
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MCASは機首が上がりすぎて失速の恐れが生じると、自動的に作動して機首を下げる。米メディアによると、2018年10月にインドネシアで起きた墜落事故では装置が作動して強制的に機首が下がり、操縦士が手動で姿勢を立て直そうとしたとみられている。機首の角度を測定するセンサーが不正確な情報を送り、MCASが誤作動した可能性も指摘されていた。
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エチオピア当局の報告は事故当時のMCASの作動状況には具体的に触れず、操縦士の意図に反して機首が繰り返し下がっていたとだけ指摘した。同当局は1年以内に最終報告書をまとめる予定で、安全性が確認されるまでは同型機の運航を再開すべきではないとの認識も示した。すでに中国や欧州、米国など各国・地域の当局が同型機の運航を停止している。
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米連邦航空局(FAA)は4日の声明で「事故原因の調査は続いているが、事実解明が進み次第、適切な対応策をとる」とした。米運輸省は、FAAが737MAX8の安全性を認証した過程を調査している。
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元日本航空機長で航空評論家の小林宏之氏はこう分析する。

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「迎角を検知するセンサーか、センサーが検知したあとで自動的に機首を下げさせる仕組みに不具合があったのではないか」
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エチオピアの墜落事故の現場で機体がほとんど残らないほど激しく炎上していたのも、離陸直後で機首は上がっていて実際には失速していないにもかかわらず、システムが失速していると誤認し、自動的に機首を下げて速度を上げた結果ではないかとの見方だ。
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「時速600~700kmの高速で地上に激突したため、バラバラになったのでは」(小林氏)
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安全のために導入したはずの新システムがあだとなった可能性が高いというわけだ。
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こうしたシステム的な不具合が事故の原因ではないかという見方は、トランプ大統領も運航停止の大統領令を出す前日にツイッターで示している。
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「もはやパイロットではなく、MIT(マサチューセッツ工科大学)のコンピューターサイエンティストが必要になっている。多くの製品(機材)がそのような状況になっている。不必要な改良が行われている」
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今後、FAAなどの当局やボーイングが、システムの不具合を二つの事故の原因として正式に認める可能性が高そうだ。
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短期間での2度目の大事故となった3月10日(現地時間)のエチオピア航空の墜落事故に先立つ数カ月前、数名のパイロットがボーイング737MAX8に関して、少なくとも問題を5件、報告していた。
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ダラス・モーニング・ニュースによると、ここ数カ月で少なくとも5件の問題が航空当局に提出されていた。ある機長はフライトマニュアルを「不適切で、ほぼ犯罪と言えるほど不十分」と呼んだ。
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問題はパイロットがインシデント(事故につながりかねない事態)を匿名で報告できるFAA(アメリカ連邦航空局)のインシデント・データベースに書き込まれていた。
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特に737MAXのオートパイロット・システムの問題点が強調された。オートパイロットは2018年10月のライオンエア610便の墜落事故の後にも疑問視されていた。
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ライオンエアの墜落現場から回収されたブラックボックスの解析結果から、610便はセンサーの不具合が原因で操縦不能となり急降下したようだと伝えられた。
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エチオピア航空のCEO、テウォルデ・ゲブレマリアム氏はライオンエアの墜落事故と10日の墜落事故には類似点が「存在する」とCNNに語った。
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「機体のコントロールが難しくなり、パイロットは空港に戻ることを要請していた」とゲブレマリアムCEOは述べた。
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737MAXは2018年春に運航が開始されたばかり。
「737MAXをめぐる議論の中心にあるのは、MCAS」とBusiness InsiderでTransportationを担当するBenjamin Zhangは記した。
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「大型で、燃料効率に優れたエンジンを搭載するために、ボーイングはエンジンの取り付け方法を変更した。この変更により機体の重心位置が変わり、737MAXはフライト中に機首が上がりやすくなり、失速する恐れが増した」とZhangは述べた。
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「MCASはこの傾向に自動的に対応し、機首を下に向けるよう設計されている」パイロットの操縦を支援する「MCAS」というシステムが原因との見方が有力になっている。
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737 MAXのエンジンは、初期型よりも大きく、前世代と比較すると14%の低燃費化を実現している。航空業界誌の『エア・カレント』の解説によると、新しい自動化システムは、大型エンジンを搭載した737 MAXを安定化させるために設置された。新型エンジンの設置位置と形状により、状況によっては機首が上がりやすくなり、航空機が失速してしまうことがあるため、操縦方法が変わったのだ。新しい自動化システムである「操縦特性向上システム(MCAS)」は、その傾向を弱めることを意図されていた。
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MCASは、空力的な要因による過剰なピッチアップ(機首上げ)と迎角の増大、そしてそれに起因する失速の発生を、自動的に抑制するシステムである。ピッチアップが発生する可能性がある条件がそろった時に自動的に作動して、水平尾翼の取付角を変化させることで機首を下げる仕組みになっている。
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ところが、迎角を検出するAoAセンサーに問題があり、実際には問題ない迎角であるにもかかわらず、間違ったデータを送ると、どうなるか。MCASはそれに基づいて水平尾翼の取付角を変化させて、機首下げの力を発生させてしまう可能性がある、との指摘がなされている。
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そこでボーイングがとった対策は、MCASのソフトウェアを修正するというもの。そのポイントは以下の3点。
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1.機首の左右に付いているAoAセンサーからのデータを比較して、フラップが収納状態で、かつ左右のAoAセンサーから来るデータが5.5度以上食い違っていた場には、MCASは作動しない。また、パイロットに対しては、AoAセンサーの食い違いに関する警告をディスプレイに表示する。
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2.MCASが作動した時でも、その動作範囲を限定する。具体的には、パイロットが操縦桿を引いて機首下げ操作を相殺できる範囲でのみ、MACSによる自動補正を実施する。そして、パイロットはいつでもMCASによる自動補正をオーバーライドできる。
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3.MCASが作動して迎角を減らし、機体を通常の姿勢に戻した時点で、MCASは作動を停止する。つまり、過剰な機首下げに陥る可能性を防ぐ動作になる。
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AoAセンサーに限ったことではないが、センサーなどの機器が1つしかないと、それが故障した時に致命的な事態につながる可能性がある。同じ機器を複数装備すれば、片方が故障しても他方が健全な状態で生き残る可能性がある。
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AoAセンサーを機首の左右に1つずつ取り付けている場合に、その両方が同じように故障して、かつ、同じように間違った値を出す可能性は、片方が故障して間違った値を出す可能性よりも大幅に低いだろう。そこで、左右のAoAセンサーから得られる値が食い違った時はエラーが起きていると判断するようにする。
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実は、737MAXにはオプション機能として、2つのAoAセンサーから送られてきたデータを表示する機能と、2つのAoAセンサーから読み取ったデータが一致しない場合に警告を発する機能(AoA Disagree Alert)の設定があった。しかしオプション機能だから、カスタマーが「要らない」と判断すれば、これらの機能は載らない。
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われわれがクルマを買う時は、価格を考慮に入れながら、オプション品やオプション機能の要否を判断しているが、それは航空機でも同じ。オプション機能をつければ機体の価格は上がるから、コスト抑制のためになしで済ませる、という判断も成立し得る。逆に、アメリカン航空やサウスウエスト航空のように、これらのオプション機能を備えた事例もある。
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米国家運輸安全委員会の元幹部のピーター・ゴールズは、FAAがエチオピア航空の事故の翌日に通知を出したのは「MCASの搭載に懸念を抱き、その仕組みや誤作動時の対処方法について、操縦士たちに確実に理解させるためだ。こうした情報は、納入時に配布されるマニュアルや運用ガイドでは強調されていなかった」と語る。
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ゴールズによれば、必要な情報は当初「マニュアルの中に埋没」していたので、FAAは操縦士がしっかり理解できるように強調しているのだという。さらに、アメリカ人パイロットを含む多くの操縦士は、ライオン・エアの事故が起きるまでMCASの存在に気付いておらず、訓練生の理解となると、さらに遅れている国があるとも指摘した。「途上国などでは、アメリカの航空会社ほどには訓練が行われていないだろう」
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