設計プロポーザル:発注者にとっては都合が良い!

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選定した審査委員長に左右される場合も!
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プロポーザル方式(総合評価型と技術者評価型がある)の設計入札は会計法第29条の3第4項「契約の性質または目的が競争を許さない」場合の随意契約となる。
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国土交通省は建築設計において、発注者の企画目的を実現するため、発注者が要求する品質、性能の設計条件をもとに設計者が創意工夫をもって施設の空間構成などを具体化するものであり、成果物があらかじめ特定できない業務である。設計料の多寡により選定するのではなく、設計者の創造性、技術力、経験などを適正に審査のうえ、その設計業務の内容に最も適した設計者を選定すると定義している。
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コンペ方式の、最も優れた設計案を選定するのと違い、プロポは設計者を対象として選択する。根底には、設計対象に対する発想、解決方法等の提案などを求めており、設計案を作る上で発注者との共同作業をしていくうえで、最も適した設計者を選定しようとするものである。発注者が設計委託にふさわしい組織と人を選ぶわけである。
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このプロポ方式は、発注者が委託しようとする相手方を最初から決めて選定を進めれるとも解釈できる。それは発注者が複数の設計者から対象プロジェクトの設計業務に対する設計体制、実施方法、プロジェクトに対する考え方等についての具体的な設計案を求めることはせず、図形表現はイラスト・イメージ図程度までで、必要に応じてプレゼンテーションやヒアリングを行い設計者を選んでいる。初めから選定者ありきで進めているいけるところに、不透明性が指摘される所以でもある。
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プロポにしろ、コンペにしろ、最も適した設計者を選ぶ過程で候補者を絞らずに広く設計者を求める中で、コンペでは業務を受注できるか否か不明な状況の中で設計案を作成するという負担が設計者にかかるプロポは応募者が課題に対して、提案と実施方針を示すにとどまるため、費用、労力、時間が発注者、応募者共に負担が少なくて済んでいる。
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選定に当たり、発注者側の選定委員会の委員の選定が、発注者側の委託選任により決まるが、この選定委員会のメンバーと応募者側の設計者間で、大学の先輩後輩、同期、ゼミの仲間、後援会などでの同じ講師、多種多様の人的つながりの中で、選定委員と応募者、プロジェクト内容など長期間見ていくと庁舎、学校、文化施設、ホールなど特定分野などで学会権威者が選定委員長を務めたときに委員長と昵懇の設計事務所が選定されるなど、不審点も見られる。プロポは本当に公明正大な審査が行われていると言えるだろうか。
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最近の民間大手病院の改築でプロポーザル方式をとっているが、基準をどこに置いて選定しているのか良くわからない。選定委員は病院経営者であり、理事長・院長の眼鏡にかなった業者を主に残り数社を対象としているが、応募者が自ら手を挙げたのか、選定者側から参加してと頼み込んだのか良くわからない。選定内容をオープンにしないが、プロポと言う名前で業者選定している発注者も多い。
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2015年度に全国営繕主管課長会議が3年ぶりに設計業務の実態調査結果(13年度実施)を公表した。この中で、設計業務での選定方式でプロポと回答した都道府県・政令都市では20.9%、市町村では7.1%であった。これで分かるが、取り組みには開きがあり、市町村がなぜ採用していないのかは、「過去に例がない」45.2%、設計工程の余裕がなくなる、人員不足など手間がかけられない、審査体制を整えられない等が挙げられている。
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最後にメリット、デメリットを上げてみる。
・メリット
1.高い技術力や経験を持つ設計者を選定できる。
2.具体的設計を発注者と受注者との共同作業で進められることで、より質の高い建築設計になる。
3.選定委員会で設計者を選定するため、発注者の意向をよく理解した設計者を選択できる。
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・デメリット
1.手続きに、ある程度の基幹が必要となり、一般競争入札や指名競争入札に比べると設計委託契約の時期が遅くなる。
2.審査の公平性、選定プロセスの透明性が問われる例もあり、どうすべきかは今後の課題でもある。
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