ゼネコン40社・受注益:最高益だが・何年続く!

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16年度・上期決算分析!
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何時まで儲けれるのか!
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建設経済研究所は12月15日、主要建設会社40社を対象にした16年度上半期(16年4~9月)の決算分析を発表した。単体ベースの受注高は前年同期比7・3%増の6兆2259億円で、2年ぶりに6兆円台を回復。連結ベースの売上高は完成工事高の減少などが響き減少に転じたが、売り上げ総利益は受注時採算の改善などが奏功し、直近5年間で最高水準となる23・0%増の8474億円となった。
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単体受注高のうち、建築は4・8%増の4兆3268億円。準大手(11社)が微減となったものの、大手(5社)と中堅(24社)で増加し、4兆円台を維持した。
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土木は17・3%増の1兆7831億円。堅調な建設投資や大型工事の増加などにより、大手、準大手、中堅の全階層とも半数以上の企業が前年同期より増加した。
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連結の売上高は2・6%減の6兆6129億円。全階層で減少に転じたが、直近5年間では前年同期に次ぐ高い水準を維持している。
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連結の売り上げ総利益率は2・7ポイント上がって12・8%となった。階層別に見ると大手が最も利益額、利益率とも増やし、準大手、中堅も着実な改善が見られた。

受注時採算の改善に加え、上昇すると予想された建設コストが比較的落ち着いていることなどが背景にあるとみられる。
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営業利益、純利益についても、利益額・利益率ともに全階層で増加・上昇し、40社すべて営業黒字・最終黒字を確保した。
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特に大手ゼネコン4社の業績は絶好調で、鹿島の回復ぶりがすごい。15年3月期には単体で営業赤字に転落していたが、16年の営業利益は前期比777%贈の1110億円となり24年ぶりに過去最高益を更新した。各社量より質に切り替え、震災前に受注していた低採算工事の消化も進み、選別受注とともに資材・労務費の上昇が安定していることも利益上昇に寄与している。
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建設需要は首都圏を中心に旺盛で、特に東京都内は大規模プロジェクトが目白押しの状態だ。大手町の三井不動産と物産の開発2棟は鹿島が受注し建設費は1000億円超、東京駅前の三菱地所の開発はさらに規模も大きくビル4棟で竣工はA棟は230mで2021年、B棟は390mで2023年度着工し27年度完成、C棟は事務所で9f建て2027年度完成、D棟は65mで2022年度の完成だ。
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五輪後には本格的にインフラ需要も見込まれ、特に高速道は全国で大規模改修が実施される。事業の総額も44兆円と大規模で、全国の建設業が大なり小なり恩恵にあずかれることになる。
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安倍首相は9月12日の第1回未来投資会議で「建設現場の生産性を、2025年までに20%向上させるよう目指します」と明言した。安倍政権ではこれまで、農業やエネルギーなど様々な分野で構造改革を実施してきた。しかし政府には、「アベノミクス」はまだ道半ばだという認識がある。産業界の動きを活発化し、近年のめざましい技術革新を国民生活や社会に取り入れるためには何が障害になっているのか。改めて明らかにし、その解決を図っていくのが会議の目的だ。
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最初の議題として取り上げられたのは建設業の人手不足が深刻であるとの認識の上、どのように人手不足に対処するのか、安倍首相は以下のように述べた。
「3年以内に、橋やトンネル、ダムなどの公共工事の現場で、測量にドローン等を投入し、施工、検査に至る建設プロセス全体を三次元データでつなぐ、新たな建設手法を導入します。人手による現場作業が置き換わり、これまで習得するのに何年もかかったノウハウも数カ月で身に付けられるようになる。3Kのイメージを払拭し、多様な人材を呼び込むことで、人手不足も解消します。全国津々浦々で中小の建設現場も劇的に変わります」。
施工でのICTの活用に加え、構造物の規格の標準化による施工効率の向上や、発注時期の平準化などによって、建設産業の生産性を高める取り組みで、今年度から本格化している。
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とは言いながら、名古屋でのリニア工事起工式も行われ、大型工事が本格化する年末からジワリと労務費の上昇が見込まれる。
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大規模プロジェクトは、前記2カ所以外に、大手町2丁目地区再開発、八重洲2丁目北地区再開発、日本橋2丁目地区再開発、日本橋室町3丁目地区再開発、四ツ谷駅前再開発、虎ノ門ヒルズ周辺3棟建設、虎ノ門トラストシティワールドゲート、品川新駅、新橋駅西口地区再開発など目白押しだ。
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これに加え、五輪施設として、新国立競技場(大成JV)、武蔵野の森アリーナ(竹中JV)、海の森ボート・カヌー場(大成JV)、オリンピックアクアティクスセンター(大林組JV)、有明テニスの森(業者未定144億円)、選手村建設(住宅22棟・三井不動産、NTTなど11社グループ)がある。
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リニア新幹線工事も本格化する。品川駅新駅設北工区(清水・名工・三井住友JV)、品川駅新設南工区(大林・東亜・熊谷JV)、品川駅新設非開削工区(安藤ハザマ)、南アルプストンネル山梨工区(大成・佐藤・銭高JV)、南アルプストンネル長野工区(鹿島・飛島・フジタJV)、名古屋駅新設中央東工区(JR東海建設・前田建設・シーエス建設JV)、名古屋駅新設中央西工区(大林・JR東海建設・前田建設JV)、以降各工区駅舎などがこれから順次発注されていく。
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安倍首相の任期が18年9月に満了するが、総裁の任期延長「3期9年」となり、特別問題が発生しなければ3年延長されオリンピック後の2021年9月までとなる。公共工事は「時の政権に左右され」旧民主党政権時は1992年当時に比べ半減し、42兆円程度となってしまい、自民党政権に戻り50兆円前後に増えている。
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国内のマンション市況は陰りはじめ、高値物件は敬遠され始めている。オフイスビルも18~20年は供給が多く賃料は下落傾向になると見込まれ、事業者にブレーキが掛るのではと危惧されている。
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建設業界のリスクは、国内問題だけでなく、世界情勢にも左右される。国外工事の受注では発注相手国の事情により常に危険(政情と集金)が同居した中で施工され、大手ゼネコンは軒並み赤字をだし撤退を余儀なくされている。インド高速鉄道の受注に目途が立ち、JICAが設計案作成や入札を支援する「インド国高速鉄道建設事業詳細設計調査」で日本コンサルタンツ、日本工営、オリエンタルコンサルタンツグローバルJVと契約した。インド進出期待される大手ゼネコンは、「過去、インド市場で利益を確保できたことはない」と進出に慎重を期している。商習慣の違いと宗教の違いは水と油ほど違い、日本式は通用しない中、各社はどう判断するか、、、。
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否応なしに、技術職人の人件費は高騰する。ゼネコンはその時、利益確保の活路をどこに求めるのか。下請け叩きの従来法は通用しなくなる。