全国の水門・ポンプ建物:耐震性を点検へ・会計検査院調査!

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地震で使用不能の恐れ・40%!
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水害を防ぐ「水門」などの河川管理施設の一部を会計検査院が抽出調査したところ、地震で使用不能となる恐れのある施設が約4割に上ったことがわかった。水門やポンプを動かす「操作室」の耐震性が不足するなどしていた。深刻な水害につながりかねず、国土交通省は全国に数千か所ある施設の耐震性を点検し、対策を検討する。
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河川管理施設には、ダムや堤防のほか、水門や堰(せき)などの「ゲート施設」と、排水機場、揚水機場などの「ポンプ施設」がある。
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国交省や関係者によると、検査院は全国各地の河川管理施設のうち、水門や排水機場、堰など二十数か所を抽出調査した。この結果、約40%の約10か所で、施設に併設された操作室の耐震強度が不足していたり、耐震性が不明だったりした。
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操作室には通常、職員は常駐しておらず、大雨などで河川氾濫の恐れがある場合に使用している。特に1981年以前の旧耐震基準で造られた建物は耐震性の確認が必要だが、「職員が常駐しないこともあり、耐震診断が後回しになっていた」(国交省治水課)という。
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同省が管理する施設ではこれまでに操作室が地震で使用不能になった例はないというが、同省は8月31日付で、全国の地方整備局に耐震診断の実施などを指示した。
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【千葉 排水機場 倒壊の恐れ】
「川が氾濫したら、住宅街に甚大な被害が出てしまう」
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会計検査院の調査で問題が判明した約10か所のうち、千葉県浦安市の「堀江排水機場」を管轄する県の職員が危機感を募らせる。
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東京ディズニーリゾートから約2㎞にある堀江排水機場は、1969年度に建設された。東京湾に注ぐ旧江戸川と、浦安市街地を通る支流の堀江川をつなぐ。大雨で堀江川の水位が基準を超えた場合に、ポンプで旧江戸川に排水し、堀江川の氾濫を防いでいる。
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施設に建物は二つあり、一つは90年度に建設されたもので耐震性に問題はない。だが、もう一つは69年度の完工で築50年を超え、震度6~7程度の地震で倒壊する危険性が判明した。
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この建物内には、堀江川から水をくみ上げるポンプが三つあり、それぞれ操作盤が置かれている。操作盤はポンプを動かす唯一の手段で、首都直下地震などの大地震で使えなくなれば、堀江川の氾濫につながる恐れがある。
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県河川環境課の担当者は「排水ポンプの整備には気を配ってきたが、建物の耐震性については確認が必要だという視点が抜け落ちていた」と明かした。
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【岡山 操作室 診断行われず】
岡山市内を流れる百間(ひゃっけん)川の「昭和水門」も、検査院の調べで問題が指摘された施設の一つだ。
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百間川は元々、岡山城下で洪水を繰り返してきた「旭川」の放水路として江戸時代に造られた人工の河川。昭和水門は68年、その河口部に整備された。
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普段は水門を閉めて、農業用水路を通じて海水が農地に逆流するのを防いでいる。川の水位は徐々に上がるため、数日に1度は水門を開けて海側に水を流す。
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だが、七つある門柱の上部に立つ操作室(約20㎡)は、耐震診断が行われておらず、耐震性が不明だった。築50年を超えており、強い地震で倒壊の恐れがあるとみられる。
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中国地方整備局によると、普段は近くにある事務所から遠隔操作で水門を開閉しており、遠隔操作ができない場合に、職員が操作室に入り、ボタン操作や手動で水門の開閉を行う。地震で操作室が使えなくなれば、治水の役割を果たせなくなる可能性がある。
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