露・極東で軍事力増強:10月14日大規模軍事演習・開始!

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北方領土部隊も参加!
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ロシアの軍事行政区分では、極東はハバロフスクを司令部とする東部軍管区(VVO)の担当範囲であり、VVO司令部は東部統合戦略コマンドを兼ねており、域内の陸海空軍部隊の一般任務戦力(SON)を統合指揮する。
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VVO配備の地上兵力はロシア軍全体でも極めて小さい。面積ではVVOだけでロシアの全国土の約4割を占める割に部隊規模の小ささは一層際立つ。原因は、冷戦後のロシアの軍事的安全保障の焦点が北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大、東欧へのミサイル防衛(MD)システム配備、ウクライナ紛争など西部正面に集中していることによるものと思われる。
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逆に、砲兵旅団やロケット旅団などのVVOへの配備が比較的手厚い。さらに、有事には予備役を受け入れるための動員基盤である物資装備保管基地(BKhVT)が実に8個師団分用意され、全軍管区中で最大の動員能力を有する。
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特に2010年代後半以降、VVO内に兵力増強の動きが見られるようになってきた。特に陸上兵力の増強である。
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VVO内のロシア陸軍は、VVO司令部直轄部隊(指揮旅団、砲兵旅団、電子戦旅団、工兵旅団、鉄道旅団等)、4個諸兵科連合軍、1個軍団から成る。
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1個軍団(サハリンに司令部を置く第68軍団)は2010年に解体されたものの2014年に再編成されたものであり、隷下に北方領土駐留の第18機関銃砲兵師団(司令部:択捉島瀬石温泉)を擁する。
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サハリンの第68軍団は現在のところロケット旅団を欠いている。今後、同軍団にもイスカンデル-Mが配備されたり、その一部が北方領土にも配備されることがあれば、こちらは我が国との軍事バランスに大きな影響を及ぼすことになる。
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さらに2019年3月11日、ロシア国防省の機関紙である『赤い星』のインタビューに答えたVVO司令官のゲンナジー・ジトコ中将は、年内に1個自動車化歩兵師団を新設する計画を明らかにした。
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2019年4月に開催された国防省統一装備品受領日の報告では、沿海州のウスリースクに第127自動車化歩兵師団と呼ばれる師団が配備されており、第5諸兵科連合軍隷下の同師団は2009年に旅団に改編されていたが、これを再び師団化したものであろう。今後、そのほかの旅団も師団に改編されることになれば、極東ロシア軍の地上戦力は現在よりも相当に増強されることが見込まれる。
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ロケット旅団の近代化にせよ、旅団から師団への改編にせよ、他の軍管区で実施されていることであり、VVOもこれに倣っているに過ぎないという見方もあるが、念頭に置かれているのは中国であると思われる。
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ロシアは政治的には中国を友好国として遇しつつ、純軍事的には依然として中国に対する軍事的脅威認識を有しているからだ。
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極東部においてロシアが中国へのリバランスを図るとしても、中国に対する軍事的対決姿勢を意味しておらず、政治的配慮と軍事的配慮のバランスの中でロシアが極東において対米戦略を含め、どのような軍事的抑止体制を構築するのか注視する必要がある。
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ロシア極東地域を管轄する東部軍管区は10月14日、極東地域で敵対勢力の上陸を想定した大規模軍事演習を開始したと発表した。演習には北方領土に配備されている部隊も参加しているという。
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タス通信によると、演習は、北方領土を事実上管轄するサハリン州と沿海地方の訓練場で実施。最大8000人の軍人のほか3000の戦車・自走砲などの陸上兵力、50機の戦闘機などの航空戦力が投入される予定。
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ロシア国防省は15日、定例の戦略兵器運用演習「グロム2019」を露各地で開始した。露メディアが伝えた。17日までの演習期間中には、大陸間弾道ミサイル「ヤルス」や潜水艦発射型弾道ミサイル「シネバ」など計16基のミサイル発射も予定されている。
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露経済紙RBKによると、2017年の同演習で発射された弾道ミサイルは4基のみだった。米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効し、21年2月に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長協議も難航が予想される中、ロシアには核戦力を誇示し、米国を牽制する狙いがあるとみられる。
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イタル・タス通信によると、露国防省は14日、各国の駐在武官を対象に演習の事前説明会を実施。ヤルスとシネバの発射は極東カムチャツカ半島の演習場で、別の弾道ミサイル「RSM50」の発射は露北西部アルハンゲリスク州の演習場で実施すると予告した。演習は特定の国を想定しておらず、純粋な国防目的のものだとも説明した。
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潜水艦発射型の弾道ミサイルはINF全廃条約の規制対象外。新STARTも大陸間弾道ミサイルの保有自体は禁止していない。
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