陸自・地対艦ミサイル:米海軍戦車揚陸艦を撃沈?

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22式地対艦誘導弾・最終的には50両の発射機を配備!
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12式地対艦誘導弾は、日本の陸上自衛隊が配備を予定している地対艦ミサイル(対艦誘導弾)システム。88式地対艦誘導弾の後継であり、当初は88式地対艦誘導弾システム(改)として開発されている。
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射程は150~200㎞と言われている。また、88式地対艦誘導弾と同様、地形に隠れるようにして飛行する能力を持つので発射地点の特定や迎撃が難しい。


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中国軍は離島侵攻に水陸両用車を投入すると想定され、それを水上艦艇で輸送してくるとみられる。ミサイル駆逐艦やフリゲート艦を集結させ、侵攻する離島の周辺海域を封鎖する危険性もある。これらの軍事行動を阻止または抑止するためにSSMは有効だ。
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初めて購入する2両は26年度末までに教育用として陸自富士学校(静岡県)、整備士養成用として武器学校(茨城県)に置く。続いて購入する4両は27年度末までに部隊育成用として富士教導団(静岡県)に配置する。
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陸上自衛隊が、南西方面での中国による離島侵攻に備え、最新鋭の「地対艦誘導弾(SSM)」を九州に集中配備することが7月14日、分かった。平成28年度から初めて一線の部隊に配備する発射機16両をすべて、熊本県・健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊に置く。
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<22式地対艦誘導弾>
12式地対艦誘導弾の後継となるもので、発射装置も12式の物から大型となったキャニスターに換装されており、一見改良版に見えるが、ミサイルシステムとしては全く別ものと言って良いものに進化している。
一番の大きな変化は、射程を公称300km以上と、大きく延長し、SRBM(短距離弾道弾)となった事である。誘導装置は、これまでのモノをベースに、長距離レーダーシステムと戦域統合情報システムとのリンクを導入し、300km以上の誘導が可能となっている。
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射程を公称300km以上としているのは、南西諸島へ配備した場合、尖閣諸島北方の敵艦隊を射程に収めながら、台湾への配慮を考えたもので当面は沖縄本島及び、宮古島などへの配備から始める事で了解を得ているようだ。


しかし、こうした射程距離は実際には公称数値以上ある事が通例であり、400kmはあるのではないか?と噂されているようだ。
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弾体自体は、これまでの12式と全長は変わらず、直径がおよそ倍になっており、固体燃料ロケットモーターによって弾道飛行をするものとなっており、この関係でこれまで6基を装備出来た発射機は一両で2基しか運べなくなった。
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しかし、終末誘導に、アクティブレーダーホーミングに加え、新開発の超耐熱光学レンズの実現で可能になったイメージホーミングが加わり、進化したECM環境でも十分な命中精度が得られ、文字通り大型艦船ならば100発100中となっているので発射機数はそれほど大きな問題では無くなっている。
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発射機自体もキャニスターの換装だけで対応できる為、新たな配備に加えて、順次旧発射機の換装が進められる事となっている。いずれにせよ、この22式地対艦誘導弾の配備によって、日本領海への侵入は何時撃沈されてもおかしく無い状況となり、その抑止力は確実に高まったと言えるだろう。発射後ほんの数分で大型艦を一撃で葬る事が出来るこの22式地対艦誘導弾の登場で、敵空母打撃群もおいそれとは日本領土近海には接近しにくくなり、自衛隊としても危険な航空機攻撃をしなくとも、30分以内に敵水上艦勢力を一掃する事が可能となったのである。
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計画では、西部方面特化隊に順次導入され、最終的には50両の発射機が配備、又、北海道、対馬、佐渡他にも順次配備する事となっているようだ。
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更に、海上自衛隊向けに護衛艦用の発射機の開発、潜水艦発射型の開発、そして対地攻撃要弾頭の開発も鋭意進められており、日本国土の防衛力向上の今後は留まるところを知らない様子だ。
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6月27日からホノルル周辺海域を中心に開催されている多国籍海軍合同演習のRIMPAC(リムパック)-2018」で、RIMPAC史上初めて陸軍部隊による洋上の軍艦を攻撃する演習(SINKEX)が実施された。
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7月14日に実施されたSINKEXは日本、米国、オーストラリアの3カ国による合同演習である。内容は、オアフ島の隣にあるカウアイ島内に陣取った陸上自衛隊ミサイル部隊ならびにアメリカ陸軍ミサイル部隊が、オーストラリア空軍のP-8ポセイドン哨戒機の上空からの誘導により、カウアイ島北55海里沖洋上に浮かぶアメリカ海軍退役軍艦「Rachine」を、それぞれ地対艦ミサイルを発射して撃沈するという
ものだ。
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ちなみに陸上自衛隊はメイドインジャパンの12式地対艦ミサイルシステムを使用し、アメリカ陸軍はノルウェー製の対艦ミサイルを米陸軍のミサイル発射車両から発射した。


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長い歴史を誇るRIMPACで、今回初めて地上軍(陸上自衛隊、米陸軍)が地対艦ミサイルを用いて洋上の軍艦を攻撃する訓練が実施された。
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今回、初めて地対艦ミサイル演習を実施した最大の理由は、南シナ海と東シナ海における中国の海洋戦力の拡張に、アメリカ海軍を中心とする同盟諸国海軍が伝統的海洋戦力(各種軍艦と航空機)だけで対抗することが困難な状況になりつつあるからである。
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現在、中国海軍が依拠している防衛戦略(ただし核戦略は別レベルである)は「積極防衛戦略」と称されており、アメリカ軍などでは「接近阻止・領域拒否戦略」(A2AD戦略)とも呼称されている。この防衛戦略を一言で言うならば、東シナ海や南シナ海から中国に(核攻撃以外の)軍事的脅威を加えようとする外敵(主としてアメリカ海軍、それに海上自衛隊をはじめとするアメリカの同盟国海軍)を、中国本土沿岸からできるだけ遠方の海上で撃破して中国に接近させないというアイデアである。このように接近を阻止するための目安として中国海軍戦略家たちが設定しているのが、第一列島線と第二列島線という概念である。
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「積極防衛戦略」を推し進めるためには、どうしても海軍力と航空戦力の強化に最大の努力を傾注することが必要となる。なぜならば、中国に接近を企てる外敵は、軍艦や軍用機によって海洋を押し渡ってくることになるからである。そのため、中国海軍は次から次へと軍艦の建造に邁進し、海軍と空軍は戦闘機や爆撃機をはじめとする航空戦力の強化も猛スピードで推し進めた。
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ただし、中国軍戦略家たちは、そのような伝統的な海洋戦力だけで、強大なアメリカ海軍やその弟分である海上自衛隊を迎え撃とうとはしなかった。なぜならば、軍艦や軍用機の開発、建造・製造、それに乗組員や整備要員の養成には長い時間がかかるからである。そこで、多数の軍艦や軍用機を生み出しそれらの要員を鍛え上げ、強力な伝統的海洋戦力を構築するのと平行して、比較的短時間で大量に生産することができ、運用要員の育成も容易な、様々な種類の対艦ミサイルの開発にも努力を傾注した。
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要するに、中国沿海域に押し寄せてくるアメリカ海軍や海上自衛隊の高性能軍艦や航空機に対して、伝統的な海洋戦力で対決するだけでなく、場合によっては中国本土からあるいは本土上空から各種対艦ミサイルを発射して、アメリカ海軍艦艇や海上自衛隊艦艇を撃破し、中国沿岸域、あるいは第一列島線、さらには第二列島線への接近を阻止してしまおうというわけである。
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実際に、中国人民解放軍は、中国本土内から発射する多種多様の地上発射型対艦ミサイル(地対艦ミサイル)や、敵の攻撃を受けることのない中国本土上空の航空機から発射する対艦ミサイル(空対艦ミサイル)、それにやはり敵の攻撃を受けることのない中国本土沿海域の軍艦から発射する対艦ミサイル(艦対艦ミサイル)をずらりと取り揃えている。そのため、第一列島線を超えて中国沿岸に接近を企てる敵艦艇は、多数の対艦ミサイルによる集中攻撃を被る恐れが極めて高い状況になっている。そして、対艦ミサイルとともに、接近してくる航空機を撃破するための各種防空ミサイルの配備も伸展している。
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このような中国軍の「積極防衛戦略」に立脚した接近阻止態勢に対して、アメリカ海軍(そしてその同盟軍)としては、正面切って空母艦隊をはじめとする艦艇や航空機を突っ込ませるのは自殺行為に近い。そこで、アメリカ軍やシンクタンクの戦略家の間で、別の方法が真剣に検討され始めているのだ。
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それは、こちらから中国沿海に接近して攻撃するというアメリカの伝統的な「攻撃による防御」戦略ではなく、中国海軍が設定した第一列島線上で中国海洋戦力の接近を待ち構え、中国軍艦艇や航空機の第一列島線への接近を阻止する方法だ。いわば、中国の戦略を真逆にした「接近阻止戦略」を実施しようというアイデアである。
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では、アメリカ軍は第一列島線でどのような戦力で待ち受けるのか。
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まずは、第一列島線周辺海域に様々な軍艦を展開させ、第一列島線上にいくつかの航空拠点を確保して航空戦力を配備し、場第一列島線周辺海域に空母艦隊を展開させて航空打撃力を準備する、といった伝統的海軍戦略にのっとった方策が考えられる。
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一方、中国の戦略を真逆にした「接近阻止戦略」では、第一列島線上に地対艦ミサイル部隊を展開させて、接近してくる中国艦艇を地上部隊が撃破するというオプションが加わることになる。
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ところが、このような「敵をじっと待ち受ける」受動的な、すなわち専守防衛的な戦略はアメリカ軍は伝統的に取ってこなかった。そのため、専守防衛的な兵器である地対艦ミサイルシステムをアメリカ軍は保有していない。
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地対艦ミサイルを投入しての「接近阻止戦略」が必要であると考え始めたアメリカ海軍や海兵隊それに陸軍の戦略家たちは、地対艦ミサイルの威力を目に見える形でペンタゴンやホワイトハウスに提示する必要に迫られている。そこで登場したのが、陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊である。かねてより地対艦ミサイルに特化した部隊を運用している世界でも稀な陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊に、日本が独自に開発し製造している高性能12式地対艦ミサイルシステムをRIMPAC-2018に持ち込んでもらい、大型艦を撃沈するパフォーマンスを実施してもらったというわけだ。
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おそらく、今回のSINKEXを皮切りに、アメリカ陸軍でも、アメリカ海兵隊でも、地対艦ミサイル部隊の創設へと舵を切っていくことになるものと思われる。それに対して、陸上自衛隊は四半世紀前から地対艦ミサイル運用に特化した地対艦ミサイル連隊を保有しているし、日本独自に開発製造している地対艦ミサイルシステムを手にしている。そのため、現在アメリカ軍戦略家たちが検討している中国に対する「接近阻止戦略」(拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』参照)を推進して行くに当たって、日本の地対艦ミサイル技術やノウハウは、アメリカにとっても大いに有益なものとなることは必至だ。
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88式、12式、22式は三菱重工業の製造である。
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