北朝鮮問題:中国にとって・最優先課題は!(下)

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中国・北への石油を停止できるか?
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現在送油の何割・バルブを締めるか!
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9月6日、トランプが習近平と電話会談をした。会談では北朝鮮に対する圧力強化に関して鮮明な違いが浮かんだ。米中は北の非核化に協力はするが、中国が北への石油を全面的に止める可能性は低い。
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習近平が
「中国は朝鮮半島の非核化を実現し、国際的な核不拡散システムを維持していくという方針は変わらない。同時に我々は朝鮮半島の平和安定を堅持し、対話によって問題解決を図る道を堅持する」と言ったのに対し、
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トランプは
「アメリカは朝鮮半島の現状に強い懸念を抱いている。中国が北朝鮮の核問題を解決する上で、大きな役割を果たすことを重視している。米中の意思疎通を強化し、一刻も早く朝鮮半島の核問題を解決する方法を見い出したい」と述べたとのこと。
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実際には「国連安保理における北朝鮮に対する石油輸出を全面禁止する制裁に賛同してほしい」ということを言うためにトランプは習近平に電話したものと思うが、CCTVが報道しないのか、あるいはトランプがストレートなことは口にしなかったのか、今のところその報道はない。
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いずれにしても9月11日の安保理における追加制裁に賛成票を投じてほしいというのが、トランプの切なる要望だろう。トランプはアメリカのメディアに対して「良い会談ができた。習近平は協力するだろう」という趣旨の感想を述べているようだが、どうだろうか?
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中国が北朝鮮への石油パイプラインが完成したのは1975年12月。長さ30.3km、パイプの直径377mm、パイプの厚さ7mm。原理的には毎年300万tの石油を送ることが可能。送油しているのは、精製油ではなく「原油」で、しかも「大慶油田」の原油だという。
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大慶油田は1959年9月26日発見された。問題は、この大慶油田の原油はパラフィンを大量に含むことである。パラフィンというのは炭化水素化合物の一種で、和名では石蝋(せきろう)と呼ばれるように、ろうそくやクレヨンの材料として使われている。蝋燭もクレヨンも滑らかではあるが、液体ではなく固体だ。アモルファス(非晶質)な液体ではなく有機物質だ。パイプラインを止めてしまうと、原油の中に含まれているパラフィンが固化してパイプが詰まってしまう。それを修復させるのは困難を極め、パイプラインの原油を止める期間が長ければ長いほど修復はほとんど不可能となる。もし金正恩政権が崩壊するなどして何らかの他の政権が誕生した場合でも、このパイプラインを通した中朝交流はできなくなるだろう。中国がパイプラインをストップしない原因はここにある。何割削減するかが問題だ。
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しかし、航空燃料に関しては、中国は2016年4月5日から北朝鮮への輸出を禁止している。
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中国商務部は2016年4月5日に【2016年第11号】 を発布した。その中の石油に関しては、以下のような文言がある。
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――国連安保理決議と中華人民共和国対外貿易法に基づき、中国は北朝鮮に対する「航空ガソリン、ナフサ系航空燃料(…中略)などを含む航空燃料」の輸出を禁止する。しかし安保理は基本的人道主義に基づく民間用航空燃料の輸出に関しては除外することを認めた(引用ここまで)。
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民間用の航空機なのか軍用機なのかに関して、どのように区別するのかは定かではないが、一応航空燃料は禁輸になっている。
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それでは、今回の石油禁輸制裁に中国は賛同するのか
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問題は9月11日に決議予定の安保理での「全ての石油禁輸制裁案」に対して、中国やロシアが賛成票を投じるのか否かである。
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ロシアのプーチン大統領(以下、プーチン)は「制裁や圧力によって北朝鮮の核ミサイル開発を止めることは出来ない」「北朝鮮は、自国が攻撃されず安全だと思うまでは、核・ミサイル開発をやめないだろう」という内容を何度も言っている。
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9月3日から4日、中国・福建省アモイで開催されたBRICS(新興五ヵ国)ビジネスフォーラムの閉幕式でも、北朝鮮に関し習近平は一言も触れなかったが、プーチンが前述のようなスピーチをしたのは暗黙の役割分担をしたのかである。中国が削減した分をロシアが輸出するのかもしれない。
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習近平にとって、10月18日からの中国共産党大会が開催される。大会が終わるまで、内外で主席権威に傷をつけたくない。単なる権力集中ではない。再任はできても、このあと5年後にどうなるか。いま、万全の体制で国内のタガを締めておかないと、5年後に江沢民、胡錦濤政権のように「利権まみれ、袖の下政治が復活したなら、世界第2の経済大国は元の木阿弥」となることだ。
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国民が要求している「自由」という西欧方式を取ったなら、一夜にして共産党政権は瓦解することをよく知っている。いまのような強権・独裁政治は民度がある程度成熟してからでも遅くないと考えている節がある。中央も地方も軍部も腐敗殲滅と言う斧で切っている最中だが、手を休めたとき、切った先から芽が出て根を張り、国中が雑草だらけになり、国が腐ってゆく。米国と経済を争うどころでない、後ろからインドの経済が追いついてくる。13億人を制御するのは単純にはいかない。国民が望む経済で停滞したら、共産党政権も危うくなる。
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10月の党大会を無事に乗り切ったその後、習近平の腹が見えてくるだろう。
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