英国・EU離脱方針:通告は17年1~2月!

.
保守党系識者・政権内主導権争い!
.
何も決まっていないのが実情!
.
.
欧州連合(EU)からの離脱を決めた国民投票を受けて7月に発足した英国のメイ新政権は、EUとの離脱交渉の開始時期や交渉方針を明示していない。与党・保守党に政策提言するなど強い影響力を持つロンドンのシンクタンク「ボウ・グループ」のベン・クイニー代表は「閣僚間や省庁間で主導権を巡って綱引きが起きており、何も決まっていないのが実情だ」と話す。
.
メイ首相は離脱交渉でEUの単一市場へのアクセスを維持して経済上のメリットを確保する一方、EUの基本原則の移動の自由は受け入れず、移民を抑制すると強調する。しかしEU各国は英国の都合の良い主張に反発。メイ氏は夏休み明けの7日の議会でこの点を問いただす野党議員の質問に「英国にとってベストな取引をする」と繰り返し、新たな方針を示せないでいる。
.
クイニー氏は、メイ氏がそれぞれ新設したEU離脱省、国際貿易省と、外務省の3省間に加え、大臣間で「縄張り争い」が起きており「どの省が離脱を巡る方針を主導するのかも決まっていない」と話す。EUとの交渉開始時期については「来年1月か2月」と考えるが、大幅に遅れる可能性もあるという。
.
政府が方針を示せない、もう一つの理由として、主要閣僚も含めた保守党内の意見の相違も挙げる。メイ氏も含め下院(定数650)で単独過半数を占める保守党議員(329)の半数以上は残留を支持した。「党内で離脱・残留両派に割れているうえに、離脱派内でも移民の制限と単一市場へのアクセスのどちらを優先するかで意見が割れている」と指摘。
.
「メイ氏が大まかな方針を発表しただけでも、政治的に不測の事態に直面する」という。
.
メイ氏は離脱交渉の方針や、いつ離脱交渉を始めるかについて議会の承認を得ないとしている。説明に納得しない保守党議員が増えれば、議会の承認を求める動きが広がる。さらに議会の承認が必要となれば、議会での議論が収まらず混乱に拍車がかかるという。
.
クイニー氏は、メイ氏の立場について「とても脆弱(ぜいじゃく)だ」とする一方、「演説内容を他人に書いてもらう人物ではなく、全ての状況を把握しており、目の前に迫っている戦場のことも知っている」と説明。焦点は「メイ氏が、意見が異なる人もまとめ上げるカリスマ性を発揮できるかどうかだ」と話す。
.
EUのトゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)は9月16日夜(日本時間17日未明)、離脱を決めた英国を除く27加盟国が集まった首脳会議後の記者会見で、メイ英首相から正式な離脱通告について、「来年1~2月にも」行う用意が整うとの説明を受けていたと明らかにした。英国はこれまで、離脱交渉の具体的な開始時期について明らかにしていなかった。
.
首脳会議はスロバキアの首都ブラチスラバで行われ、難民・移民対策の一環として域外国境管理の強化などを柱とする重点政策を掲げた行程表を取りまとめたほか、27加盟国の結束強化を誓う「ブラチスラバ宣言」を採択して閉幕した。
.
離脱交渉は、EUの基本条約が定める英国からの法的な通告を受けて、原則2年を限度に行われる。トゥスク氏は今月8日にロンドンでメイ首相と会談した際に通告時期について報告を受けたという。
.
交渉は困難が予想されることもあり、離脱通告は、来年春に予定されているフランス大統領選や来秋のドイツ総選挙など、EU域内の大型選挙の結果を見極めた後に行われるとの臆測もあった。
.
一方でEU側は、欧州経済の先行きの不確実性への懸念から速やかな交渉開始を求めており、メイ首相の「説明」を公にすることで、英側の「逃げ道」を塞ぐ狙いもあるとみられる。首脳会議では、正式な通告を受けるまでは水面下も含めて一切の交渉を行わない姿勢を再確認した。
.
ブラチスラバ宣言は、加盟国間や市民との「対話」を重視する姿勢を強調した上で、EUの出発点にあたるローマ条約締結60周年を迎える来年3月に向けて「市民が信頼、支持できる魅力あるEUの将来像」を提示することを誓った。
.