中国経済・再減速:投資も消費も勢いダウン!

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金融政策も手詰まり感!
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低迷・失速の様相を強めている中国経済が、今年下期に再減速する“悪夢”のシナリオが現実味を帯びてきている。これまで中国経済を牽引してきた投資も消費も勢いを失っており、中国政府が景気対策の切り札と位置づける金融政策も手詰まり感を強めるばかり。中国経済に詳しい日本の専門家は「景気対策なしでは、さらなる失速の恐れも否定できない」と悲観的な見通しだ。
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シンクタンク「ニッセイ基礎研究所」経済研究部の上席研究員、三尾幸吉郎氏によると、これまで中国経済を牽引してきた投資は引き続き減速している。
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投資の代表指標の固定資産投資(農家の投資除く)の動きをみると、1~7月期は前年同期比8・1%増と、昨年通期の同10・0%増を大きく下回る結果だった。
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これを業種別にみると、全体の3分の1を占める製造業が前年同期比3・0%増と5・1ポイント低下。消費サービス関連も同7・3%増と7・0ポイントも低下している。今後も、過剰設備や過剰債務を抱える製造業は、引き続き低水準で推移しそうだ。
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三尾氏は「過剰生産設備を抱える分野などでは安価で豊富な労働力を求めて後発新興国へ工場を移転する企業が増えているため、製造業全体では一桁台前半の伸びに留まるだろう」と予測する。
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投資の不振は、広く不動産やインフラ関連などの分野にも及んでいる。
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不動産投資では、上海や深せんなどで住宅価格急騰によるバブルの懸念が高まっており、すでに地方政府は不動産規制の強化に動き出したため、今後の伸びは一桁台半ばの横ばいとみられている。
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インフラ関連では、中国政府が上期に予算を前倒し執行した反動減が予想されている。今年上期は民間企業(特に製造業)では落ち込んだものの、インフラ関連が加速したことでなんとか支えてきたが、三尾氏は「その支えが無くなれば、投資は失速しかねない」と懸念する。
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一方、投資と並んで牽引役を果たしてきた輸出も引き続き不振だ。
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代表指標の輸出額(ドルベース)をみると、1~7月期に前年同期比7・4%減と、昨年通期の同2・9%減に続いて前年割れとなった。
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今後の動向についても、先行指標となる新規輸出受注(製造業PMI)が50%を割り込んでいる。頼みとする世界経済の回復も緩やかと見られており、三尾氏は「引き続き経済成長の足かせとなりそうだ」と指摘する。
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中国政府が景気対策の切り札とする金融政策も、ここにきて手詰まり感を強めている。
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中国人民銀行は3月、企業が抱える過剰設備や過剰債務の調整を進める上で、痛みの緩和措置として、市中銀行から強制的に預かる資金の比率「預金準備率」を0・5%引き下げた。
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その一方で、貸出・預金基準金利の引き下げは見送った。市場では景気対策につながる利下げ期待が高まっていただけに、市場関係者を失望させた。
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原油価格が底打ちしたことや春節に食品価格が急騰したことで、消費者物価の上昇率が高まり、預金基準金利(1年定期)を上回ったほか、住宅価格が上昇したことも、利下げを見送った背景とみられる。
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中国の住宅価格は昨年4月を底値に上昇に転じ、特に北京市などの巨大都市では毎月のように最高値を更新。バブルの懸念が高まっていた。

三尾氏は「そこで景気テコ入れのため利下げに踏み切れば、バブル膨張を助長させかねない状況だった」と金融政策の手詰まり感を指摘する。
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こうした状況の中、今後も中国経済の見通しは決して明るくない。
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景気減速で賃金上昇率が鈍化したほか、インフレ率の上昇で実質所得も目減りするため、消費の伸びは今後、鈍化するとみられる。投資も、企業の過剰設備や過剰債務の整理が進む中、特に製造業が落ち込んでおり、今後も減速傾向が続く見通しだ。
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中国政府が掲げる成長率目標の下限(6・5%)の達成が危ぶまれる状況となれば、長期計画の前倒し執行など、さらなる景気対策に踏み切る可能性が高いとされるが、三尾氏は「それが無ければ(中国経済は)失速する恐れがある」と指摘する。
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さらに悲観的なシナリオとして、三尾氏は「国有企業改革が進まない中で、民間企業が新たな投資分野を開拓するのは容易ではなく、民間投資は低迷を続ける可能性も低くない。中国政府が景気対策を打ち出さず、国有・持ち株企業の投資が息切れすることになれば、実質成長率が6%を割り込む可能性も否定しきれない」と言い切る。
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