さすが中国:地方の空き家住宅・農民工に売れ!

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はたして買うだろうか!
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1級都市が集中する沿海部の数カ所の大都市では住宅需要が復活しているが、小規模の3~4級都市では停滞したままである。
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数百万戸に及ぶ売れ残り住宅が経済に及ぼす潜在的な影響に頭を抱える中国は、農村部からきた出稼ぎ労働者(農民工)による中小都市の不動産購入を促すことで、経済成長の約15%を担う不動産部門の負担を緩和したいと考えている。
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空き家問題に対する中国政府の懸念を象徴する出来事。
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空き家の在庫は約10億㎡、約1300万世帯分に相当し、オーストラリアの全人口を収容できる水準だ。世界第2の経済大国である中国の成長ペースがこの四半世紀で最低の水準に落ち込むなか、経営難に陥った不動産デベロッパーの破綻が生じれば、広範囲に連鎖反応が及ぶ恐れがある。
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出稼ぎ労働者に中小都市の住宅購入を働きかければ、需要拡大策にはなりそうだが、むしろ難しいのは、彼らがそのための資金を手にすることだろう。
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中国国内の出稼ぎ労働者は2億7000万人以上を数えるが、その多くは月収3000元(約5万5000円)以下だ。江蘇省東部の常州などの中小都市で住宅を購入するには、1㎡あたり、その2倍以上の金額が必要になる。
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低所得でほとんど資産を持たない出稼ぎ労働者が住宅ローンの借り手として魅力に乏しいことは明らかだ。関係当局としては、格安価格で住宅を売ろうという不動産デベロッパーや、住宅購入に対する補助金支出に前向きな地方政府を見つける必要がある。
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「出稼ぎ労働者が売れ残り住宅を購入するための条件は整っていない。住宅保有証書がすべてを解決することはできない」と、中国の不動産コンサルタンは語る。
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「誰もが都市に定住することを望んでいるが、そんな金がどこにある」と言う。出稼ぎ労働者に対する公平な社会保障や公的サービスの提供など、他にも解決すべき問題はあると指摘する。
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中国政府首脳は、今年、出稼ぎ労働者による都市部の住宅購入・賃貸利用を支援しデベロッパーに価格引き下げを促すなど、不動産在庫の解消に向けた努力を拡大すると述べている。
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関係当局が目標とするのは、2020年までに出稼ぎ労働者1億人を都市部に定住させることだ。中小都市の幹部は、農村出身者に対する恒久的な居住資格「戸口(戸籍登録)」の付与を拡大することを約束しているが、社会福祉制度の利用については未解決だ。
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もう一つ潜在的な障害となるのは、国民健康・家族計画委員会のデータによれば、すでに都市部で暮らしている出稼ぎ労働者の70%以上は賃貸住宅の方を好んでいるという点だ。
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「十分な稼ぎがあれば、故郷に近い都市に戻って、そこで家を買いたい」と語るのは、Longという姓のみ名乗ってくれた北京のレストラン従業員だ。5年前に湖南省中部の村を離れたという26歳のLong氏は、「北京は物価が高すぎる。ずっとここで暮らすのは私には無理」と言う。
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中央政府も、低所得の都市住民や老朽化した住宅で暮らす住民が、低価格の売れ残り住宅を購入することを望んでいる。
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同じように過剰な住宅在庫、リスクの高い住宅ローン、前のめりの融資姿勢が前兆となっていた米国でのサブプライム危機が引き合いに出されることもあるが、一部の専門家はそうしたシナリオの可能性は薄いと見ている。
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「米国に比べれば住宅ローンの普及度が低いし、頭金の比率も高い。家計債務もはるかに低い。だからサブプライム危機のように雪だるま式に融資残高が膨らむ可能性は低い」と香港を拠点にスタンダード&プアーズ社のアナリスト、クリストファー・イップ氏は語る。
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中国の「証券時報」も、「農民に含み損を抱えさせていいのか」「(不動産市場を正常化させる)唯一の方法は価格を下げることだ。不動産業者が損失を被るのは当たり前だ」と訴える。
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