公正取引委員会は6月5日、2018年度の独占禁止法違反事件の処理状況を発表した。
.
違反業者への課徴金は総額2億6111万円で、現行の課徴金制度が導入された05年度以降、最低額を更新した。排除措置命令は8件と少なかったが、命令に至らない警告と、事業者が改善措置を申し出て審査を打ち切った案件が各3件あった。
.
排除措置命令の内訳は、官公庁の入札談合と民間の受注調整が各3件、価格カルテルと不公正な取引方法が各1件だった。
.
.
<平成30年度における独占禁止法違反事件の処理状況について>
令和元年6月5日
公正取引委員会
.
はじめに
.
公正取引委員会は,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。
.
特に平成30年度においては,デジタルプラットフォーマー等のIT・デジタル関連分野の事業者による単独行為事案について積極的な審査を行い,審査の過程において事業者から改善措置の申出等がなされ、独占禁止法違反の疑いを解消するものと認められたことから審査を終了した事案について、法運用の透明性や事業者の予見可能性を高める観点から事案の概要を公表するなど、社会的ニーズに的確に対応した事件に取り組んだ。
.
また,平成30年12月30日に施行された環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律により、独占禁止法に確約手続が導入されている。
.
平成30年度における独占禁止法違反事件の処理状況は,次のとおりである。
.
第1 審査事件の概況
1 法的措置等の状況
.
(1) 排除措置命令等の状況
.
平成30年度においては,独占禁止法違反行為について、延べ46名の事業者等に対して、8件の排除措置命令を行った。排除措置命令8件の内訳は、価格カルテル1件、入札談合3件、受注調整3件、不公正な取引方法1件となっている。価格カルテル・入札談合・受注調整7件の市場規模は、総額49億円超である。
.
(2) 警告等の状況
.
平成30年度においては、各事案の内容を踏まえて、迅速な処理を行うことにより競争秩序の早期回復を図った事案や事業者から改善措置の申出等を受けて審査を終了した事案についても、事案の概要を公表することにより、独占禁止法や競争政策上の問題点を広く周知するなどの処理を行った。
.
ア 違反の疑いのある行為が認められた3件について、関係事業者に対し、事前説明を行った上で警告・公表を行った(優越的地位の濫用:2件、拘束条件付取引:1件)。
.
イ デジタルプラットフォーマーに関する事案等の事業者から改善措置の申出等を受けた3件について,法運用の透明性や事業者の予見可能性を高める観点から、事案の概要を公表した(排他条件付取引:2件、拘束条件付取引:1件)。
.
(3) 課徴金納付命令の状況
.
平成30年度においては,延べ18名の事業者に対して、総額2億6111万円の課徴金納付命令を行った。
一事業者当たりの課徴金額の平均は1450万円(注1)であった。
.
2 申告の状況
.
平成30年度において、独占禁止法の規定に違反すると考えられる事実について、公正取引委員会に寄せられた報告(申告)の件数は、3,620件であった。
申告が書面で具体的な事実を摘示して行われるなど一定の要件を満たした場合には、申告者に対して措置結果等を通知することとされているところ、平成30年度においては、3,887件の通知を行った。
.
3 課徴金減免制度
.
課徴金減免制度に基づき、事業者により自らの違反行為に係る事実の報告等が行われた件数は、平成30年度において、72件であった(平成18年1月の制度導入時から平成30年度末までの累計は1,237件)。
.
また、平成30年度においては、価格カルテル・入札談合・受注調整事件7件における延べ21名の課徴金減免制度の適用事業者について、これらの事業者の名称、減免の状況等を公表した(注2)。
.
(注2) 公正取引委員会は,法運用の透明性等の観点から,課徴金減免制度が適用された事業者について,課徴金納付命令を行った際に,当委員会のウェブサイトに,当該事業者の名称,所在地,代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている(ただし,平成28年5月31日以前に課徴金減免の申請を行った事業者については、当該事業者から公表の申出があった場合に,公表している。)。
.
なお、公表された事業者数には,課徴金減免申請を行った者であるものの、①独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額(課徴金の算定の基礎となる売上額)が存在しなかったため課徴金納付命令の対象になっていない者及び②算出された課徴金額が100万円未満であったため独占禁止法第7条の2第1項ただし書により課徴金納付命令の対象になっていない者のうち,公表することを申し出た事業者の数を含めている。
.