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指名停止処分は「違法な行政処分」に当たるか!
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行政不服審査制度とは、行政行為など、行政庁による公権力の行使に対する不服を行政機関に対して申し立てる手続(制度)のことで、一般法として行政不服審査法が存在する。一応は私人の権利・利益の正式な救済制度として位置づけられるが、行政事件訴訟制度よりは簡略化された制度であり行政事件訴訟制度と比べメリットがある。
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行政不服審査法第1条第1項には「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為」と書かれている。これは、審査請求人が違法と考える「処分」はもとより、違法ではないが不当と考える「処分」についても、審査請求の対象となりうることを示している。従って、裁量行為についても幅広く審査請求の対象としうることとなる。
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内藤建築事務所は、12ヶ月の指名停止に対し、愛媛県の行政不服審査会に申し立てをしたが、ろくに審査もせず(設計事務所と県庁担当職員のメール打ち合わせ等の書類を添付したが)却下された。
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理由は行政処分ではない。ということのようだ。
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行政事件訴訟法は、違法な「処分」のみを抗告訴訟の対象とするのであり、不当な「処分」を対象としない。
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「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる」と定めている。
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裁判所は行政庁の行為または活動が適法か違法かを判断する機関なのであり、妥当か不当を判断する機関ではない。従って、裁判所が当該行為を適法と判断するならば、たとえ妥当性を欠いているとしても適法であることに変わりはないから、当該行為を取り消すことはできないのである。
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指名停止等についての行政裁判は幾つもあるが、大抵の裁判は「行政処分とは解されない」という判決である。続いて、どの行政にも定められている指名停止基準に「契約違反及び契約締結拒否のうち、過失による粗雑工事等が定められ損害を生じさせる行為を上げている。
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ここに、内藤建築事務所の訴状の表紙(相手方の県に送達前であると思うので)を掲載する。
共通する表紙は以下のとおり。
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訴状1.入札参加資格停止処分取消等請求事件
請求の趣旨
被告が令和元年6月10日付けで原告に対してした「愛媛県建設工事入札参加資格停止措置要項」に基づく入札参加資格停止措置(処分)を取り消す。以下は省略。
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訴状2.執行停止申立書
申立の趣旨
相手方が令和元年6月10日付けで申立人に対してした「愛媛県建設工事入札参加資格停止措置要項」に基づく入札参加資格停止措置(処分)の効力は、本案事件の判決が確定するまで停止する。以下は省略。
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訴状3.債務不存在確認請求事件
請求の趣旨
原告被告間の平成29年7月11日付設計業務等委託契約及び平成30年2月20日付設計業務等変更委託契約の債務不履行にもとづく原告の被告に対する金975万1200円の損害賠償債務は存在しないことを確認する。以下は省略。
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10月26日の「国や自治体の指名停止措置:行政処分か否か!」にも、平成11年、12年の判決文を掲載した。また、平成23年の千葉地裁と同年控訴した東京高裁の判決内容を要約し、掲載した。いずれも、行政処分に当たらないという判断である。
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未掲載ではあるが、平成12年・岡山地裁の判決、平成17年・名古屋地裁の却下も詳細は割愛するが、原告・業者側の負けである。
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松山地裁への提訴中で、まず注目されるのが、訴状2の執行停止申立書に対する判断である。その内容次第で、今後が予想される。
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