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商品輸入量が示す真実!
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GDPに騙されるな!
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中国の2018年12月の輸出入統計に関するコメントを読んだ人ならだれでも、米国との貿易摩擦が続く中で経済失速の流れが強まっているという印象を受けるだろう。
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アジア時間の原油先物は上昇。中国の経済成長率が、一部で懸念されていたほど大幅に鈍化しなかった。また、アナリストらは今年の原油価格について、石油輸出国機構(OPEC)加盟国や、ロシアなど一部の非加盟産油国が主導する減産により比較的しっかりと下支えされると予想している。
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北海ブレント先物は、今年初めて1バレル=63ドルを突破。米WTI原油先物も、今年初めて1バレル=54ドルを上回った。
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2018年の中国の経済成長率は6.6%と、17年(改定値)の6.8%から低下し、28年ぶりの低水準を記録。アナリスト予想は6.6%だった。
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米JPモルガンは、引き続き経済的な不透明感を示す兆候があると指摘する一方で「OPECなどの協調減産、イラン産原油取引の禁止免除の失効、米国の原油生産鈍化により北海ブレントは60ドル超の水準を維持できる」との見方を示した。
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12月の輸出が前年比4.4%減と、市場予想の3%増を大きく下回った点にアナリストの目が集まるのも無理はなかった。輸入も予想外に下振れ、前年比7.6%減と2016年7月以来の落ち込みを記録した。
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これらの数字は、まさに中国経済の弱まりを示しており、その原因の大半は米国との貿易摩擦が占める。
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さえない輸出は、米政府の中国製品向け関税導入前に生産者や買い手が駆け込みで在庫を積み上げた反動が出たのだろう。
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低調な輸出入統計は、中国経済が不振に苦しみ、米国が貿易戦争で「勝利」して中国側がトランプ政権に譲歩を強いられると予想する向きには格好の材料になった。
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輸出入統計には中国経済に関してまったく異なる見方につながる部分もある。具体的に言えば、数量ベースのコモディティ(麦やトウモロコシなどの農作物、金属や石油などの原材料やエネルギーを指す商品)輸入だ。
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12月の原油輸入量は前年比で30%近く増加し、日量1031万バレルと月次では過去2番目の高水準に達した。
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これは中小の製油業者が18年の購入枠を期限前に使い切ろうとしたからだと説明されそうだが、それにしても低調とは程遠い。
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18年全体の原油輸入量も10.1%増えて過去最高となり、オランダなどの消費量に匹敵するほどに膨らんだ以上、やはり弱い数字だとは言えない。
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2018年の原油輸入量で今年の動向を明確に予想することはできないが、今のところ輸入が衰えると考える理由は乏しい。中国はなお石油の戦略備蓄を続けており、足元の原油価格急落で購入が促進される公算が大きいからだ。
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天然ガス輸入量も12月は923万トンと、前年を17%上回って11月につけた過去最高を更新。つまり中国の天然ガス輸入量は2カ月連続で最高となったわけで、経済が不調に陥っているとの見方とは非常にそぐわない統計だ。
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エネルギー輸入量は堅調を維持している半面、製造業の活動の弱まりの影響をより大きく受ける金属の輸入量はもっと打撃を受けていると言うのが適切なのかもしれない。
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12月の未加工銅輸入量は42万9000トンと、前年比と前月比でともに4.7%減少した。11月の輸入量も前年を下回ったことから、18年終盤の軟調な流れがうかがえる。
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鉄鉱石輸入量もふるわず、12月は8665万トンで前年比3%増えたとはいえ、18年全体で1%減と10年以降で初めてマイナスになった。
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ただし中国の鉄鋼生産は18年に過去最高に達すると見込まれている。これはつまり、中国が高品位鉄鉱石への切り替えを進めているため、少ない輸入量でも鉄鋼生産を拡大できることを意味する。そうだとすれば鉄鋼石輸入量の減少も、中国経済の弱さを表しているとは言い難い。
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12月に石炭輸入量が前年比55%減ったのも、中国政府が輸入を制限しているという政策要因でしかない。当局は石炭業者保護のために国産石炭の使用を推奨しており、今年に入っても輸入制限は続くかもしれない。
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このようにコモディティ輸入数量に基づいて中国経済を判断すれば、金額ベースの輸出入統計のみに頼って出したのとは全く違う結論に達する。
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コモディティ価格下落は18年後半の輸入額を減らしたが、輸入数量についてはむしろ増やす働きをした。
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中国経済は成長の勢いをある程度失っているように見える。それでも金額ベースの輸出入統計だけに目を向け、数量を無視するのは合理性に欠けるように思われる。
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