.
「戦後世界秩序」が実は徐々に崩れている事実!
.
この数年で世界は新たな時代に突入!
.
.
トランプ政権は米国に甚大な政治的混乱をもたらした。
.
トランプ米大統領の怒り、プーチン・ロシア大統領の歴史修正主義、習近平・中国国家主席の野望……これらによって時代が形成される中、戦後世界を支えてきた国際秩序は混乱し、危険とさえいえる状況になってきた。なぜ、こんなことになったのか。
.
第2次世界大戦後の世界は、最近まで寛容かつ自由な国際協調の時代だった。その基礎が築かれたのは1941年、フランクリン・ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相が、大西洋憲章を起草したときだ。二人はナチス・ドイツの打倒にとどまらず、平和と民主主義の未来に向けた土台を本気で作ろうとしていた。
.
その成果は、両人の想像を超えるものだったに違いない。大西洋憲章に続いて、国際連合やブレトンウッズ体制、国際貿易システム、世界人権宣言が生まれたからだ。
.
1990年代初頭、中国が改革・開放を加速し、ソビエト連邦が崩壊した。それからの四半世紀は、世界が真の意味で進歩したすばらしい時代だった。大国間で大きな戦争はなく、貿易の拡大によって経済成長は加速。世界の貧困は半減した。科学技術における進歩の恩恵は世界の隅々に及んだ。
.
だが、この数年で世界は新たな時代に突入した。理想と希望の政治は、分断と恐怖の政治に姿を変えた。この流れは西側諸国を次々にのみ込んでいる。最も顕著なのが、奇跡的な進歩の時代をお膳立てした二つのアングロサクソン国家、米国と英国である。
.
英国は政治的混乱を極めており、見るからに痛ましい。英国は2016年の国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めた。それからというもの、EU離脱の後に待ち受ける国際的な地位低下を回避する道を探っているが、何の成果も上げられずにいる。
.
英国人は「国家主権」なる概念にしがみついている。だが、それは幻想にすぎない。英国はかつて、すばらしい政治手腕を世界に対して発揮した。今では視野の狭い言い争いが、この国の主流になってしまった。
.
トランプ政権が米国にもたらした政治的混乱の帰結は、英国の比ではない。過去何十年にもわたって、米国は先頭に立って世界を導いてきた。今となっては国際秩序に敬意を払うことすらせず、敵意に満ちた言説をバラまいている。
.
米国が世界秩序を守るべく奮闘するのは、逆効果となるばかりか自滅的だ……これがトランプ政権の公式な国家安全保障戦略で描かれた世界観だ。この戦略によれば、未来は国家間の紛争のみによって形づくられることになる。
.
おきてを無視し他国を侵略するロシア、国際舞台で傲慢に振る舞うようになった中国の存在を考えれば、米国の路線変更も無理からぬことではある。だが、いくら台頭する脅威に対抗するためであっても、国際秩序を壊すのではなく、守る方向へと本能的に動くのが、米国大統領の本来あるべき姿だ。
.
トランプ政権から発せられる声明は、秩序と呼べるものすべてに打撃を食らわせるのが目的のように見える。これは嘆かわしいことである。同政権は「万人の万人に対する戦い」の勝者となるのは米国だと言わんばかり。それは、保護主義と圧力によって貿易をコントロールすべき、というのが米国の理屈だからだ。
.
中国には、トランプ氏が掲げる利己的ロジックは魅力的なはずだ。国際ルールが減れば減るほど、中国が海外に影響力を行使するのが楽になるのだから。この流れで行けば、西側諸国は間違いなく敗者となる。これまで繁栄と平和をもたらしてきた自由主義の理念や制度を放棄すれば、致命傷となりかねない。中でも、その立役者の米英は戦後の世界秩序に決して背を向けてはならないのだ。
.