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ホルムズ海峡通過の各国の輸送船・日本などに要求!
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トランプ米大統領は6月24日、ツイッターで、日本や中国などに対し、中東の原油輸送の大動脈ホルムズ海峡を通過する自国の石油タンカーは自分で守るべきだと主張した。
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トランプ米大統領、「イランは終わる」と警告=攻撃に徹底報復示唆。「なぜ米国が代償なしに他国のために輸送路を守っているのか」と指摘。「米国は最大のエネルギー生産国になっており(ホルムズ海峡に)とどまる必要さえない」とも述べた。
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トランプ氏はこれまでも同盟国に対し「応分の負担」を求めており、原油輸送路防衛についても同様の認識を示した形だ。ホルムズ海峡付近では13日、日本などのタンカー2隻が攻撃を受け、米国は「イランがやった」と非難。米海軍第5艦隊が日本のタンカーの救援活動を行った。
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米国のドナルド・トランプ大統領は24日、イランへの追加制裁を科す大統領令に署名し、イラン最高指導者アリ・ハメネイ師らを制裁対象に加えた。大統領のツイートには、「中国は原油の91%を(ホルムズ)海峡から輸入している。日本は62%だ。他の多くの国も似たような状況だ。どうして我が国が他の国々のために何年も何の見返りもなしにシーレーンを守らなければならないのか」 「(ホルムズ海峡を通って運ばれてくる原油に依存する)こうしたすべての国はいつも危険な旅を強いられている自国の船舶を自分たちで守るべきだ」「米軍が中東に展開している必要はない。米国は(断トツで)世界最大のエネルギー生産国になった。米国のイランへの要求は非常にシンプルだ。核兵器は持たない、テロにこれ以上、資金援助しないことだ」
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米国が世界最大のエネルギー生産国になった米エネルギー情報局によると、米国の石油生産量は昨年1096万バレル/日量と2位サウジアラビアの1042万バレル/日量を上回っています。
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また、米中央情報局(CIA)のワールド・ファクトブック(eia)によると、シェールガス革命によって米国の天然ガス生産量は2015年推計で7662億m3と2位ロシアの5980億m3を大きく引き離しています。
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しかしペルシャ湾からの年間原油輸入量は2012年の7億8308万バレルから15年には5億4286万バレルに減少。17年には6億2593万バレルまで戻しています。eiaの予測では2020年には原油、天然ガスなどエネルギーの輸出が輸入を1953年以来初めて上回るそうだ。
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中東の原油は米国にとってかつてほど重要ではなくなった。トランプ大統領になって土壇場で米ドローン撃墜に対するイランへの報復攻撃を撤回したのも、中東の泥沼に引きずり込まれるのを恐れたからでしょう。
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米国がイランを警戒するのはトランプ大統領の言う通り「核兵器開発」と「テロへの資金援助」であるのは間違いない。国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー展望2017年版」によると、世界のエネルギー需要は2040年までに30%増えます。一方、米国は3000万toe(石油換算トン)の減、欧州は2億toeの減、日本は5000万toeの減少と予測されている。
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これに対してインドのエネルギー需要は10億500万toe、中国は7億9000万toe、東南アジアは4億2000万toeも増加する見通しです。原油輸入に占めるアジアの割合は現在の50%から3分の2以上になるそうです。これは中東の原油輸出量をはるかに上回っている。
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経済産業省の資源・エネルギー統計年報によると、18年、中東からの原油輸入は全体の88%を占めている。地球温暖化対策でエネルギー需要が減るとは言え、中東と日本を結ぶペルシャ湾からホルムズ海峡、インド洋、マラッカ海峡(ロンボク海峡)、南シナ海のシーレーンは日本の生命線であることに変わりはない。
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中東のシーレーン防衛から米国が撤退すると、南シナ海に人工島を造成して要塞化している中国の影響力はますます強くなってしまう。 米国は中国に対抗するために日本やインド、東南アジア諸国と協力してシーレーン防衛を強化すべきであって、トランプ大統領お得意の「離脱レトリック」は極めて近視眼的だ。
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船の所有者はノルウェー人、船籍国はリベリア、管理者はキプロス人、保険会社は英国法人であり、さらに米国の保険会社に再保険が掛けられ、乗組員は船長がポーランド人で船員はバングラディシュ人とフィリピン人、用船契約はアラブ首長国連邦(UAE)で、積み荷はイタリア、フランスそしてドイツに向け運搬している――。
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日本が本格的にシーレーン防衛に取り組みだしたのは、1981年「シーレーン1000カイリ防衛構想」からです。領海の12カイリを超えて、フィリピンと台湾間のバシー海峡までを日本が防衛するというものでした。
90年の湾岸戦争では戦争終了後、日本は海上自衛隊の掃海部隊を派遣し、機雷掃海を行っています。2001 年の米中枢同時テロではテロ特別措置法を制定してインド洋に補給艦と護衛艦 2 隻を派遣、米国など数カ国の艦船に給油活動を行いました。
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09年にはソマリア沖海賊対策のために自衛隊の護衛艦 2隻をソマリアに派遣している。15年に制定された安全保障関連法で集団的自衛権の行使が限定的に容認された際、ホルムズ海峡が封鎖されれば、海上自衛隊を機雷掃海のため派遣できるとの政府見解を示しています。
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6月13日、ホルムズ海峡近くで東京の海運会社「国華産業」が運航す タンカーが攻撃された事件では、岩屋毅防衛相は「この事案で部隊を派遣する考えはない」と述べた。
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イランはだ、ホルムズ海峡での攻撃を本格化させたわけではなく、世界最大のエネルギー生産国になった米国が中東への関与を弱めていくのは当然だろう。
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ホルムズ海峡を通過するペルシャ湾からオマーン湾に至るシーレーンは、中東を管轄する米中央軍傘下の第5艦隊(司令部バーレーン)を軸に「CTF152」と呼ばれる米軍や湾岸諸国などで構成する多国籍軍が警戒している。
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今回の事件では、第5艦隊が時系列を公表しているが、最初にノルウェーの企業が運航するタンカーが攻撃された当時、米海軍イージス艦「ベインブリッジ」は約72キロ離れた位置にいた。全速力で飛ばしても、1時間以上はかかる。
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ベインブリッジはトランプ米大統領が対イランで中東に派遣した空母機動部隊に所属しており、いわば追加の戦力。事件後、中央軍はさらにイージス艦1隻を派遣した。中央軍で3年近くJ5(戦略・政策)を担当した元海軍中将のマイケル・フランケン氏は米軍事専門サイトに「米海軍は長期に及ぶタンカー護衛任務が可能なアセット(艦船)が不足している」と指摘している。
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タンカー事件後、ポンペオ米国務長官の発言が自衛隊関係者の関心を呼んでいる。事件から3日後のFOXテレビ出演や、18日に中東を管轄する米中央軍を訪問した際に、ホルムズ海峡の航行の自由に依存し、経済的利益を得ている国として、中国、韓国、インドネシア、日本の国名を繰り返し挙げたからだ。
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「自国の経済に与える真の脅威を理解すべきだ」と対イラン政策に同調を求める一方で、「ホルムズ海峡を経て米国に輸入される原油はごくわずかだ」とも語っている。
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米軍事専門誌「ディフェンス・ニュース」(電子版)によると、米軍制服組ナンバー2のセルバ統合参謀本部副議長も「われわれはホルムズ海峡の航行の自由と石油の移動を確保する国際的責任を果たしてきたが、それは米国だけの問題という意味ではない」と、「ただ乗り」にくぎを刺している。防衛省関係者は「情勢が悪化した場合のシーレーン防衛は、米側が利益を享受する同盟国に応分の負担を求めてくる可能性はある」と話す。
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では日本はどう対応するのだろうか。政府関係者はあくまでも「頭の体操」と強調した上で、「攻撃の頻度や国際社会の動向も見極め、人命・財産保護が必要と判断されれば、海上警備行動の発令は選択肢」と説明する。海警行動は洋上の人命・財産の保護や治安維持を目的としており、地理的制限がない。ソマリア沖アデン湾の海賊対処活動も当初は同行動に基づいていた。
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護衛艦がタンカーをエスコートする場合は、船主から航行情報を事前にもらい、攻撃される危険性が高い「ハイリスク海域」を随伴。レーダーやソナーで不審船や対空脅威、機雷がないか警戒に当たるとみられる。魚雷の脅威に対しては、デコイ(おとり)の投下などが考えられる。緊迫した海域だけに、警戒監視能力の高いイージス艦が派遣される選択肢もある。
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海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は18日の記者会見で、「ホルムズ海峡を通過する一般の貨物船・タンカーが安全に航行できることが国際社会として重要」と指摘。タンカーに爆発物が仕掛けられた経緯などについて情報収集している段階だと説明した。海上自衛隊が派遣される可能性については「政府の決定に基づき行動するものだ」と述べるにとどめた。
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