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臨時株主総会が終わってみなければわからない!
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本当の損得計算は株価次第!
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前田建設工業がTOBで前田道路の株式を取得(51.29%)し、道路を子会社化した。前田道路は買収に対し一貫して反対してきたし、4月の臨時株主総会でスンナリ事は収まるだろうか。
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前田建設は1月21日から前田道路に対するTOBを開始した。買い付け価格は直近株価に約50%のプレミアムを乗せた1株3950円。3月12日までという買い付け期限で総額約861億円を投じた。
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しかし、前田建設によるTOBに「具体的なシナジーがない」などと反発し、建設側に対し、資本提携の解消を申し入れ、1月24日にはTOBへの反対を表明した。
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前田道路は1株当たり650円、総額約535億円に及ぶ巨額の特別配当を行い、自社の純資産を圧縮してTOBの撤回を迫るという対抗策も打ち出し、加えて、2月27日に同じ道路舗装業の業界最大手NIPPOとの資本業務提携の検討を始めた。
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あの手この手を使ってもTOBを撤回しない前田建設に、前田道路は妥協案を提示した。前田建設がシナジーを見込んでいるインフラ運営事業について協業の可能性を検討するワーキンググループを設置するほか、TOBの撤回や株式の買い増しの禁止、特別配当への賛成、前田建設が指名する社外取締役の選任などだが、建設側はTOBの撤回や特別配当への賛同はのめないとして、提案を拒絶、結果的にTOBは成立した。
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TOBが成立し、建設側は「(前田道路の)経営の独自性は尊重する。総合インフラサービスを一緒に目指す協議をこれからも続けていく。状況も変わったので、受け入れてほしい。従業員、組合に対する説明の機会も設けたい」と発表したが、道路側の代理人は「粛々と開示を行うだけ。とくにコメントはない」とした。
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4月14日に開催される臨時株主総会だが、コロナウイルス騒動の最中に、果たして株主総会が開かれるか、延期されるのか、現状では定かでない。
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この臨時総会で、前田道路の提案した1株650円の特別配当が議案として上程され、株主の過半数の賛成を得れば特別配当は実施される。臨時株主総会の基準日は3月6日。同日時点の株主が議決権を行使できる。前田建設が前田道路の51%株主となるのは3月19日の決済後であり、臨時株主総会時点での前田建設の議決権は24%程度だ。
前田建設側は「反対意見を出すか、委任状争奪戦をやるかなど現時点では未定」としており、直前の交渉で特別配当への賛同はできないとしていることから、「反対の意向を示すことになるだろう」(同)。
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短期の配当狙いの個人投資家は提案に賛成するだろうが、特別配当案の成否は機関投資家の動向次第となる。機関投資家が、巨額の配当実施は道路の純資産を減らすことになるので企業価値を損なうとみるのか、それとも株主への特別配当実施は利益還元となるので好ましいとみるか。
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特別配当実施は前田建設にとって頭の痛い問題だ。特別配当により前田道路の純資産が535億円減るため、前田道路の企業価値は目減りする。前田道路の株価は3月17日終値が2323円と、取得単価3950円の59%の水準に沈んでいる。
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現在時点でも、建設・道路の経営陣の信頼関係は崩れており、修復は可能なのか、、、。前田建設は「前田道路の経営の独自性・自主性を尊重する」としているが、信頼関係のない経営陣とシナジーを生み出すのは容易ではない。
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