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宮城県、国内で初めて・運営権売却の条例可決!
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地方自治体の水道経営が岐路に立っている。人口減少で利用者が減り、水道収入は先細りが明らかだ。一方で高度成長期にかけて整備した水道管の老朽化が進み、地震など防災面から設備更新を迫られている。現状のままでは経営が立ちゆかなくなることが確実。このため複数の自治体による広域化で事業基盤を強化する動きが相次いでいる。日経グローカルの調査では100を超える市が広域化を実施・検討していると答えた。
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宮城県で2019年12月17日、水道事業の運営権を民間企業に売却する「コンセッション方式」の導入が決まった。同日の県議会で関連する条例案が成立した。上水道と下水道、工業用水の3事業の運営権を一括して売却するのは全国で初めて。人口減や水道設備の老朽化などで自治体の水道経営は厳しさを増すなか、民間活用に踏み込んだ「宮城モデル」の成否が試される。
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「水道料金の上昇を抑えるために民間のノウハウと資金を最大限に活用したい。我々も責任を持って協力する」。村井嘉浩知事は12月17日、県庁で記者団にこう述べた。導入するのは水道事業の設備を県が保有したまま、運営権を民間企業に売却する「みやぎ型管理運営方式」。2020年3月に企業の公募を始め、22年4月に事業を開始する。
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コンセッションで売却対象となるのは9事業。上水道が大崎広域水道事業や仙南・仙塩広域水道事業など卸売りによる2事業、下水道は阿武隈川下流流域下水道事業など4事業、工業用水は仙台北部工業用水道事業など3事業となる。対象地域の人口は県全体の8割にあたる約190万人だ。
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県は現在、浄水場などの運転管理を企業に委託しているが、仕事内容や運営手法などは事前に細かく決められている。新たに導入するみやぎ型は県の求める品質水準を満たすことを条件として企業の裁量余地を広げる。経営努力によって利益を生み出しやすくなるため、企業のコスト削減意欲が高まるとみている。
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水道事業のコンセッションを巡っては浜松市が18年4月、下水道で全国に先駆けて導入した。上水道でも計画したが、19年1月に延期を決めた。水質悪化や料金高騰に懸念を抱く市民団体などから反発が大きかったためだ。宮城県内でも「拙速だ」「説明不足」といった反対の声は上がった。
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村井知事は県議会の答弁で「水質や経営は県がしっかりとチェックすることで不安を解消したい」と理解を求めた。県は水質維持のためにいくつかの手立てを講じる。法律に基づいて51項目の水質検査は県が担う。このうち県が独自に設定している13項目は法律より厳しい基準を設けた。抜き打ち検査も実施し、県が求める水準に達しなかった場合は違約金を課す。
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外部の有識者らによる第三者委員会も設置。水質チェックのほか、財務など経営を中立的な立場で監視する。運営権を売却する企業の選定についてはこれまでの運営実績などを考慮して決める。3年以上の水道事業の経験を持っていることや外国企業は日本法人の取得が必要とした。資本金の下限も設ける方針だ。
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