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インフラ投資促進策は、着実な効果を発揮!
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対策は何処かが犠牲となる!
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中国政府は19年入り後、融資拡大や減税、地方債発行の前倒し等の景気対策を相次いで打ち出している。これらの結果、深刻な不況入りは回避できると見込まれる一方、構造問題への対応が遅れる恐れもある。
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中国国家統計局は4月17日、1~3月期の国内総生産(GDP、速報値)が物価変動の影響を除く実質で前年同期比6・4%増だったと発表した。
2018年10~12月期から横ばいとなり、3四半期続いた減速に歯止めがかかった。中国政府が相次いで打ち出した景気対策の効果とみられるが、米国との貿易摩擦は長期化しており、このまま景気回復に転じるかは不透明だ。
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中国政府は19年通年の成長率目標を「6・0~6・5%」と設定しており、目標内の高め水準でのスタートとなった。統計局の毛盛勇報道官は17日の記者会見で「市場のマインドが改善し、プラス要素が徐々に増えている」と語る一方、「経済の下押し圧力は残っている」と指摘した。
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同時に発表した1~3月期の主要経済指標を見ると、政府がインフラ投資を増やしたことで固定資産投資は6・3%増となり、18年通年(前年比5・9%増)から0・4ポイント加速した。このうち不動産開発投資は11・8%増となり、伸び率は2・3ポイント拡大した。
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スーパーやインターネット通販などを合計した小売売上高は8・3%増で、伸び率は18年通年(9%増)から減速した。自動車の販売不振が響き、消費の勢いは力強さを欠いた。工業生産は6・5%増だった。
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政府はインフラ投資のほか、4月に大規模な付加価値税(消費税)減税を実施するなど景気対策を急いでいる。ただ、米中貿易協議は追加関税の扱いなどで溝が残っており、協議の行方が中国の景気回復に影を落とす可能性もある。専門家からは景気刺激策の反動を懸念する声も出ている。
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最大の景気押し下げ要因は、固定資産投資のスローダウンである。とりわけ、製造業の設備投資が弱い。低迷している設備稼働率は、設備過剰感が強まっていることを示唆する。設備投資の動向を反映する資本財の輸入も大幅に減少している。こうした投資不振は、政府が与信や債務の拡大を抑制するデレバレッジ政策を強化したことが原因である。
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しかし、予想以上の投資冷え込みに危機感を抱いた習近平政権は、行き過ぎたデレバレッジ政策を見直し、安定成長を重視するスタンスにシフトした。全人代の初日(2019年3月5日)に発表された政府活動報告でも、財政出動と金融緩和によって、景気の大幅な下振れを断固回避する姿勢が明確に打ち出された。
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全人代で示された企業向け減税と社会保障費負担軽減も、設備投資刺激策として位置づけられる。
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具体的には、
①付加価値税率引き下げ(製造業など16%→13%、運輸業など10%→9%)、
②中小企業向けの各種減税、
③年金など社会保障費の事業者負担率引き下げと公的負担率の引き上げ、の3つが柱である。
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政府によると、これらの措置によって企業の税負担と社会保障費負担を約2兆元軽減できるという。なお、1月9日に開かれた国務院常務会議によると、中小企業向けの企業所得税や付加価値税、資源税、都市土地使用税などの減税は2021年までの時限措置である。
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景気対策は、地方政府の財政健全化を棚上げにして実現したものといえる。さらに、過剰設備と過剰債務の問題を深刻化させる恐れもある。
もちろん、習近平政権もこの点を十分に理解している。とはいえ、政権の安定運営のために背に腹はかえられず、金融財政政策による景気てこ入れをせずにはいられない状況である。今回の景気対策は、現状を放置すると大変なことになるという政権の強い危機感を反映したものといえよう。
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