アラブ・中東戦略同盟:軍事大国エジプトが離脱!

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トランプとサウジの「アラブ版NATO」構想!
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ミサイル工場、サウジ建設か 米紙報道!
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エジプトが、「アラブ版NATO」から離脱したと報じられた。アラブ版NATOとは、中東で影響力を増すイランを押し戻すため、アメリカとサウジアラビアが先頭に立って推し進めてきた構想だ。
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ロイターが4月10日に報じた記事によると、エジプトは4月8日にサウジアラビアの首都リヤドで開催された首脳会議デモ、アメリカ政府や他の参加国に対して、離脱の意向を伝えたという。アラブ版NATOと称される「中東戦略同盟(MESA)」は、2017年にサウジアラビアが提言し、アメリカのドナルド・トランプ大統領が構築を目指してきた。
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エジプトは離脱理由として、構想の真剣さを疑問視したことや、MESAによってイランとの緊張が高まる可能性などを挙げた。エジプト政府はさらに、トランプが2020年大統領選で再選されなかった場合にはMESAが頓挫するか解体されるのではないかと懸念を抱いており、参加は無意味ではないかという結論に至ったようだ。
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アラブ世界で最大の軍事力を有するエジプトが離脱すれば、MESAは大きく後退するだろう。MESA構想には、エジプトとサウジアラビアのほか、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、バーレーン、カタール、オマーン、ヨルダンが参加している。しかしアナリストの多くは、MESAがうまくいく可能性、あるいは同地域で多大な影響力を持つ可能性はあまり高くなかったと話す。
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政治メディア「ジオポリティクス・フューチャーズ」のグローバル・アナリスト、ザンダー・スナイダーは、「MESAの成功については、大きな疑問符が常につきまとっていた。参加各国の利害がバラバラだ」と語った。「理論上はイランの封じ込めを目的とした同盟だが、MESA参加国のなかには、イランへの投資のほうにはるかに大きな関心を持っているところがある」
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エジプトは、サウジアラビアほどイランを恐れていないと、スナイダーは指摘する。サウジアラビアほど地理的にイランに近くないからだ。またエジプト政府は、湾岸諸国が外国で率いる戦争に引きずり込まれることを懸念しているという。サウジアラビアのイエメン内戦介入や湾岸諸国のシリア介入が、いずれもうまくいっていないためだ。エジプトが、「何も得るものがないのに国を疲弊させる戦争をいやがっているのは明らかだ」とスナイダーは述べた。
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「エジプトの離脱はMESA構想にとって大きな痛手だ」と言う。「ほかの参加国もそれに続き、アラブ版NATO構想は近い将来、消滅することになるだろう」
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原油供給では好調な米国だが、需要の方はぱっとしない。
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今年に入り自動車販売が低調であることから、需要期に入っているガソリンの販売量が前年を下回って推移しており、製油所の稼働率が上昇しない。
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原油価格上昇の最大の功労者であるサウジアラビアは当面の目標としていたブレント原油価格1バレル=70ドル超えを達成したが、財政均衡原油価格は1バレル=80ドル超であることから、今年6月以降も協調減産を続ける意向を示している。トランプ大統領は3月28日「原油価格は高すぎる」としてOPECに増産を呼びかけたが、2018年の反省からOPECは再三の増産要求に耳を貸すつもりはないようだ。
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原油価格の維持・上昇に必死となっているサウジアラビアにとって頭痛の種は、米国で審議されている「OPEC加盟国を反トラスト法違反で提訴することを可能にする法案(NOPEC法案)」である。4月5日付ロイターは「NOPEC法案が成立すれば、サウジアラビアは自国の石油をドル以外の通貨で売却する」と報じた(サウジアラビア側は否定)。サウジアラビアがいかにNOPEC法案を嫌がっているかの証左だが、財政事情に加え、高油価を梃子に経済の脱石油依存を推進したいからであろう。
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サウジアラビア政府は、先端産業育成や都市開発などで石油に頼らない産業構造の育成を目標としているが、2018年10月のカショギ氏殺害事件の悪影響で当初想定していた外国企業の協力が得られていない。
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欧米メディアのサウジアラビアに対する視線は相変わらず厳しいままである。米紙ワシントンポストは3月29日、「ジャーナリストのカショギ氏を殺害したグループ(サウジ即応介入班)に米国で訓練を受けた者が数名含まれていた」と報じた。この特殊訓練は米国務省の認可に基づきアーカンソー州を拠点とする企業によって実施されたが、カショギ氏殺害事件以降訓練は中断したままであるという。また、英紙ガーディアンも3月31日、「サウジアラビアの刑務所で政治犯への残虐な拷問が実施されている」と報じている。
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サウジアラビア政府にとってのもう1つの喫緊の課題はエネルギー源の多様化だ。その目玉は原子力開発である。
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サウジアラビア政府は2018年11月、初の研究用原子炉を建設するプロジェクトを始動させていたが、首都リヤド近郊に建設されている研究用原子炉の工事の進捗が予想以上に速いペースで進んでいることが衛星写真の分析で明らかになった(4月7日付CNN)。
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原子炉の立地場所選定については仏企業が協力している(日本原子力産業協会調べ)が、米国や中国などが裏で援助している可能性もある。研究用原子炉の完成後には民生用の原子炉2基を建設する計画があり、発注先として米ウエスチングハウスをはじめ、中国、ロシア、フランス、韓国の企業が候補に挙がっている。
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建設中の研究用原子炉は技術者の訓練を目的とした小規模な装置だが、国際原子力機関(IAEA)は4月6日、サウジアラビアに対して「今年末までに稼働開始予定の原子炉に供給される核燃料が軍事目的に転用されることを回避するため、包括的保措置協定をIAEAとの間で締結する必要がある」と警告を発した。
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「核兵器不拡散条約(NPT)」締結国である非核兵器保有国は、NPT第3条に基づき包括的保障措置協定を締結することが定められており、締結国は核物資や原子力施設に関する情報の提供、査察の受け入れ等の義務を負うことになっている。
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日本は1977年に締結し、核疑惑のイランも既に締結済みだが、サウジアラビアはNPT加盟国であるにもかかわらず包括的保障措置協定を締結していない。
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サウジアラビアは原子炉建設について平和目的を繰り返し強調してきたが、ムハンマド皇太子は昨年3月「イランが核兵器を開発すればサウジアラビアもただちに後を追う」と発言、「衣の下の鎧」を見せたという経緯がある。原子炉の建設に加え、燃料となる濃縮ウランを国内で製造する許可も求めていることがさらなる疑念を生じさせている。
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包括的保障措置協定を締結せずにサウジアラビアが原子炉を稼働させれば、NPT体制にとって大打撃となることは必至である。サウジアラビアとの良好な関係を保っているトランプ政権は今のところ静観の構えであるが、サウジアラビアの「核疑惑」については引き続き注視していく必要がある。
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米紙ワシントン・ポストは2019年1月24日、複数の専門家の話として、サウジアラビアが弾道ミサイルの製造工場を建設している疑いがあると報じた。事実であれば、敵対するイランとの間で軍拡競争に陥る恐れがあり、中東全体の緊張を高める可能性がある。
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同紙によると、工場があるのは首都リヤドの南西。
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首都リヤドの南西にある工場の衛星写真を分析し、ロケットエンジンの製造や実権を行う施設との味方を示したという。
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一方で、工場が完成しているのか、実際にミサイルを製造できるかは、衛星写真では確認できないという。工場の建設が事実であれば、サウジと敵対するイランが反発し、中東の軍拡競争に繋がる恐れもある。
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工場の衛星写真を分析した専門家らは、固形燃料を使ったロケットエンジンの製造、実験を行う施設との見方を示した。施設の形状から、中国が技術面で協力している可能性があるという。
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サウジが自前のミサイル開発に踏み切った原因は、2017年12月19日のイエメンの反体制派武装組織「フージ派」が応急を狙って発射したミサイルを迎撃したことではないのか。
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当時の記事に、「現地メディアによりますと、サウジアラビアの首都リヤドの上空で19日、イエメンのイスラム教「シーア派」で反体制派武装組織「フーシ派」が発射したミサイルがサウジ当局によって迎撃されました。被害は確認されていません。一方、フーシ派はサウジアラビアのサルマン国王らが会議を行っていたリヤドの王宮を狙い、ミサイルを発射したと発表しました。ミサイル発射を受けて、サウジ主導の連合軍はイエメンの首都サヌアにあるフーシ派の拠点を空爆しました。フーシ派は3日にもUAE(アラブ首長国連邦)で建設中の原子力発電所を狙ってミサイルを発射するなど、イエメンへの軍事介入を行うサウジアラビアなどへの攻撃を強めています」とある。
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