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木がメタンガスを放出!?
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地球温暖化の抑止のために森林を増やそう……というのは、逆効果かもしれない研究報告。
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樹木自体がメタンガスの放出源になっているらしい。
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1907年、米カンザス大学の化学教授フランシス・W・ブション氏は、天然ガスの主要成分であるメタンが樹木の中に含まれていることを発見し、化学の専門誌「Chemical and Physical Papers」に発表した。
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(中略)
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「一本一本の木が出す量はわずかですが、世界的に見れば数兆本ですから、相当な量になります」
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(中略)
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現在、水分の多い土地の樹木が放出するメタンは、土壌の微生物に由来すると考えられている。根で酸素が運ばれるときに、土壌からメタンが吸い上げられ、木から放出されるという。しかしガウチ氏らは、木の中にいる微生物や、あるいは紫外線を浴びたときの光化学反応によって、樹木自体もメタンを生成していることを明らかにした。
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(中略)
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これらの新たな発見は、これからの森林管理に議論を呼びそうだ。今までは、森林が二酸化炭素を吸収し蓄えるという能力だけが注目され、樹木が持つその他の特性には注意が払われてこなかった。
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地球環境や自然の仕組みについて、現在の科学でも全容は解明できていないという、典型的なケースだろう。
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温室効果ガスとしては、二酸化炭素が注目されているのだが……
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メタンは天然ガスとして採掘され、工業用に生産もされるが、自然由来のものも多い。近年注目されている海底のメタンハイドレードは、マグマから火山ガスとともに生成されるという。
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水田等の土中微生物や牛などの草食動物もメタンガスの発生源である。畜産によるメタンガス排出は、全体の21%にもなるとの説もある。
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メタンが大気中に存在できる大気中寿命は、約12年だとされている。比較的短命で分解される。
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二酸化炭素はというと、炭素循環で様々な過程を経ているため、大気中寿命の考え方はないそうだ。なぜ大気中寿命を考慮しないのか、釈然としないのだが……。
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記事のポイントは、メタンが自然に分解される量よりも、排出される量の方が多いらしいのがわかったことだ。つまり、放置しているとメタン濃度が増していくことになる。それが温暖化に拍車をかけると予想される。
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森林保護は生態系の維持のためには必要だし、酸素の生成や二酸化炭素の回収の役割もある。
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余剰分となるメタンは、永久凍土の融解および水田や家畜から発生する。水田や家畜は食糧生産であり、人間の活動によるもの。
それを減らせるかというと、世界的に増え続ける人口を養うためには、食糧増産はやめられない。米や肉を食うな……というなら話は別だが、代替できる食糧はあるだろうか?
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二酸化炭素の排出量を削減しても、人口が増え続ければ、全体量は増加する。
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世界人口は、2012年時点で72億人と推計され、2100年には、109億人に達すると予測されている。 (注:人口減少に転ずるとの説もある)
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人口増加のシナリオでは、2100年に37億人増加、約1.5倍になる。人口は1.5倍だが、エネルギー消費量は2倍になるとの予想もある。増えた人口分の食糧生産は増産しなくてはいけなので、耕作地や家畜を増やす必要がある。そうなれば、メタンの発生量も増えるだろう。
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パリ協定では、以下のように謳われているのだが……
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世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする。そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる……と、「森林などによる吸収量」との前提が、森林によるメタンの排出によって崩れてしまう可能性が出てきた。
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楽観的未来予想としては、2100年には車はすべて電気自動車になり、すべての発電所は再生可能エネルギーに転換しているはず。化石燃料を燃やすことはなくなり、二酸化炭素の排出は激減しているだろうから、温暖化の危機は去っている……かもしれない。
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しかし、メタンの問題は残る。結局のところ、温暖化を含めた環境問題の根源は、人口が多すぎることだ。人口を減らすことを、考えなくちゃいけなくなるかもしれない。
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