米大都市に増える感染症:格差社会の貧困層での脅威!

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感染拡大は中間層・富裕層にも!
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止めることは至難の業!
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先進国の感染症患者は減っているが、米国では一部の疾患のアウトブレイクが多発している。原因は所得格差の拡大による貧困層の増大にあると、米ジャーナリスト、M.モイヤーは報告している。
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米疾病対策センター(CDC)によると、全国統計を取っている3つの性感染症はいずれも罹患率が上昇している。レジオネラ症とC型肝炎についても同様の傾向がみられる。
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米国ではここ数年、A型肝炎のアウトブレイクが頻発している。2016年8月からミシガン州南東部で始まり、18年1月までに患者が770人以上に達した。ワクチンが実用化した1995年以降では米国で最大規模だ。感染者の81%が肝障害で入院したと推定され、18年3月上旬までに25人が死亡。通常より入院率がはるかに高く、デトロイトのヘンリー・フォード病院の医師S.ゴードンは「かつてない極めて深刻なアウトブレイクだ」と話す。カリフォルニア州でも16年11月から18年2月までに700人が感染。ユタ、コロラド、ワイオミング、ケンタッキー各州でもアウトブレイクが起きている。
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ほかにもニューヨーク市では17年、給水設備で繁殖する細菌による肺炎、レジオネラ症が前年より65%増加し、史上最多を記録した。サンフランシスコでは淋病の罹患率が15年から16年の間に22%増加。クラミジアと淋病、梅毒の罹患率は、全米で記録的な高さとなっている。C型肝炎の罹患率はこの5年間でほぼ3倍になった。
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米国を含む先進国では、集団予防接種の普及や下水設備の改善などにより、感染症は大幅に減少した。だが米国では一部が再興しており、主因は所得格差の拡大にあると研究者らはみている。年間所得1万5000ドル(166万円)未満の世帯が2000年から16年の間に37%増加。
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一方で15万ドル以上の世帯数も同程度に増えた。住民のほぼ半数が貧困状態にある地域の人口は倍増し「米国はますます極端な富裕層と極端な貧困層が暮らす発展途上国のようになっている」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のM.クシェルはいう。「極端な貧困層の生活状況は極めて悪い」
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16年の米科学アカデミー紀要への報告によると、1918年のスペイン風邪の流行時、シカゴにおける死亡率は、貧困度の指標となる非識字率が10%高くなるごとに32%増えた。また人口密度や非識字率、失業率が高い地域ほど短期間で広がった。
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貧困層は健康的な食生活を送るのが難しい。
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スーパーの価格調査によれば、果物や野菜などの健康的な食品は、菓子などの不健康な食品に比べ1食あたりの価格が約2倍だ。肥満や糖尿病は低所得層で増えている。「糖尿病の影響の一つは(感染症と戦う)免疫系を損なうことだ」とクシェルは言う。
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労働条件にも問題がある。米国では100万人以上の低収入労働者が調理関連の職に就いているが、Family and Work Instituteの14年の報告書によると、従業員に有給病気休暇を与えている雇用主は52%で、うち41%は勤続1年以上の従業員のみだ。「働かなければ給料をもらえないと感じれば、多くの病人が出勤することになるだろう」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校のJ.フィールディングは言う。
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原因が貧困でも、いったんアウトブレイクが始まれば社会全体に広がる。ミシガン州では多くの中間層、富裕層がA型肝炎にかかった。国が弱者から社会資源を奪えば予期せぬ感染症のまん延を許すことになると、モイヤーは指摘している。
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