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1960年代の更新時期が来ている!
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海外に製造販路が見込める!
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「消波ブロック」、港や河川敷にごろごろ転がっている、三角形とも三角錐とも名状しがたい無骨なコンクリートの塊。一般的には「テトラポッド」の名で親しまれているが、これは最大手メーカーである不動テトラの商標で、正式名称は「消波ブロック」、あるいは平たい形のものと併せて「消波・根固ブロック」などと呼ばれる。
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3月中旬、JR水戸駅から先にある茨城県大洗町。全国有数の広さを誇る大洗サンビーチ海水浴場で、大量の消波ブロックが造られていた。
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独特の丸みを帯びた4脚のブロックが海水浴場にひしめき合う。「ここまで大規模な現場はなかなかない」。製造社は不動テトラ東京本店茨城営業所。
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大洗町で大量の消波ブロックが造られているのは、2011年3月の東日本大震災で同町が深刻な被害を被ったからだ。東北地方だけでなく、町の沿岸部にも停泊中の船やコンテナを運ぶ10tをも押し流す津波が押し寄せた。その教訓として、海岸線では防潮堤の建設や土地のかさ上げ工事が進んでいる。波がぶつかることで威力を減衰させるブロックも、津波や海岸浸食対策として港や浜辺に設置されている。
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重くサイズも大きいブロックは輸送コストがかさむため、現地生産が基本だ。ブロック会社の稼ぎ頭も、ブロックの製造・出荷ではなく、コンクリートを流し込む型枠のリース料となる。大洗町の現場で造られているブロックの型枠は不動テトラの所有で、現場で製造するブロック1個につきいくら、という契約で地元の建設業者に貸し出されている。
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製造中のブロックは12tモデルだが「これはまだまだ小さいほう。大きいブロックでは80t級にもなる」という。その場合は足場も必要で、ブロック1個の製造でも現場はちょっとした戸建て並みの規模になる。
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完成したブロックには識別番号が振られており、おおよそ1500個のブロックが海水浴場に出現することになる。12tモデルでは、型枠リース料や労務・資材費などを含めて1個10万円ほどだという。完成したブロックは、既存のブロックの上にクレーンで積み重ねられていく予定だ。
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高度経済成長の波に乗り、ブロックは全国の護岸工事で設置されていった。1967年には業界団体である「日本消波根固ブロック協会」が発足、現在16社1支部が加盟するひとつの産業へと成長した。
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ビジネスとしての消波ブロック事業の先行きには不透明感が漂う。「全国の港湾でブロックの設置が一巡し、需要が細ってきている」(日本消波根固ブロック協会)ためで新規に設置できる港湾や河川敷になくなってきているのだ。市場全体の統計が存在せず厳密な業界動向の把握は難しいが、上場企業3社のブロック事業部門の売上高推移を見ると、長期的な衰退傾向にある。
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業界トップの不動テトラの収益柱は海洋土木や地盤改良事業であり、会社の源流であるブロック事業は慢性的な赤字が続いている。
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売上高推移のグラフが時折突き抜けているのは、震災復興で一時的に消波ブロック需要が急増するためだ。東日本大震災のほか、1995年の阪神淡路大震災や2004年の新潟中越地震でも港湾や河川が被災し、設置していたブロックが破損したことから、一時的に型枠の引き合いが強まった。だが復興需要も一段落し、震災前の水準をも下回りつつあるなど、「特需」頼みでは未来は拓けない。
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業界からは「減少は底を打った」という楽観的な声も上がる。目線の先にあるのは、既存のブロックの更新需要だ。コンクリートの寿命は一般的に約50年。1960年代の高度経済成長期に爆発的に出現したブロックが、一気に更新時期を迎えるのだ。ブロックの設置を国が音頭を取って進めたこともあり、今回の維持更新も国の政策的な投資が見込めるのでは、と業界は期待を寄せる。
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技術開発が進んだ結果、消波ブロック自体も進化を遂げている。代表的なものは、ブロック特有の概念である「空隙率」の向上だ。
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立体ブロックは積み重ねるとブロック同士のすき間ができるが、このすき間の割合を空隙率と言う。空隙率が高い、すなわち積んだ際のブロック同士のすき間が大きいほど、少ないブロック数で広い面積をカバーできるためコスト削減につながる。さらにブロックの先端に突起を作って積み重ねても崩れにくくしたり、イオンを放出する特殊な素材を用いてブロックに藻が繁殖できるようにしたりするなど、陰ながら改良が続けられている。
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国内での更新需要に加えて、各社は東南アジアやアフリカなどでブロック設置工事を受注するなど、海外展開も進みつつある。アジアには主要なブロックメーカーが存在せず、ブロックがおいていない港湾や河川も多数存在する。経済発展により電力需要が増加することに伴う発電所の建設も追い風だ。沿岸部に建設される発電所には津波対策として消波ブロックが設置されるため、大型案件の受注のチャンスになる。
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市場の縮小に歯止めがかからず、じり貧状態だった消波ブロック業界。反転攻勢に向けた模索はしばらく続きそうだ。
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