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販売メーカーとグルで虚偽申告!
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指定材料・下水汚泥溶融スラグ混合改良土!
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数億円の被害の可能性!
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大阪市発注の下水道工事で、業者が安価な材料を使用し不正利益を得た疑いがある問題で、工事で市が使うよう指定している改良土の販売メーカー1社が2015~16年度、ほとんどの工事で白紙伝票を発行、購入業者の一部がそれを利用し、正規の材料を使ったとする虚偽伝票を作成して市に申告していたことが分かった。市が12月26日、調査の結果を公表した。
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市は、改良土の販売メーカーから提出を受けた販売集計と、業者の買い取り量を示す「計量伝票」の差が千トン以上あった15件を選んで調査。19のうち4業者が、販売メーカー側から白紙伝票を受け取り、虚偽申告したことを認めたという。
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大阪市は12月6日、2015~16年度に施工された工事のうち少なくとも14件で業者が契約違反を認めたと明らかにした。安い資材を使うことで不正に得た利益は約1億4500万円に上る可能性があるという。
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同日の市議会建設消防委員会で市側が明らかにした。吉村洋文市長は「事実の解明と責任の所在を明らかにする。刑事手続きや民事での賠償請求も検討する」と述べた。
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問題となったのは、老朽化した下水道管を交換して埋め戻す工事。市は12年度からリサイクル促進を目的に、下水汚泥を高熱処理したスラグを混ぜた「下水汚泥溶融スラグ混合改良土」を材料として使用することを契約条件としている。
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市によると、不正使用の疑いがある工事15件の抽出調査で、業者側は14件についてスラグ混合土とは異なる資材を使ったと認めた。16年度までの5年間で業者側が市に報告したスラグの使用量は、混合土メーカーが実際に業者に販売した量の3分の1だった。
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大阪市発注の下水道工事で、下請け業者が市の指定より安い資材を使ったのに、伝票を偽造して正規の資材を使ったように見せかける不正が横行していたことが分かった。
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複数の業者は「約10社が数年前から偽装していた」と証言しており、市が2016年度までの5年間に発注した約200件の大半で行われ、合計数億円の差額が不正な利益になった疑いがある。背景には市のチェックの甘さや一部の市職員が黙認していたとの証言もあり、市が先月下旬から業者への調査を始めた。
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不正があったのは、下水管の入れ替え工事。市は12年度から、工事で掘削した穴の埋め戻し材として、下水道の汚泥をリサイクルした「下水汚泥溶融スラグ」を混ぜた土を使うことを必須条件とし、設計書などに明記。工事単価を高めにしていた。
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ところが、工事を下請けした約10社のうち3社はスラグ入りの土について、
▽値段が高い
▽特定のメーカーしか販売しておらず、購入が面倒
▽供給量が安定しない
--などの理由で「ほとんど使っていない」と証言。
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不正がばれないようにメーカーから白紙伝票をもらい、市の指定通り購入したように数値を水増しするなどして提出したという。
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工事の多くは元請けは名目だけで、実際は下請け約10社が施工。関係者は「スラグ入りの土を全く使っていないのに1000トン以上使用したと報告した業者もいる」と話す。一方、ある元請け業者は「下請けに任せており、不正は知らなかった」と釈明している。
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スラグは汚泥を高温で溶かして固めた黒い砂状の物質。市の施設で年間約9000トン作られ、リサイクル目的で、1トン当たり51円で、複数の土壌メーカーに販売している。メーカーはスラグと土を混ぜ、施工業者に販売。あるメーカーは「スラグ入りの土は運搬費がかさみ、通常の土より6倍ほど高く1トン1200円程度になる」と話す。
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市が発注の12~16年度の工事では、埋め戻し材に年間1万5000トン前後のスラグが使われる設計だった。しかし、メーカーが市から購入した量は年間675~3024トンで、22~5倍の開きがあり、5年間の総計では約9600トンで平均8倍の差だった。業者が市の指定通り、スラグを使った場合と比べて、経費が数億円安かった可能性がある。
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ある業者は「市はスラグの販売量が少なすぎることになぜ今まで気づかなかったのか」と批判。別の業者は「市の担当者にスラグを使っていないと伝えたが、おとがめなしだった」と証言する。市水環境課は「今年6月、メーカーが販売した資材の量と業者が市に報告した量が著しく異なることに気づいた。市側が黙認していたかどうかも含めて調査する」としている。
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下請け業者は「赤信号をみんなで渡ってしまった」と話し、業者間で偽装が横行していることを認めた。市が「環境保全」を掲げ、巨額の公費をつぎ込んで推進した下水汚泥のリサイクル。その裏では、長期間にわたって不正が見過ごされていた。
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下請け業者らの証言によると、不正の温床になったのは業者が土壌メーカーから資材を購入する時に発行される「計量伝票」だ。
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メーカーは業者に対し、どの資材を何トン販売したかトラック1台ごとに伝票に記載し、請求書代わりに手渡す。業者は伝票を市に提出し、指定された資材を使ったことを証明する仕組みだ。
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メーカーは伝票を実際に購入する下請け業者宛てに発行していた。しかし、市は業者に対し、あくまで発注先の元請け業者名での書類提出を求めた。このため、メーカーはあらかじめ下請け業者に白紙伝票を大量に渡し、業者自ら元請けの名前で伝票を作ることが習慣になっていた。
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この白紙伝票が市の指定通りに資材を使ったようにみせる偽装に悪用された。ある業者は「メーカーが伝票に記載する字体に似せるため、自社の印刷機を調整した」と明かす。
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一方、メーカー幹部は「一つの工事で何百枚も伝票があり、こちらで新たに元請け用の伝票を作るのは大変なので白紙を渡した。不正に使われるとは知らなかった」と釈明している。
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市の指定資材に使われる「下水汚泥溶融スラグ」は、主に大阪市此花区の施設「舞洲スラッジセンター」で作られる。市内の下水処理場から専用管で集められる汚泥を高温で溶かし、砂状に固める先進的な技術だ。
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市は以前、下水汚泥を焼却して大阪湾の最終処分場に埋め立てていたが、年間3万トンに上る廃棄物量が問題化。2004年に約730億円で同センターを建設した。建物はオーストリアの環境保護芸術家による奇抜なデザインで、外国人観光客の目も引いている。.
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市は05年度から、スラグを民間工事のコンクリート材料として販売したが、神奈川県藤沢市で生コン業者が日本工業規格(JIS)の基準に満たないスラグを使った問題をきっかけに、民間利用が減少。市は12年から公共工事での活用に切り替えたが、施工業者の間では「購入に手間がかかる」「手で触るとケガをする」などの理由で利用を避ける傾向が続いたという。
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大阪市では下水管約4900kmのうち耐用年数の50年を超えたものが3割に上り、順次改築を進めている。
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ある業者は「他の業者もやっていたので不正を続けてしまった。ただ、市が現場の実情を無視して強引にリサイクルを推し進めたのも問題ではないか」と指摘する。
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