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コミー長官・テレビで解任知る!
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トランプ米大統領は5月9日、ジェームズ・コミーFBI長官に宛てた解任通知のなかで、自身が捜査対象ではないことを3度にわたって知らせてくれたことについて、同長官に謝意を示した。
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米大統領選期間中におけるトランプ陣営とロシア政府との関わりを巡る、慎重を要するFBI捜査の初期段階で、コミー氏がそのような言質を大統領に与えていたとしたら、それは司法省の手続きにおいて不適切な開示行為だったと言える。
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米上院情報委員会は10日、来週16日に開催する非公開公聴会でコミー氏に証言するよう要請したことを明らかにした。コミー氏は正式な証言を行わない見通しだが、FBI前長官とホワイトハウスがこの要請にどう応じるか、非常に興味深い。とりわけトランプ大統領自身の言葉が選択肢を狭めてしまう可能性があるからだ。
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上院は、FBIによる「ロシア疑惑」捜査で、コミー氏がトランプ大統領に捜査対象ではないと断言したとする大統領の主張の根拠について知りたがっている、とオバマ前政権で次席法律顧問を務めたサバンナ法科大学院のアンディ・ライト教授は語る。
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「もしコミ―氏が、どんな形であれ、大統領に対して捜査についてのコメントを行っていたとしたら、それは適切だったと思わない」とゴンザレス氏は述べた。
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FBIを管轄する司法省は、大統領による干渉を回避するため、検察官や捜査官がホワイトハウスの当局者に開示できる情報を制限している。
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コミー氏がトランプ大統領との会話について、議会で証言するのをやめさせる倫理的拘束力は何もない、とライト教授やオバマ政権で司法長官代行の上級法律顧問を務めたエリック・コロンバス氏は語る。
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コミー氏は機密情報や捜査に関する詳細について、たとえ私人の立場であっても明らかにすることはできないが、大統領との会話は、弁護士と依頼人のあいだの秘匿特権で保護されるわけではないという。大統領はコミー氏の依頼人でもなく、FBI長官だったコミ
ー氏は、弁護士活動すらしていなかったからだ。
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捜査当局の情報筋によると、コミー氏はこの日、ロサンゼルスのFBI事務所でテレビのニュースから自身の解任を知ったという
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ジェームズ・コミー長官がトランプ米大統領に解任された問題で、コミー氏に近い関係者が、解任の理由として次の2点を挙げている。
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1.コミー長官がトランプ大統領に対して一切の個人的忠誠を約束しなかった
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2.2016年の大統領選挙でトランプ陣営がロシアと結託した可能性について、FBIが捜査に本腰を入れていた
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ローゼンスタイン副長官のメモではコミー長官について、昨年7月にクリントン氏に対する捜査を打ち切ると発表したのは、クリントン氏に対して不公正だったと指摘。コミー長官が記者会見を開き、「犯罪捜査で容疑が否定された人物について、名誉を傷つけるような情報を公開した」とする批判も展開していた。トランプ大統領はローゼンスタイン副長官のこの進言を受け、コミー長官を解任したというのが公式の説明だ。
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トランプ大統領の公の発言を振り返ると、コミー長官がクリントン氏に対して不公正だったというローゼンスタイン副長官の見解に、トランプ大統領が同意していなかったことが分かる。実際にはトランプ大統領は全く反対の理由、つまりコミー長官がクリントン氏を訴追しなかったという理由で、コミー長官を批判していた。
しかも、ローゼンスタイン副長官のメモは9日の日付だった。しかしホワイトハウスの複数の当局者がCNNに語ったところでは、大統領は就任直後からコミー長官の解任を検討していた。特に、9日に解任を決断するまでの1週間はその姿勢を強めていたという。コミー長官は3日の上院司法委員会で、クリントン氏の電子メール問題と、ロシアの選挙介入に関する捜査について証言していた。
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トランプ大統領はコミー長官が証言する前日の2日、ツイッターに次のように投稿していた。「FBIのコミー長官は、ヒラリー・クリントンによる悪行を野放しにしていたという点で、クリントンにとって最高だった」
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「トランプ/ロシアのストーリーは、民主党が選挙に負けた口実として使っている言い訳だった」
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さらに、コミー長官に解任を通告したトランプ大統領の通知には、クリントン氏の捜査についての言及は一切なかった一方で、ロシア問題の捜査には言及していた。これについてケリアン・コンウェイ大統領顧問は10日、「大統領がいつ解任し、いつ起用するかのタイミングについて疑問を挟むのは不適切」「大統領はやりたいと思った時にやる。FBIのコミー長官は、無視できない証拠を突き付けられて解任された」と強調した。
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ただ当然ながら、クリントン氏の捜査に対するコミー長官の対応がとりわけ無視しがたいものになったのが、トランプ大統領の就任から3カ月経ち、同長官を解任する理由が必要になったタイミングだった点には言及しなかった。
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もう1つの疑問は、セッションズ司法長官が果たした役割だ。セッションズ長官は、昨年の大統領選挙運動の間に駐米ロシア大使と会っていたことについて多くを語らず、トランプ陣営との関係を理由に、ロシア関係の捜査からは身を引いていた。
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ところがセッションズ長官は、ローゼンスタイン副長官からの進言を大統領に伝え、自らもコミー長官の解任を求めた。コミー長官の後任探しはセッションズ長官が主導するとされている。
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コミー前長官の後任人事で有力候補と目される複数の人物が11日までに浮かび上がった。
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新長官の就任には、米連邦上院(定数100)で51票の支持票が必要。次期長官について一部の共和党議員は法執行業務で深い経験が何よりも必要と主張。民主党議員はこの点に同意しながらも、新たな長官は利益相反の疑問を抱かれないためにトランプ氏とは政治的かつ経歴上で何の関係もない人物であるべきと強調している。
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このうちの1人は、元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニ氏。同市南部地区担当の連邦検事として働いた経験もあり最有力候補との見方もある。ただ、昨年の大統領選でトランプ氏陣営に深く関わり、党派色が強いだけに上院での承認獲得は極めて難しいとの受け止め方もある。
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ニュージャージー州のクリス・クリスティー知事の名前も出ている。昨年の大統領選から撤退後、トランプ氏支持に転じ、一時は政権移行チームの要職も務めた。今なおトランプ氏と親密な関係を築いているとされ、大統領の薬物乱用委員会の委員長に今年指名された。司法界での経験もあり、ニュージャージー州担当の連邦検事を務めたことがある。
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この他の候補者はニューヨーク市警のレイ・ケリー元本部長、運輸保安庁のジョン・ピストール元長官、FBIのアンドルー・マッケーブ副長官やトレイ・ガウディー下院議員(共和党、サウスカロライナ州選出)ら。
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ケリー元本部長はクリントン元大統領時代、FBI長官候補と報じられたことがあり、ピストール元長官はジョージ・W・ブッシュ元大統領時代にFBI副長官として仕えていた。連邦検事の経歴があるガウディー議員は私用メールアドレス問題でクリントン元国務長官を訴追しなかったコミー前長官を批判していた。
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