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毎月2260ユーロ(27万円)支給の是非は否決!
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スイスで国民一人当たりに毎月2260ユーロを支給するベーシックインカム策が早急に開始されるのか否決されるのか、6月5日に支給の是非を問う国民投票が行なわれた。
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独ラジオ「ドイチェ・ヴェレ」はこの支給について「スイス全国民に尊厳ある生活と社会生活への参加を保障するはずのもの」と報じている。
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発案者の話では支給対象には成人だけでなく児童も含まれ、これによってスイス国民が本当にやりたいことを実現させるのが目的。追加的な収入を得る可能性が目の前に開けているにもかかわらず、スイス国民の多くはこの案に反対し、支給開始後、国民の大半が働くのを止めてしまうのではと懸念していた。反対者らは結果的に国にとって大きな足かせとなり、経済の不安定化を招くとの考えを示している。
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スイスの国民投票で5日、国民全員に無条件に必要最低限のお金を支給する「最低生活保障」であるベーシック・インカムの導入案が76.9%の反対で否決された。しかし、このイニシアチブ(国民発議)を提起した側は、「今後さらに大きく取り上げられるテーマだ」と楽観的に結果を見ている。日本を含み世界から注目されたベーシック・インカムの導入。
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政府を含む反対派は、同程度の稼ぎがあった人が今後仕事を続ける意欲を失い、労働者が減少すると指摘。企業の国外移転が促され国の税収が減り、平均所得の低い国から多くの外国人がスイスに流入すると危惧した。
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ベーシック・インカムのお陰で、(最低限の保障があるがゆえに、失業手当や子どもの教育手当てなど、多岐にわたる手当てが必要でなくなり)社会保障制度がシンプルになるという賛成派の主張に対して反対派は、財源確保のためには大幅な歳出カットや増税が必要のほか、社会保障にはベーシック・インカムではまかないきれないサービスや支援が不可欠なため、ベーシック・インカムが既存の社会保障制度に取って代わることはできないと主張した。
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ル・タン紙がインタビューした、ベーシック・インカム導入提案グループの仏語圏代表、ラルフ・クンディグ氏も同様に、「23%もの国民が賛成してくれた。名誉なことだった」と話した。「緑の党からしか賛成がなかったので、敗北ははじめから分かっていた。だが、ベーシック・インカムについての議論を巻き起こすことが、今こそ重要だと思う」
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フランスのフィガロ紙も、2012年の国民投票を引き合いに出し「労働を崇拝するスイス人にとって、無償でお金を受け取ることは受け入れがたいものなのだ」とコメントした。
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左派の仏紙リベラシオンは、ベーシック・インカム導入案が否決されたことに驚かないとして、「政府もほぼすべての政党も、このユートピア的でお金のかかる案に反対した」と書き、仏紙ル・モンドも「スイス政府は昨年末に、社会保障制度においても移民労働者の削減対策においても、このベーシック・インカム導入は危険だと表明していた」とした。
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日本のメディアも、ほぼ全社がベーシック・インカム導入案を取り上げ報道した。今回スイスが注目された理由は、「フィンランドが(ベーシック・インカムの)効果を検証するため失業者など一部の国民を対象に来年から試験的に導入するほか、オランダでも自治体レベルで試験的に始まるなど、ヨーロッパを中心に導入に向けた動きがある(NHK)」ためであり、「資本主義国家では本格的に導入した事例がないこともあり、スイスの投票結果が注目されていた(日経)」からだ。
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また日経は「直接民主制が浸透したスイスでは10万人の署名が集まれば、国民からの提案を投票に諮ることが決められている。ベーシック・インカムの提案は、制度の実現よりも問題提起を目指した面もある。所得を巡る案件では2014年に時給22スイスフランの最低賃金を設ける提案を否決したことがある」と書き、スイスでは、社会制度を根本的に見直すこうした案件が国民から提案され、国民がそれを決めるという直接民主制にも触れている。
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