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「国の恥だ」「花に罪はない」と賛否!
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桜の季節がめぐってきた。花見シーズンは、昨年最も多くの訪日客がやってきた中国からもたくさんのファンを運んでくる。
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中国有数の花見の名所である湖北省武漢市の「武漢大の桜」をめぐり、論争が起きている。地元企業がPRしようと、東京で屋外広告を掲示。この桜は日中戦争当時、旧日本軍が持ち込んだことから、「宣伝は国の恥だ」「花に罪はない」と賛否の声が出た。
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広告は3月中旬、武漢市のインターネット金融企業が東京・渋谷の商業ビルの大型スクリーンに提示。中国語で「世界の桜のふるさと 武漢大に花見にお越しください」と記していた。
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武漢大の敷地内には多くの桜の木があり、毎年春に最高1日20万人の花見客が訪れ、入場制限するほど。中国メディアによると、企業トップは「武漢大の桜は武漢の特色の一つ。自社の宣伝も兼ねた」と話した。
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これにかみついたのが武漢大の歴史専門家。地元ニュースサイト・荊楚網への投稿で、桜は中国のヒマラヤ山脈から各地に伝わったとされるが、現在の桜の品種を生物学的にみると起源地は日本だと指摘。「武漢を『桜のふるさと』と日本で宣伝することは国際的な笑い話になる」とくぎを刺した。
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さらに武漢大の桜は、日中国交正常化後に日本から贈られた一部を除き、占領中の旧日本軍が1939年に栽培を始めたものだと指摘。「いくら美しくても、侵略者が強制的に押し付けたもの。商人は亡国の恨みを知らない」と批判した。
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これに対し、浙江省の地元紙、銭江晩報は22日、「歴史を忘れないことは、花を恨むことではない。ただ美しさに魅了されることに何の問題があるのか」と反論。戦後も桜の木を切らずに残した判断を評価した。
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ネット上では「桜のそばに日本軍国主義の罪であると説明文を付けるべきだ」という声の一方、「侵略者に罪あり、桜の花に責任なし」「武漢大の専門家よ、あなたの家には日本製品はないのか。もっと世界に目を広げるべきだ」といった書き込みもあった。
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桜の名所、東京・上野公園。桜のトンネルの下は多くの花見客でごった返し、あちこちで中国語が飛び交う。上海から4人の友人と訪れた女性会社員、趙菁芳さん(30)は3度目の日本旅行。「今回の目的は桜。こんなに桜だけが咲いている場所は初めて。感動した」
。桜に合わせて買ったピンク色のコートを着て、記念撮影していた。
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中国の多くの旅行会社は、サイトで「桜 東京、箱根、鎌倉、大阪5泊6日旅行」「九州の花見の名所ツアー」などとPRし、色鮮やかな各地の桜の写真をふんだんに掲載している。
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中国のオンライン旅行サービス大手、携程旅行網(シートリップ)の担当者は「以前と違い、サイトや微信(中国版LINE)などできめ細かい宣伝ができる」と語る。桜前線を見て、どの時期にどこで満開なのかを考えて行き先を決める旅行客も多く、開花予想をもとに目的地を案内。「中国人の国外旅行はその土地の生活や文化に溶け込む形にシフトしている。日本の花見は人気だ」
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日本政府観光局によると、昨年の訪日外国人客は約1973万人で過去最高。最多の中国からは約499万人で、4月は前年同月の2倍超の約40万人だった。
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中国にも桜の名所はあるが、「花見の本場は日本」というイメージが定着している。雑誌やネットで旅行情報を発信する「Witrip」の陶媛編集長(39)は「日本の花見は土地ごとに雰囲気が異なり、中国人を飽きさせない」と話す。
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