ファンド・エフィッシモ:川崎汽船の筆頭株主に!

.
保有比率・24.99%!
.
昨秋来株安で買う!
.
.
シンガポールのヘッジファンド、エフィッシモ キャピタルマネージメントが海運大手一角の川崎汽船株を2015年9月から徐々に買い増している。物言う株主として知られた旧「村上ファンド」の系譜を引く投資会社の保有比率はおよそ25%に達し、既に実質筆頭株主の座にある。
.
エフィッシモが3月8日に関東財務局に提出した大量保有報告書によると、2月29日に市場内で川崎船株を420万1000株取得、保有比率は24.55%から24.99%に増えた。保有目的は「純投資」と記されている。エフィッシモは昨年9月4日の報告書で初めて川崎船株の大量保有者として登場し、保有比率は6.18%だった。
.
川崎船の9月末の四半期報告書では、大株主トップは5.4%の日本マスタートラスト信託銀行。同時に、実質所有株式数の確認ができないとの注意書きとともに、大量保有報告書に基づくエフィッシモの9.45%保有の事実も併記された。直近報告書でも1月18日から2月29日までの21営業日で買いを入れ、10日時点の保有時価総額は488億円。保有株の一部は、証券会社へ貸し出している。金融商品取引法では、市場内外の取引を組み合わせた一連の取得行為で株券所有割合が3分の1超となる場合、義務的に株式公開買い付け(TOB)が必要と定めている。
.
エフィッシモはブルームバーグの取材に対し、個別の投資先や投資戦略についてはコメントを差し控えている、と電子メールで回答した。
.
中国など新興国経済の減速に加え、2008年のリーマン・ショック以降は運賃市況が長期低迷し、海運業界は荒波の中の航海が続く。昨年9月には長期にわたる受注減少や市況悪化、過年度の設備投資負担が直撃し、外航不定期船が主力の東証1部上場企業だった第一中央汽船が1764億円の負債(関連2社合計)を抱え倒産した。大手の経営環境も厳しく、川崎船も1月に16年3月期の営業利益計画を240億円から前期比77%減の110億円に減額、赤字転落した12年3月期以来の低水準になる見通しだ。
.
岩井コスモ証券の斎藤和嘉アナリストは、海運業界について「中長期的には今が大底という見方は可能だ。最悪の需給環境にあり、改善の兆しは見える」と言う。SMBC日興証券の長谷川浩史アナリストは、コンテナとドライバルクの主要2市況の見通しは依然厳しいものの、ドライバルクは16年前半ー年央にボトムを付けると予想。さらに、「再編やリストラなどのイベントが待たれる」と指摘した。投資判断を「中立」とする川崎船に関しては、自己資本比率が18年3月期末予想で36.8%と、国内大手3社の中では相対的に高い水準と言及した。
.
エフィッシモは、物言う株主として知られた村上世彰氏が率いた旧「村上ファンド」の元メンバーである高坂卓志代表らが創設したシンガポールに拠点を置くヘッジファンド。

川崎船以外にも第一生命保険、リコー、ヤマダ電機を保有し、1月にはヤマダ電の実質筆頭株主にもなり、リコーの保有率も大株主の2番手に当たる。SMBC日興証ではヤマダ電の大量保有について、初めての報告書提出は14年10月だったと指摘。連結配当性向の目標を30%に設定した15年の株主還元強化や大規模な店舗閉鎖、構造改革への取り組みはエフィッシモによる株式取得も影響した可能性がある、と推察している。
.