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自前主義では絶対無理!
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自民党の半導体戦略推進議員連盟で会長を務める甘利明税制調査会長は、半導体産業強化のため、日本企業は海外勢と共同で国内に開発製造拠点を作るべきだとの考えを示した。具体的な提携候補として、世界最大の半導体受託生産企業である台湾積体電路製造(TSMC)を挙げた。
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半導体産業強化のため、政府による兆円単位の支援も必要とみている。TSMCは経済産業省などが行う先端半導体製造技術の開発助成事業に選定されている。
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甘利氏は「自前主義では絶対無理だ」とした上で、半導体製造装置や素材といった日本の強みを海外勢の技術と合わせて拠点をつくることが大事だと指摘。最先端の半導体を生産できるTSMCと「どういう形でコラボレーションしていくかしっかり考えないといけない」と語った。
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甘利氏は、国内に半導体開発製造拠点を作るには「世界に伍した予算規模のバックアップ体制、基金が必要だ」と話す。現在の日本の支援額は数千億円規模だが、「兆円単位」に増額する必要があるという。
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同議連は安倍晋三前首相と麻生太郎財務相が最高顧問に就任し、安倍氏は設立総会で、半導体産業の支援は「異次元のものをやらなければならない」と強調した。菅義偉首相も記者会見で「与党の議論も踏まえつつ、政府の成長戦略の重要な一つとして考えていきたい」との見解を示した。
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4日には経産省が、半導体の開発や生産体制の強化に向けた新戦略を発表。外国企業との合弁なども活用しながら国内事業基盤としての定着を図り、サプライチェーンでも日本が世界に貢献できる体制構築を目指す。
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経産省情報産業課の西川和見課長は、日本には半導体の既存工場をはじめ、水や電力などのインフラが整っており、多くの技術者もいると指摘。政府としても企業が投資しやすい環境の整備など支援策を講じる方針で、海外勢の誘致実現には「一定の勝算がある」と述べた。
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茨城県つくば市に、世界最大のファウンドリーである台湾TSMCが半導体生産の「後工程」の研究開発拠点を新設する。
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ポイントは、TSMCが、ファウンドリーに加えて後工程も注力し始めたこと、そのために半導体の部材を中心にわが国企業の生産技術をより重視し始めたことだ。わが国の半導体関連産業にとって、その意味は大きい。
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世界の半導体産業では、ICチップの小型化や高性能化のために、集積回路の線幅を小さくする微細化など「前工程」の技術に加え、後工程の重要性が増している。後工程では、3Dパッケージ(半導体メモリやロジックを重ね、ケースに封入する)など前工程とは異なる技術が必要だ。
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両工程で、わが国には世界的シェアを持つ半導体部材や製造装置メーカーが多い。拠点開設によってTSMCは本邦企業との関係を強化し、半導体生産技術というコア・コンピタンス向上につなげたいのだろう。それを確認するために、どのようにTSMCが成長してきたのか、軌跡をたどりたい。
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1987年設立のTSMCは、ファウンドリー事業を強化し、米国企業などが設計・開発した半導体の生産を受託して成長した。その結果、世界の半導体産業は(1)設計・開発、(2)ファウンドリーでの回路形成(以上が前工程)、(3)集積回路の切り出し・封入・検査など(後工程)の分業に移行した。
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分業のメリットは事業運営の効率性向上だ。アップルなどは鮮烈な顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)を目指してチップ開発に集中する。機能実現のためにTSMCは微細化を進め、今日の最先端である5ナノメートルの回路線幅を実現し、次世代の2ナノメートル技術の確立にも取り組んでいる。後工程では台湾などの企業が集積回路をシリコンウエハーから切り出し、ケースへの封入などを行う。
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他方、(1)から(3)に加えて、販売をも自社完結した米インテルは、分業による微細化スピードの向上などに対応することが難しくなった。世界の半導体産業では今、リーダーの地位がインテルからTSMCに急速にシフトしているようにみえる。
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後工程では、研磨剤やメモリやロジックを載せる基盤、封止用エポキシ樹脂など極めて微細かつ高純度の材料が必要だ。わが国には、そうした高付加価値の半導体部材を供給するメーカーが多く集積する。TSMCとの協働事業にわが国の半導体部材メーカーが多く参画するのは、同社が本邦企業の生産する高付加価値部材をより必要とし始めたことを示唆する。研磨や検査などの装置にも同じことがいえる。
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