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高い安全性・脱炭素化の切り札に!
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エネルギー自給率の向上に寄与!
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小型原子炉の開発競争が熱を帯びている。小型原子炉は既存の原子力発電と同様に温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を排出しない上、安全性や経済性の面でも優れているとされる。太陽光発電などの再生可能エネルギーだけでは温室効果ガスの排出削減に限界があるとされる中、「脱炭素化」の切り札になると期待されている。
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小型原子炉は、小型モジュール炉(SMR=スモール・モジュラー・リアクター)とも呼ばれる。既存の原発で主流の軽水炉は大型化が進み、1基当たりの出力が100万KW以上が主流なのに対し、数万~数十万KWと小さいが、原子炉の容積に対する表面積が大きく、原子炉を冷却しやすいのが特徴だ。
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実用化に向けて、日本を含む各国の企業が開発に取り組んでいる。日立製作所は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社「日立GEニュークリア・エナジー」(茨城県日立市)で出力30万KWの小型原子炉を開発中。北米で2030年ごろの実用化を目指している。「異常時でも外部電源と運転操作を必要とせずに炉心を冷却できる」(日立)のが特徴で、原子炉を地中に埋めるため、より冷やしやすく、テロからの防護にも優れているという。
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東芝は、冷却材に液体ナトリウムを使う高速炉など2種類を開発。三菱重工業が開発中の小型原子炉は、蒸気発生器や加圧器といった主要機器を原子炉容器内に統合することで小型化を可能にする。
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小型原子炉の開発は海外でも進んでいる。英ロールス・ロイスが加圧水型軽水炉(PWR)の技術を転用しつつ、IT活用で運転などの効率化を図った小型原子炉を開発している。米国ではビル・ゲイツ氏が会長を務めるテラパワーなど10社程度のベンチャーが開発中だ。中でも07年創業のニュースケール・パワーは、20年代末の商業運転を目指し米国各地で建設計画を進めており、20年8月には初めて設計承認を取得している。
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ニュースケールの計画にはプラント大手の日揮ホールディングス(HD)が参画している。ニュースケールに4000万ドル(約44億円)を出資した上で、まず米アイダホ州での発電所建設に参加し、同業の米フルアとともに建設管理を担う。
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IHIは4月27日、小型モジュール原子炉開発の米ニュースケール・パワー(オレゴン州)に出資し、小型原子炉事業に参画すると発表した。出資額は当面2000万ドル(約21億8000万円)で、今後納入機器などの条件が整えば2000万ドルを追加出資する。
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IHIは、原子炉圧力容器の開発や主要機器の保守点検などを手掛ける。国内原発の新設が見通せない中、技術力の維持を図るとともに、出力を抑えることで安全性を高めた小型原子炉の実現に協力する。
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IHIは出資に加え、ニュースケールの小型モジュール原子炉(SMR)の商業プラント向けに格納容器の供給も見込んでいる。同社のSMRをめぐっては、米原子力規制委員会(NRC)がSMRとして初めて型式認定の最終審査を完了した。電源構成が脱炭素化により変わることが予想され、再生可能エネルギーの増加とともに、電力の安定供給を支える調整電源として原子力の必要性が高まる可能性がある。
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SMRは直径約4.5×高さ約23mで、1基当たりの出力が7万7000KW。出力を小さくすることで冷却しやすくする。立地条件やエネルギー需要に応じて最大12基の原子炉でプラントを構成する。
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ニュースケール・パワー社(オレゴン州)に日揮ホールディングスとともに出資すると発表。ニュースケールのSMRは既に商業化に向けた検討が進められており、IHIは主要機器の供給やエンジニアリングを通して事業の中核を担う計画としている。
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