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   2019.11.12.
   中国のEV普及:日本電産がEVに1兆円投資!
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導入された中国の無理難題なNEV規制!
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日本電産がEVに1兆円投資!
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 中国政府は2018年に「年間1万台以上を生産・販売する自動車メーカーまたは輸入業者は、一定台数のNEV(ニュー・エナジー・ビークルの略。中国では新能源車と呼ぶ)を販売しなければならない」という規制を導入した。
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 NEVには3タイプある。車載バッテリーに充電して走るBEV(バッテリー電気自動車)。外部充電によってBEV同様に走り、電池がなくなったらエンジンで走りながら充電もできるPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)。水素で走るFCEV(燃料電池電気自動車)。今のところこの3タイプだけだ。つまり電動車を普及させることがNEV規制のねらいである。中国ではNEVカーのナンバープレートは緑色。
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 メーカーの全販売台数にモード燃費を掛けた数値が20km/Lと普通車だけでは達成できない
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 自動車メーカーや輸入元はどれくらいの数のNEVを売らなければならないのだろうか。導入した2018年は「様子見」の年、2019年は全生産(輸入)台数の10%をNEVにしなければならない。10%に届かないとペナルティーが課せられる。この目標は2020年には12%、2021年は14%の予定。
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 もうひとつ、中国にはCAFC規制(コーポレート・アベレージ・フューエル・コンサンプション:企業別平均燃費の意味)がある。日米欧ではCAFE(最後のEはエフィシェンシー:効率)と呼ばれる。車種ごとのモード燃費に販売台数を掛けた総合計の燃費が燃料5L/100km(日本式に表示すると20km/L)以上でないと、燃費の悪いクルマから順に製造販売許可が取り消しになる。
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 NEV規制で電動車両の販売台数を「これ以上にしなさい」と定め、CAFC規制でメーカーごとの平均燃費を規制する。中国は二重規制を敷いている。しかもNEV規制とCAFC規制は連動している。
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 中国政府は、通常のガソリン/ディーゼルエンジン車を「伝統的車両」と呼び、これを1台販売するごとに「マイナス1」のクレジットを課す。1万台を販売すれば「マイナス1万」のクレジットが貯まる。一方、NEVを販売するとプラス1~5のクレジットが与えられる。伝統的車両を売って貯まったマイナスをNEVで取り返し、最終的にクレジットが「ゼロ」になればペナルティは課せられない施策だ。
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 NEV規制は少しずつ厳しくなっている。NEV販売比率目標は現在の10%から2年後には14%になる。BEVを販売すると最大5クレジットだったものが2020年には最大3.4に引き下げられる予定であるほか、2020年末でNEVへの補助金が廃止される。中国の自動車業界では、国営自動車メーカーも「NEV規制は無理難題」と言っているほどだ。
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 中国政府はここまで電動車両の普及を急ぐのか。最大の理由は「自動車強国」になることだろう。エンジン車ではどう頑張っても日米欧には追い付けないが、電動車なら可能性がある。外資系自動車関連企業が中国のNEV規制に対応するため、中国に部品や車両の工場を建てやすいように規制緩和した。フォルクスワーゲンは電動車専用工場を建て、テスラは同社初の中国工場を稼働させるなどしている。
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 同時に中国政府は、電動車に欠かせないリチウムイオン2次電池の生産量と価格相場を牛耳るため、電池への投資を促し大手企業を育てた。トヨタも契約を結んだ中国の巨大電池メーカーCATLやBYDは世界的大手に成長。BYDはダイムラーと共同で電気自動車DENZAの市販モデルを出してもおり、さらにBEVスタートアップ(新興)企業の設立を促した。世界的にも有名になったNIOやBYTONがそれだ。企業が乱立すると効率が悪い。そこで中国政府は、2次電池とBEVの企業淘汰を画策し、有力大企業だけを残すことにしたのだろう。2019年10月の時点では、この2次電池とBEVスタートアップ企業の業界再編が進められている状況だ。
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 一般中国市民はNEVを買っていない。同クラスのガソリン車より値段が高いため。NEV販売台数の半分は自動車業界の中で、会社としての使用車を先立たせる方向で消費されているようだ。2018年のNEV販売台数は125万台だったが、その大半は自動車メーカー、部品目メーカー、販売会社、官公庁が購入したことだろう。中国国内の自動車全販売台数2808万台のうちの125万台、わずか4.45%だ。
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 中国経済の失速で業績を下方修正した日本電産が、怯むことなくEV(電気自動車)向けに1兆円の投資を実施する方針を明らかにした。オーナー経営者ならではの決断であり、一般的なサラリーマン社長には到底、真似のできない芸当だが、中国市場とEVに賭ける大胆な戦略の背景には何があるのだろうか。
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 日本電産はハードディスクドライブ(HDD)用モーターで急成長したベンチャー企業だが、積極果敢なM&A(合併・買収)であっという間に業容を拡大させ、今や日本を代表する企業となった。
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同社の急成長は、創業者で現在もCEO(最高経営責任者)を務める永守重信会長の卓越した能力によって支えられてきた。同氏の才能はM&Aと意思決定の大胆さに象徴的に示されている。
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これまで永守氏は60以上の企業を買収してきたが、ほとんどの事業を軌道に乗せている。
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 永守氏がEVシフトに関する明確なビジョンを持っていることは、情熱を注ぐ教育分野における活動からも見て取れる。
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 同氏は、かねてから教育の重要性を主張しており、私財100億円を投じて旧京都学園大学に対する支援を行っている。2018年には同学園の理事長に就任し、名称を京都先端科学大学へと変更。本格的な大学改革に乗り出した。
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 永守氏は生まれ変わった同大学について、「この大学はノーベル賞を受賞する人を育成する大学ではない」と説明しており、実学を重視する姿勢を鮮明にしている。
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 英会話学校ベルリッツと提携し、徹底的な英語の基礎教育を行うとともに、新設された工学部では講義が英語で実施されるなど、即戦力養成というスタンスはカリキュラムからもハッキリしている。
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 国際的な金融資本はこのところ環境投資へのシフトを急ピッチで進めている。日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、地球環境を重視する「グリーンボンド(環境債)」への投資を表明するなど、その動きは、国内の金融市場にも及んでいる。
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