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   2019.10.26.
   国や自治体の指名停止措置:行政処分か否か!
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行政訴訟裁判にはどのようなものがあるか!
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 日本全国の自治体や地方団体では、いろいろの行政処分が行われている。そもそも行政処分とは何であるのか。行政処分の概念としては、「処分」を「行政庁の処分その他公権力の行使」と定義し、行 政不服審査法も不服申立ての対象として同様の表現をし、行政事件訴訟法も取消訴訟の対象として同様の表現をしている。
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 「行政庁の処分その 他公権力の行使」に該当するものは、各法律では、許可、免許、保護決定、除去命 令など様々な用語が使われるが、これらを総称して「行政処分」あるいは「行政行 為」と呼んでいる。
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 最高裁昭和39.10.29判決(民集18-8-1809)ゴミ焼却場設置決定事件は、行政庁の処分を次のよ うに定義している。
公権力の主体たる国または公共団体が行う 行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定 することが法律上認められているものをいう。
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 行政処分は、原則として、次のような性質を備えるものである。
・行政団体または行政機関の行為である。
・法律・条例に根拠規定があること。
・法的効果を発生させる行為であること。行政処分は、権利・義務関係を形成また は確定する効果を発生させる行政庁の判断の表示である。
他方、法的効果の生じ ない行為や事実行為は原則として行政処分ではない。
・個別具体的な法関係(権利義務関係)を形成する行為であること。
・対外的効果を有する行為であること。訓令・通達あるいは職務命令のような行政組織内部の行為と異なる。
・行政庁の一方的な意思表示で法効果が生じるものであること(一方性
・単独性)。 行政処分は、行政庁の行政庁の判断(決定)とその外部への表示(相手方への通知 や交付など)によって法律効果が生じるもので、行政処分には申請を前提とするものや相手方の同意を 要するものもあるが、行政庁の意思表示が行政処分である。
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行政庁とは、行政処分を行う権限を持つ団体又は機関をいう。
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行政機関に行政処分権限が与えられることが多く
・国では、主務大臣、委員会(公正取引委員会など)・人事院、税務署長など
・自治体では、知事、市長、委員会(選挙管理委員会・公安委員会・教育委員会など)、 警察署長、福祉事務所長、建築主事などがある。
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行政団体(市町村など)が行政庁となることもある。
特別行政団体(独立行政法人・特殊法人・土地改良組合や健康保険組合等の公共組 合など)が行政庁となることも少なくない。
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行政処分の権力性
行政庁の判断の表示が行政処分である。
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・行政処分によって法律上の効果が発生する。
・特に不利益処分には、相手方国民の意思を無視して、一方的に行なわれるものが多い。
・利益的処分も、申請に対する行政庁の諾否の判断の表示が行政処分であり、行政処分 によって法効果が発生する。
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法律又は条例の根拠が必要である。 ・行政処分は行政庁が勝手に行えるものではなく、その要件・内容・手続が法律や条例 によって決められている。 ・その際、判断余地(裁量)の殆どないもの、狭いもの、広いものがある。
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①行政処分は、違法であっても正式に取り消されるまでは有効なものとして通用する。
・正式に取り消すことのできる機関は、処分行政庁、上級行政庁、不服審査行政庁、 取消訴訟の裁判所である。
・不服審査や取消訴訟を提起しても、処分は有効である(執行不停止原則)。
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②国民が行政処分の効力を否定しようとすれば、原則として行政不服審査(不服申立 て)か取消訴訟を提起しなければならない。
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③行政処分を求めたり、差止めようとする場合も、抗告訴訟(義務付け訴訟・差止め 訴訟)で争わなければならない。 ※通常の民事訴訟や当事者訴訟で、裁判所が自ら、処分を行ったり、処分を義 務付けたり、処分を差し止めることはできない。 ※抗告訴訟であっても、裁判所は行政庁に代わって自ら行政処分を行うことは できない。行政処分を行うのはあくまでも行政庁であって、裁判所は行政処 分を行うことを命ずる(義務付ける)にとどまる。このことは、取消訴訟と の違いである(取消訴訟の場合は、裁判所自らが取り消すのであって、行政 庁に取消を命じるのではない)
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 行政処分の効力は、行政法学説は、行政処分の公定 力や不可争力は行政処分に本来的に認められるものではなく、取消訴訟でしか争え ない(民事訴訟や当事者訴訟ではその効力を否定できない)
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 法解釈があり、裁判判例があり、判例を引用し判決を下し、その判例が全てに適用できるのかはこの場で判断できるものではなく、あくまでも裁判判例として引用されていることであり、個々の裁判で新解釈も出るだろうし、最高裁でも一部認める判例もあるようだ。
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指名停止措置は行政処分か」という裁判は下記の「平成12年の千葉地裁と東京高裁の判決」、もう一つは「平成23年、24年の東京地裁・東京高裁の判決」である。
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内藤建築事務所が愛媛県に対し「12ヶ月の指名停止処分」に対し行政不服審査会に申請したが、門前払いを受けた。このときに、県側が東京高裁の判決を引用したようだ。判例集を探し、下記2件の裁判判決が見つかった。参考までに、掲載する。
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事件番号 平成11(行ウ)129
事件名 競争入札参加資格の決定処分取消請求事件

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裁判年月日 平成12年3月22日
裁判所名 東京地方裁判所
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事件番号 平成12(行コ)162
事件名 競争入札参加資格の決定処分取消請求事件(原審は上記 平成11(行ウ)129)

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裁判年月日 平成12年9月27日
裁判所名 東京江東裁判所
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事件番号 平成23(行ウ)1
事件名 入札参加禁止等処分取消請求事件
裁判年月日 平成23年9月9日
裁判所 千葉地方裁判所

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判示事項
 千葉県知事がした一般競争入札及び指名競争入札各参加禁止、同各入札の参加資格取消し並びに指名停止各措置の取消しを求める訴えが、同各措置は行政処分に当たらないとして、却下された事例
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裁判要旨
県知事がした一般競争入札及び指名競争入札各参加禁止、同各入札の参加資格取消し並びに指名停止各措置の取消しを求める訴えにつき、前記各措置のうち、前記一般入札及び競争入札各参加禁止及び同各入札の参加資格取消しの各措置は、地方公共団体との私法上の契約の相手方の選別に参加させるべきではないと判断した者を排除するものであって契約の相手方の選別を行うための準備的行為に当たり、前記指名停止の措置は、一定期間、指名競争入札の参加者として指名しないものとするにすぎず、地方公共団体との私法上の契約を締結するための準備的行為に当たり、その行為により直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものであるとはいえないため、行政処分に当たらないとして、前記訴えを却下した事例
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 上記事件で裁判所の判断は「行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為」には当たらない。としている。
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前記却下を不服とし、東京高裁へ上告した。
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事件番号 平成23(行コ)345
事件名 入札参加禁止等処分取消請求控訴事件
裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成24年2月28日

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事案の概要
本件は,控訴人が千葉県公安委員会によって警備業務に係る営業の停止処分になったこと等を理由として、処分行政庁(千葉県知事)が、控訴人に対し、
① 物品の購入又は製造、印刷の請負その他の契約(建設工事、建設工事に係る製造の請負、工事用材料の買入れ及び測量、調査、設計等の業務委託に係る契約を除く。)に関し、平成22年12月17日から平成24年6月16日までの1年6か月間、一般競争入札及び指名競争入札への参加の禁止(本件入札参加禁止)、
② 同各入札の参加資格の取消し(本件入札参加資格取消し)、
③ 平成22年12月17日から平成23年6月16日までの6か月間、建設工事請負契約等についての指名停止(本件指名停止)をそれぞれ行った。
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控訴人が①から③まで(本件入札参加禁止等)の措置が、いずれも行政処分であるとして、これら処分の取消しを求めた事案である。
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1.県知事の事業者に対する物品の購入等の契約に関する一般競争入札及び指名競争入札への参加禁止並びに前記各入札の参加資格の取り消しの各措置につき、競争入札の参加資格を定め、普通地方公共団体として、契約の適正な履行をすることが、不可能と思われる者を排除することは、契約の相手方の選別を価格の競争により行うための準備的行為といえ、前記の各措置も同様に前記準備的行為にあたるといえること、競争入札サンアk資格については、地方自治法施行令167条の4等により制限が設けられている上、同施行令167条の5において、競争入札の参加資格を裁量的に制限できるとしており、事業者に競争入札の参加資格する法律上の権利及び利益があるとは言えないことからすると、前記位の各措置は、単に、県知事が私法上の契約の相手方として、不適格であると判断して、事前にその旨を表明したものに過ぎず、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものであるとは言えないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。
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2.県が発注する委託業務の競争入札の参加資格を有していること、一般競争入札参加者及び指名競争入札参加資格者の入札参加資格を有していること、並びに指名競争入札における指名業者の地位にあることの各確認を求める訴えにつき、同訴えは、競争入札への参加禁止等の措置の取り消しを求める訴えを追加的に変更した公法上の当事者訴訟としての確認の訴えであるところ、同訴えにより確認を求める法律関係は、いずれも私法上の契約についての準備的行為に関する資格や地位であって、行政事件訴訟法4条にいう「公法上の法律関係に関する」ものということは出来ず、しかも、前記資格等の確認請求は、公法上の法律関係に関するものとしてはおよそ請求できないものであるから、訴えは不適法であるとして、前記訴えをいずれも却下した事例。
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