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   2019.10.17.
   読者投稿:《コンクリ-ト圧送業界の近況》その1!
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 久方ぶりに圧送ポンプの業界の方から投稿があった。本文は7ページあり、本日より3回ほどに分けて掲載いたします。投稿された文書には一切手を付けずそのまま掲載します。
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 《コンクリ-ト圧送業界の近況》としたタイトルなのでそのまま使用する。
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《1》 圧送業界 低迷からの脱却 
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 圧送とは、建設現場に搬入された生コンクリートを、コンクリートポンプ車を用いて型枠の中に流し込む仕事です。
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約20~30年前、建設業界の重層下請構造下において過当競争によるダンピングが横行していた圧送業界は、危険過酷な重労働と低賃金の環境下におかれていました。
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その環境を打破するために、経営者たちは共同受注事業に取り組みました。しかし、得意先との取引関係を優先してしまい、機械費用や労務費用や安全点検に伴う費用を度外視したダンピングの悪循環を断ち切ることができず、廃業や破倒産に追い込まれた経営者も多くいました。
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その一方、同時期の生コン業界では、連帯労組T委員長がその指導力と労働政策運動も相俟って、同一労働同一賃金をスローガンに経営者が協同組合に結集し、ミキサー運転手は下請作業員として搾取されていた時代から、年収数百万円~1千万円・年間休日125日の高収入と好待遇を勝ち取り、経営者と労働者双方が大きく潤っていました。
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そのような周辺環境もあって、圧送の中小零細企業経営者は近畿生コンクリート圧送協同組合(以下、近圧協)を結成して、従業員への資格取得の推奨や社会保険加入の徹底・安全委員会設立に伴う労務管理(安全会議徹底等)や車両管理(特定自主検査徹底等)の法令遵守に取り組みました。「安全技術の向上」「従業員の処遇(社会保険加入徹底化等)」等のコンプライアンスにお金をかけることで、現場の安全が従業員の生活の安定に貢献する思いから、値引きダンピングを防止し、適正な料金を得ることができるよう取り組みはじめたのです。日給制や出来高払いや請負制の非正規雇用が主流であった業界に、月給制や時間外手当や退職金制度導入等の正規雇用者として従業員を育てる体制が整いました。
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一方で圧送経営者が自社従業員を労働組合に加盟させ、連帯労組の指導を受けて近圧協組員各社に次々と近畿コンクリート圧送労働組合(以下、近圧労組)の分会ができました。労働組合員は、自らの生活の安定と雇用の確保のために、コンプライアンスを徹底している近圧協に加盟する圧送業者を使ってもらうように行政や関係先に申し出をする活動をしました。
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この労働組合運動の窓口として、業界のビジョンを協議し、労働条件を交渉するために設立されたのが近畿圧送経営者会(以下、近圧経営者会)です。
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取り組みとしては、圧送勉強会の開催(行政主催)、長年無事故で安全作業に努めた従業員を表彰し安全に対する意識を高める安全大会の定例化、閉塞事故の原因解明を目的にフィールド実験と圧送技術研究会創設と定例化、全協組員月次安全衛生会議の定例化、全ブーム・ポンプ車の超音波探傷検査・特定自主検査の徹底(近圧協負担)、ヘルメット・安全帯、空調服等の配布徹底(近圧協負担)、全圧連統一安全技術講習会全員参加をはじめとした各資格取得と更新、現場に従事する従業員への安全教育に有効な教育DVDの作成(動画による独自教材)と普及、現場作業員の感電事故を救急処置で命を救ったことを契機に救命講習全員受講、団体保険(請負賠償保険・傷害総合保険・労災総合保険)への加入促進による生コンクリート固形化(持ち帰り事故)賠償対応等がスタートしました。
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低賃金劣悪な労働環境であった圧送業界において、このような経営者と現場従業員の並々ならぬ様々な安全技術への取り組みが、環境改善に繋がり、元請建設関係者の理解を得、経営者は従業員の雇用責任を果たすことが出来ました。
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経営者と労働組合が対等な立場で、コンプライアンスの徹底・安全技術向上と労働災害防止に取組んでいくことで、適正料金の収受と労働者の生活安定のための待遇が急激に改善されて、労使両面の努力で一定の成果を収めました。
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近圧経営者会の誕生初期~中後期までは、概ね健全な時期でありました。
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《2》  内部紛争の前兆
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本来、労働組合活動は、勉強会・会議費・交通費・通信費・親睦会等について、労働組合員ひとりひとりが働いて得た給料から出し合った資金のみで賄わなくてはいけないことは誰もが知っています。
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近圧協共同受注事業が軌道に乗り出すと、圧送経営者会内では慣れない労使交渉のなかで経営者は労働組合執行部から威圧的な発言を受け度重なる要求を受けるようになりました。そして福利厚生資金や労働者基金等の名目で年々多額のお金を拠出するようになっていきました。
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協同組合の共同事業が軌道に乗ったといっても、多くの圧送経営者は早朝から作業服を着て配車や現場作業に従事し、夜遅くまで実務をこなします。経営者の大半は、プレハブの事務所に隣接する駐車場を確保して営んでいる零細事業者です。経営者自身が長時間働いて家族が事務作業を手伝い、現場安全第一を最優先に業務に支障がでないようにポンプ車を現場に提供しているのです。
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しかし、経営者たちは末端の労働組合員が現場で重労働を行いながら、業界全体のために安全パトロールや災害防止活動等の運動をしていることに理解を示し、労働組合執行部からの度重なる要求に表だって不満を言う経営者はいませんでした。
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つづく
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