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金融庁内に容認論!
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地銀は三菱・三井住友にらみ!
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日銀のマイナス金利深掘り観測で、注目を集める銀行の口座維持・管理手数料を巡り、金融庁内に容認論が浮上している。ある幹部は、サービスの対価として、銀行が預金口座ごとに手数料を徴収するのは自然なことだという。しかし、預金者の強い反発を警戒する地方銀行は手数料徴収には消極的。印紙税が不要な「無通帳口座」の普及に期待を寄せつつ、三菱UFJ銀行や三井住友銀行の動向を注視している。
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日銀があと1年、緩和政策を続けてマイナス金利を深掘りすれば、当行の収益はいよいよ非常に厳しくなる――。ある地銀関係者はこう話す。
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収益環境が厳しさを増す地銀は、収益源の確保が急務となっている。口座を維持・管理するための手数料は「のどから手が出るほど欲しい。日銀がどんどんマイナス金利を深掘りするなら導入もやむを得ない」(同)と話す。
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金融庁からは銀行は口座維持手数料を取るべきだとの声が出ている。ある幹部は「銀行業はサービス業。サービスの対価として銀行口座の利用料を取るのは自然なことだ」と強調、自行だけ先んじて動けない銀行の横並び意識に懸念を示している。手数料の導入は、利用者の厳しい目線に銀行をさらすことになるため、むしろ銀行のサービス向上につながるとの認識だ。
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同幹部は、他行に比べて融資の金利が若干高くても利用者が離れない金融機関があるように、利用者は銀行のサービスやこれまでの信頼関係を重視すると指摘。手数料を導入する銀行から導入しない銀行に多少、預金が移ることはあっても「取り付け騒ぎは考えにくい」と話す。
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地銀は現時点での導入には消極的だ。それは利用者が反発すという警戒感だ。「利用者は銀行の口座がタダで利用できると思い込んでいる。例えば『口座維持手数料を検討している』と発信するだけで、強い反発が出るのは火を見るより明らかだ」と話している。
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別の地銀関係者も「地銀発の口座維持手数料(の導入)は考えにくい」と指摘。「三菱と三井住友が先陣を切って手数料を取ると決めるかどうかだ。両行が決断すれば、各県のトップ行から手数料(導入)が広がるだろう」とみる。三菱UFJ銀行と三井住友銀行は地銀に多くの親密行を抱え、影響力が大きい。
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その両行も今のところ、口座維持手数料に消極的だ。三井住友銀の高島誠頭取は、全銀協会長としての会見で「導入の是非も含め、何ら方針を決めているということはない」と述べた。
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三菱UFJ銀行の広報担当者は、現時点で口座維持手数料の導入を検討しているか、日銀がマイナス金利を深掘りした場合に口座維持手数料を検討するかとの質問に対し、いずれも「ノーコメント」と回答。
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将来的に口座維持手数料を取る銀行と取らない銀行に分かれた場合、取らない銀行に預金が集中し、取りつけ騒ぎやシステム不安に発展しかねないため、銀行は口座維持手数料を断念せざるを得ないと予想するアナリストもいる。
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このアナリストは「大手行の中で、ゆうちょ銀行だけは口座維持手数料を徴収できない」とみる。「衆院解散の可能性を意識するほど、首相官邸や郵政関係議員は反発しそうだ」という。
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一部の大手行が地銀に先行して手数料を導入した場合、ゆうちょ銀が手数料を取らなければ「取り付け騒ぎが起き、ゆうちょ銀に貯金が集中するリスクがある」とみている。貯金増はゆうちょ銀のさらなる運用難につながりかねない。
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口座維持手数料をためらう地方銀行が「密かに期待している」と話すのが「無通帳口座」の普及だ。無通帳口座は紙の通帳を発行せず、ネット上で履歴を見ることができることをうたい文句にするが、紙の通帳を発行しないことで1口座あたり年200円の印紙税を納めなくて済む。国税庁の統計によると、銀行界全体で2017年度は少なくとも690億円の印紙税が通帳発行に連動して支払われた。
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「今まではタブーだったが、一段の深掘りとなると少なくとも導入に向けた議論が始まるのでは」。JPモルガン証券の西原里江アナリストは、法人向け取引手数料の引き上げなどでは収益の落ち込みは補えず、
「聖域」とされた個人預金口座への手数料徴収も検討せざるを得なくなるとの見方を示す。
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同氏は短期政策金利が現在のマイナス0.1%から同0.3%に引き下げられた場合、初年度では銀行全体で約5000億円の最終利益の減少をもたらすと試算する。仮に年間1000円の口座手数料を徴収すれば、2000億-3000億円の手数料収入の増加が見込めるという。
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欧米では一般的な口座手数料は日本では過去も含めて、ごくまれなケースを除き実施されていない。大手行や地方銀行の関係者は国内での導入は非常に難しいと口をそろえる。マイナス金利の深掘りという外部要因を理由としても、預金口座は無料で提供されることが当たり前と考えている利用者からの理解を得にくいためだ。
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無料で口座が開設、保有できることの結果、全国の金融機関の個人預金口座数が合計で約11億口座、国民1人当たりでは10口座にも上っていることを挙げ、金融サービスの非効率化にもつながっていると指摘した。
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これら膨大な口座数のうち、かなりのものが何年も使われていない不稼働口座となっているとみられ、銀行にとっては管理面で負担になっている。マネーロンダリング(資金洗浄)対策として厳格な口座管理が求められている点からも問題だ。口座手数料を導入した場合、1人当たりの口座数は大幅に減ると予想される。
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口座手数料をめぐる議論について、富士通総研の岡宏主席研究員は「単にマイナス金利の影響の転嫁という観点にとどまらず、銀行における顧客サービスの在り方を見直す契機になってほしい」と語る。例えば、銀行にとって負担となっている通帳の廃止と組み合わせ、通帳を作らなければ口座手数料はかからない、といった選択肢を提示することも一つの考え方ではないかとしている。
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