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ユーロ圏「失われた10年」に向かう懸念!
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日本経済は2000年以来順調に成長!
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ユーロ圏の経済と市場の状態を言い表す言葉として、「日本化」が頻繁に使用されている。日本の路線を欧州がたどっているのではないかと投資家が懸念するのは当然だ。欧州諸国の政府は日本が抱えたような多額の赤字を抱えたくないし、抱えることもできない。その上、金融政策の威力がはるかに限られているため、何かショックを受ければ欧州はデフレに傾きかねない。
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米国経済は最近比較的好調だが、EUなどは最近でも経済成長見通しを下方修正するなど、あまり芳しい状況ではないようだ。中国メディアの今日頭条は4月20日、欧米経済が「日本化」しているとする記事を掲載した。
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記事は、スペインのある専門家の文章を紹介。欧米諸国では、高齢化や不平等などによるデフレが経済成長を阻んでいるが、米国にもこの問題の兆候が見られると感じている人も多いという。これまでは「日本化」は欧米の経済体で起きるはずがなく、政策決定者が相応の手段をとれば良いだけだと考えられていたものの、「日本化」が欧米を覆ってきていると伝えた。
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日本化の傾向は、「2008年の金融危機以後」から見られるという。リーマンショック後の経済回復は、欧州では専門家の予測よりも遅く、この回復速度から逃れることができていないと論じた。そして、名目成長率が物価上昇率ともに長年低迷している日本のようになるのではないか、と「欧米の日本化」が不安視されていると伝えた。
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「日本化」を防ぐための対策として、金融政策に重きを置き過ぎるのではなく、より広い政策が必要だと主張。財政に余裕がある国では、より融通の利いた政府予算と、より生産効率を高める投資を行うべきで、これにはインフラや教育などへの投資を含むと論じた。また、財源が足りないのであれば、合法的な移民に労働力を頼るのも1つの対策だとしている。
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債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)が、ユーロ圏市場が独自の「失われた10年に向かっている」と指摘するリポートを発表したのをきっかけに、これをテーマにした多数のアナリスト調査が相次いだ。
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ソシエテ・ジェネラルとスタンダード・バンク・グループはそれぞれ、「ユーロ圏の日本化を取引する」と「日本化?」と銘打ったリポートを発表した。
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バンク・オブ・アメリカ(BOA)の3月8日のリポートは「欧州=日本は正しい共通認識」という題だった。
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これらのリポートからは、欧州のストラテジストらがユーロ圏経済の苦境を説明する際に日本に目を向ける傾向が強まっていることがうかがわれる。ユーロ圏では債券相場のボラティリティーが低迷し、域内の国債の指標であるドイツ債の利回りがゼロに近づいている。
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欧州の経済成長とインフレの鈍化を受け、ウォール街では欧州が日本化しているとの懸念があらためて浮上している。バンクオブアメリカ・メリルリンチ(BAML)によれば、この認識に基づく取引は現在「世界で最も意見が一致する取引」だ。
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日本は何年も低インフレに手を焼いているうえ、日本株は30年近く前の暴落から回復していない。欧州にはよく似た現象が幾つかある。欧州中央銀行(ECB)と日本銀行はいずれも、長らくゼロ金利やマイナス金利を試してきたが、物価上昇には至っていない。日欧のいずれも、問題の度合いを認識する前に性急に利上げを行った。欧州でも高齢化が成長見通しを圧迫している。
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実際には、日本の経済成長は一般に考えられているほど悪くないし、欧州の政策対応は日本と全く違う。
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日本は1990年のバブル崩壊後10年にわたり伸び悩み、銀行は問題に見舞われたが、その後の日本経済は(人口減少の影響を除外するため1人当たりを基準とすれば)順調だった。世界銀行によると、日本の1人当たりの国内総生産(GDP)は2000年以来、購買力平価ベースでユーロ圏より速い成長を遂げている。しかも06年以降の成長は米国や英国より速い。日本の失業率は一貫してどの先進国よりも低い。
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欧州は08年と10~12年に起きた2つの危機に金融緩和政策と緊縮財政政策で対処した。日本の対応は全く逆だった。危機後20年以上にわたり、ほぼ常に、プラスの実質金利(つまり、インフレ率をやや上回る金利)を維持した。ECBは、11年の間違った利上げから撤退して以来、コアインフレ率(エネルギー、食品、アルコール、たばこを除く)を超える金利を設定してこなかった。
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ECBだけでは欧州の災難全てに対処できなかったとしても、金融緩和がデフレ回避に役立ったとするマリオ・ドラギECB総裁の見解に賛成するのは理にかなっている。
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一方で、日本の路線を欧州がたどっているのではないかと投資家が懸念するのは当然だ。欧州諸国の政府は日本が抱えたような多額の赤字を抱えたくないし、抱えることもできない。その上、金融政策の威力がはるかに限られているため、何かショックを受ければ欧州はデフレに傾きかねない。
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危険は明らかだ。日本株は配当の再投資を加味しても1989年末のピークをなお18%下回っている。同年以来、日銀が利下げを挟まずに3回続けて利上げしたことはない。日本の消費者物価は98年にデフレ入りする前の水準から1%も上昇しておらず、生鮮食品とエネルギーを除くと20年前より低い。
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投資家が日本化について懸念する際には、欧州で新たなショックが起きることを懸念する必要は全くない。マイナス金利を維持する準備のある中銀と低インフレのおかげで、ゼロ近辺の10年物ドイツ国債利回りが容認されている。日本からの教訓は、債券利回りの一段の低下があり得ないと思われている時は常に低下するということ、そして債券は素晴らしい投資先だ、ということだった。欧州は日本と全く同じ経験をするわけではないかもしれないが、ユーロ圏解体という追加的な懸念が鈍感なドイツ国債の魅力を高めている。
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日本では大手輸出企業が主な勝ち組となったが、欧州でそれが再現されるかどうかは全く分からない。90年以降の日本株市場では、自動車株が工業銘柄と共にベストパフォーマーの一角を占めている。海外需要のおかげだ。欧州には大きな貿易黒字があるものの、世界・中国経済の成長鈍化と貿易摩擦の激化からすると、日本ほど長きにわたって維持するのは難しいだろう。
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