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シリア撤退相談なし・トランプ大統領の独断!
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ドナルド・トランプ米大統領は2月6日、ワシントンでの国際会議で演説し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」は1週間以内にシリア国内の全支配地域を失うとの見通しを示した。同大統領はまた、ISとの闘いに引き続き重点的に取り組むことを確約した。
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会議はISとの今後の闘いを主題に米国務省で開かれたもので、70か国余りの政府高官が出席した。
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大統領は昨年12月、ISに対する勝利を宣言し、シリア駐留米兵2000人全員の撤退を命じることを突然決定していた。
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大統領は会議で「米軍、有志連合参加国、シリア民主軍(SDF、クルド人主体の民兵組織)は、シリアとイラクでISIS(ISの別称)の支配下にあった地域を事実上すべて解放した」と発言。「支配地域の100%を奪還したことが、来週のうちに正式発表されるはずだ」と述べた。
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さらに大統領は、米国は「とても、とても厳しい」態度を維持すると述べ、各国に資金協力などの取り組みを呼び掛けた。
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大統領は「彼らはただの残党だ。だが、その残党が非常に危険な可能性がある」とし、「ISISの狂気の残りひとかけら、最後の1人を打ち破り、イスラム過激派のテロリズムから国民を守るため、あらゆることをする」と確約した。
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在英のシリア反体制派NGO「シリア人権監視団」は1月16日、内戦が続くシリアの北部マンビジュで同日、爆発があり、少なくとも16人が死亡したと発表した。ロイター通信によると、米当局者は同日、米兵4人が死亡、3人が負傷したと認めた。過激派組織「イスラム国」(IS)系列のアマク通信は米軍主導の有志連合の部隊を狙って自爆攻撃したとする声明を出した。
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テロがあったのはマンビジュの飲食店とみられる。米軍を狙ったとの見方がある。11日にはシリアからの米軍撤収開始が明らかになったばかり。米軍は撤収のスケジュールを公表していないが、米兵に死傷者が出たことで、ペースや手法に影響が出る可能性もある。
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ISの犯行が事実であれば、米軍がISに報復攻撃するのは必至で、内戦当事者や支援勢力の利害が複雑に絡むシリア北部で緊張が高まるおそれがある。
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ポンペオ米国務長官は10日のカイロでの演説で「米国はテロとの戦いを終えるまで(シリアなどから)退去しない」と述べ、IS掃討が続く限りはシリアに米軍を残す可能性を示唆していた。
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トルコとの国境に近いマンビジュはユーフラテス川西側の軍事上の要衝だ。米軍が助けるクルド人勢力が支配してきた。
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トルコはこのクルド人勢力を国内の非合法武装組織と同じ「テロ組織」とみなしている。トルコ軍の攻撃を懸念する同勢力は米軍撤収に備え、マンビジュ近郊にシリアのアサド政権やロシアの軍部隊を招き入れていた。
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米中央軍司令部は1月16日、シリア北部で起きた爆発で米兵ら4人が死亡したと発表した。過激派組織「イスラム国」(IS)などによる自爆テロとの見方が多く、米議会では過激派掃討に向けてトランプ政権が決めた同国からの米軍撤収の見直しを求める声が相次いだ。
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中央軍司令部の声明によると、米兵2人と国防総省職員1人、同省の業務を支援する関係者1人が死亡した。IS系メディアは自爆テロを認める犯行声明を出したが、米軍は「事件は調査中だ」として実行犯を特定していない。サンダース大統領報道官は16日「遺族にお悔やみを申し上げる」との声明を発表した。
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米兵の死亡を受けて、議会では過激派掃討を徹底すべきだとの見方が目立った。共和党のリンゼー・グラム上院議員は16日「大統領の米軍撤収宣言が敵を熱狂させたと懸念している」と指摘し、トランプ氏の決断が事件の引き金になった可能性があると説明した。「大統領がシリア政策を熟考することを望む」とも強調して撤収の見直しを迫った。
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共和党のマルコ・ルビオ上院議員も16日、ツイッターで「事件はISが壊滅していないことを示す悲劇的な証左だ」と指摘した上で「ISとの戦いから後退する時間はない」と強調した。野党・民主党のロバート・メネンデス上院議員も声明で「パートナーと協力し、中東での米国の国益を守るための包括的な戦略を構築すべきだ」と訴えた。
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トランプ大統領は2018年12月、シリアからの米軍撤収を突然発表した。今月11日には米軍が撤収を始めたことも明らかになっていた。撤収をめぐっては、中東安定に駐留継続が必要だと訴えた当時のマティス国防長官の辞任につながった。
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アメリカ軍で中東地域を統括する中央軍の司令官は、トランプ大統領が先に決定したシリアからのアメリカ軍撤退について大統領から相談がなかったことを明らかにし、大統領の独断ぶりが浮き彫りとなった形だ。
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アメリカ軍で中東地域を統括するボーテル中央軍司令官は、2月5日、議会上院の軍事委員会で証言しました。
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この中でボーテル司令官は、周囲の反対を押し切ってシリアからのアメリカ軍撤退を表明したトランプ大統領の決定について「自分は事前にそのような表明をするとは知らなかった。大統領からは相談を受けなかった」と述べました。
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そのうえでシリアには過激派組織ISの一部の勢力がまだ残っていて、引き続き圧力を加えないと復活するおそれがあると指摘し、アメリカ軍の撤退は慎重に進めていく考えを示しました。
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シリアからのアメリカ軍撤退をめぐっては、大統領の決定に抗議して大統領特使を辞任したマクガーク氏も、先月、ワシントンポスト紙に寄稿し、「大統領は、同盟国に相談せず、現地の状況も理解せずに撤退を決めた。トルコの大統領との電話会談でトルコ側の提案をそのまま受け入れた」などと不満を示しています。
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今回の司令官の証言はトランプ大統領の独断ぶりを浮き彫りにした形で、アメリカ議会では、北朝鮮の核問題など他の外交問題でもトランプ大統領が政府内部で十分協議せずに政策決定することを懸念する声が出ています。
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