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   2018.07.29.
   中国・退役軍人の年金の裏で起きていたこと!
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人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている!
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 「解放軍内の粛清は史上最大級だろう。軍位の売買、それに伴う金銭のやり取りはもちろんのこと、これまでは許されていた軍としての営利活動や企業運営、そして灰色収入の獲得も固く禁じられている。正常な接待ができないから軍内でまともなコミュニケーションが取れない。茅台酒すら安心して飲めない」
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 最近、定年を前にして自ら解放軍少将の地位を捨てた元空軍幹部の言葉だ。習近平は“反腐敗闘争”を通じて軍内を粛清しつつ、軍部に対する掌握力と支配力を徹底的に強化しようとしてきた。
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  共産党の18回大会以来“落馬”した少将・上級大佐以上の解放軍幹部は90名以上に及ぶ。そこには徐才厚、郭伯雄両中央軍事委員会副主席・上将も含まれる。また、18回大会から昨年10 月に行われた19回大会直前までの約5年間で、腐敗が原因で処分を受けた軍人は1万3000人以上に上るとされる。
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  1人の兵士を養うのに1万元(賃金、手当、補助金、福利厚生など)、将校1人には数万元から十数万元かかる。退役後には将校も下士官も生活全般について政府の優遇措置を受けられる。
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  今は定かでないが、2013年当時、兵役に就くために必要な賄賂の相場は、農村出身の男子が2万元、歳出身男子で5万元(約80万円)、農村出身女子で少なくても10万元(定員枠が少ないので)、出身地別割合は裏金を用立てしやすい都市部の裕福な家庭が農村部より多い。農村出身の女子は都市部出身の女子ほど就職の選択肢がないため、都市部出身の女子を上回っている。農村出身の女子は、いつの日か将校の奥方に収まれるかもしれず、借金してでも入隊資格を買い取って入隊させるのだ。農村部の過程が賄賂に使う金は、少なくとも10万元、多ければ30万元にもなるという。
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  人民既報軍の各種学校や専門学校など教育機関は本来、現職の軍人(優秀な士官)しか入学できないはずが、裏金を払えば極論だが失業者でも軍人や優秀な下士官に化けて軍事教育機関に紛れ込み事が出来る。人民解放軍の学校では毎年1割の「特待生」を選出するが、これらは大金をはたいて裏口入学をした若者だ。しかし、裏口入学は出来たが、勉強が出来ないため試験に受かることはできない。ところが、受かるはずのない彼らに代わり試験を受ける替え玉し、替え玉行為1回で3万元得られる。
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  元解放軍兵士の北京の江鵬は、軍隊内のつてを利用し、軍の白紙の紹介状と少将の軍服をちらつかせ、4年間で大学入試に失敗した若者30人を解放軍第四軍医科大学や武装警察学院などの軍の学校に入学させた。軍の学校への入学しカウを得るため、学生一人につき17万元の賄賂を受取り、夫婦は30人の学生から合計540万元を受け取った。この30人は1日も兵役に就かず、「優秀下士官」の称号を得て軍の学校に入学し、卒業後、各部隊に配属され将官となった。
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  江鵬の肩書は「北京衛成区高新技術センター主任、蘭州軍区後勤聯動部少(後方勤務)、江鵬の妻は一度も兵役には就いていないが解放軍総参謀本部より准将の階級と将校証を得ている。2人とも偽将軍で、公然と詐欺行為を働いていたが2004年江鵬夫婦とも逮捕。2年かかっても捜査と審理は終わらなかった。理由は、この夫婦と関係のある軍関係者が多すぎて複雑なため、深層まで捜査を行えなかったからである。
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  中国解放軍の中軍委の中枢部が中軍委弁公庁でその配下に、参謀組織として4総部あり、総参謀部(作戦、訓練、動員、情報を担当)、総政治部(政治思想教育、人事など担当)、総後勤部(補給、輸送、衛生、財務、不動産などを担当)、総装備部(装備品の開発・調達、宇宙開発などを担当)があるが、陸軍司令部が存在しない。総参謀部が陸軍司令部の役割を果たしていた。陸軍優先が人民解放軍の伝統である。
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  習近平の腐敗防止でも、4総部における軍部の腐敗が大きな問題であり、摘発も大きかった。とくに総後勤部は、軍の不動産事業(基地の整備や宿舎の整備)の僧元締めであり、大金を稼ぐチャンスも多く、腐敗の温床にもなっていた。兵器等の開発・調達を担当する総装備部でも大金を不正に蓄財(私的に)するチャンスが大きく腐敗の温床でもあった。
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 2018年4月12日、南シナ海で海軍の閲兵式に出席し、「人民海軍を全面的に世界一流の海軍に育て上げる」と高らかに宣言した習近平。解放軍が自らの意思や戦略を持つことは許されない。すべては「党の言うことを聞け」(習近平)ということである。
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 6月11日、党中央弁公庁、国務院弁公庁、中央軍事委員会弁公庁の連名で『軍隊が全面的に有償サービス業務を停止することを深く推進するための指導意見』を発表した。これは習近平政権成立以来もくろまれ、取り組まれてきた軍隊・軍事改革の一環であり、『意見』の発行をもって、解放軍は今年度末までにすべての営利を目的とした企業運営やサービス提供を停止することが正式に義務付けられることになった。これは、軍隊に対する“粛清”プロセスだと解釈できる。
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  軍隊が社会的特権を乱用して、不当なビジネスを行ったり、莫大な利潤を獲得するといった状況は早くから中国社会における“公然の秘密”となっており、民の軍に対する不満や抵抗感は長い間蔓延してきたと言える。
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  習近平政権成立以来、共産党による絶対的領導下にある解放軍は、過去のどの時代よりも国ではなく党の軍という地位に甘んじている。そのような現状に対して、解放軍の関係者は政策、地位、待遇といったあらゆる角度から不満を蓄積させてきている。“反腐敗闘争”によって一切の賄賂や腐敗、そして贅沢が禁止されてきた。
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  軍隊内部で生き延びるため、私益・私欲を肥やすためのビジネスも禁止された。一切のグレーゾーンを排した、党(の方針)への絶対服従を命じられているのである。行動として服従したとしても、内心穏やかでないどころか、不満を募らせている軍人はゴマンといるであろう。気心の知れた軍人は酒の席で、習近平への不満や不服を爆発させている。
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  このような感情が“臨界点”に達した時、若干極端な表現になるかもしれないが、軍人が党・政府・国に対してクーデターを彷彿とさせるような行動を起こす、何らかの引き金が原因で公共の場で、一般民衆に対して発砲する、台湾や他国に対して軍事的行動を起こすといった形で“暴走”することは大いに想定できる。
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  中国最高人民検察院の曹建明検察長(検事総長)は2018年3月9日、北京で開会中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で活動報告を行い、2013~17年の5年間に収賄や横領などの汚職で公務員25万4419人を摘発したことを明らかにした。このうち閣僚・省長級以上の大物は120人に上った。
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