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   2018.06.10.
   金正恩の体制保証:米朝にズレ!
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北・最終目的は在韓米軍撤退!
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 「北朝鮮が本当に望むのは、平壌にトランプタワーやマクドナルドの店ができること。そうしてこそ、米国の攻撃から安全が保証されると考えるだろう」
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 韓国の文在大統領の外交ブレーン、文正統一外交安保特別補佐官がこう指摘したことがある。米朝首脳会談で焦点となる北朝鮮の非核化と体制保証に絡み、米国のトランプ大統領やポンペオ国務長官も北朝鮮の経済的繁栄に言及している。
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 だが、金正恩朝鮮労働党委員長が4月の南北首脳会談で「終戦と不可侵が約束されれば核を持つ必要はない」と語るなど、北朝鮮側が指す体制保証は安全保障上の問題に集中している。
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 金正恩氏は中国の習近平国家主席との5月の会談でも「敵視政策と安全の脅威をなくせば非核化は実現可能だ」と強調した。金桂寛第1外務次官も談話で「米国の敵視政策と核の脅威を終わらせることが条件」だと主張。トランプ政権が非核化の見返りに経済的恩恵を示唆していることには「われわれは一度も米国に期待して経済建設をしたことはなく、今後も取引しない」と拒絶感を表明した。
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 一方、文在寅氏は、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への早期転換を目指し、体制保証をめぐる金正恩氏の不安感を代弁するなど、北朝鮮寄りの姿勢を保つ。韓国政府関係者は、北朝鮮と相互不可侵や平和協定転換に関する案を実務者レベルで協議していると認めている。
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 韓国・高麗大の南成旭教授は「体制は国際社会が保証するものでなく、自ら守るものだ」とした上で「北朝鮮が求める体制保証の最終目的は、在韓米軍の撤退を意味している」と分析する。ベル元在韓米軍司令官は米政府系メディアで、平和協定締結後に在韓米軍が撤退する事態になれば「北朝鮮はイデオロギー浸透や軍事攻撃で韓国を取り込むだろう」と警鐘を鳴らす。
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 龍谷大の李相哲教授は「北朝鮮がいう体制とは、金一族の独裁体制を意味する」と指摘。仮に非核化が実現し、中韓が経済支援をしたとしても「国民全体の経済が活性化すれば、体制が揺らぎかねず、住民統制や幹部らの忠誠心維持に資金が費やされる」懸念があるとの見方を示した。
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 目前に迫った米朝首脳会談をめぐって、トランプ氏は北朝鮮の体制保証に度々言及している。ただ、米朝が描く体制保証にはズレが見られる。国家体制は本来、自国が守るもので、独裁体制を容認する言質にもとられかねない。中身を曖昧にしたまま、米朝が体制保証で合意すれば、大きな禍根を残す恐れがある。
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 トランプ米政権が想定する北朝鮮の「体制保証」とは、北朝鮮による「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を実施した段階で経済制裁を解除するとともに北朝鮮への財政支援や投資を解禁して北朝鮮の経済発展を促し、金正恩体制による民心掌握を下支えするというものだ。
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 ポンペオ国務長官は5月、米テレビの報道番組に出演し、北朝鮮の核放棄と引き換えにインフラ整備や農業支援の分野を中心に「米企業の投資を認める」と表明。また、トランプ大統領は「米国の税金は使わない」と述べ、日本や中国、韓国からの経済支援や米民間投資を通じて北朝鮮経済の再建を後押しする構想を描いていることを明らかにしている。
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 しかし、息子ブッシュ政権下で国家安全保障会議(NSC)のアジア部長を務めたビクター・チャ氏は「経済開放こそが金正恩体制にとって最大の脅威になる」と指摘する。経済開放を通じて国民の生活水準が向上すれば、民主化要求などによって金体制の求心力が脅かされる恐れが高まるためだ。
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 その意味でトランプ氏が金体制の内部崩壊を外から食い止め、金氏に体制保証を確約するのは不可能だ。仮に北朝鮮国内で民主化要求が高まった場合、世界の民主体制の盟主を自任する米国が民主化の動きを抑圧するはずもない。
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 核放棄に踏み切ったリビアのカダフィ旧体制が崩壊した直接の原因は核を放棄したからではなく、その後も抑圧的な政権運営を続けて自ら内乱を招いたためだ。金体制が強力な制裁圧力に屈する形で非核化交渉の席に着くことを決めた以上、核放棄を受けて経済再建と安定的な国家運営をできるかどうかは、金体制自体の責任となる。
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 米国は一方で、北朝鮮が「体制保証」の一環で今後、米国に求めてくる可能性のある「在韓米軍の撤収」に関しては、「あくまで東アジアの安全保障環境を勘案して判断すべき問題だ」(国防総省高官)として安易に応じない構えで、北朝鮮と折り合う余地は少ないとみられている。
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  非核化について、最近では時間をかけて実現するような表現をしていますが、そもそも非核化は短期間でできるものではなく、ただ1回の会談で非核化に関する全ての事項に合意し、その実現のための行動計画でも合意するのは困難だ。
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 非核化の実現にかかる期間をCIA(米中央情報局)は6カ月、国務省は2年程度としている。これは北朝鮮がもし本気で非核化に応じればの話であり、世界は懐疑的だ。
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