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密室犯罪摘発に期待も出来るが!
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無実で「巻き込み」の恐れも!
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(政府略称は「合意制度」)が6月1日から導入される。容疑者や被告が他人の犯罪を明らかにする見返りに検察官が起訴を見送ったり求刑を軽くしたりできる制度で、大企業や犯罪集団の上層部の摘発などにつながることが期待される。だが、うその供述を基にした取引がなされ、無実の人を巻き込む恐れも指摘される。新制度の運用に対する企業などの関心は高い。
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「役員の指示で政治家に金を渡した。全て話すので配慮してほしい」。汚職事件に絡み、一社員が社上層部の関与を明らかにする。現金を渡したこの社員は起訴されず、捜査対象は政治家や役員に及んだ--。制度スタート後は刑事事件の捜査過程でこうした「取引」が可能になる。
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「司法取引」は既に欧米諸国で運用されている。日本では2011年以降、取り調べの録音・録画の法制化などが議論された法制審議会(法相の諮問機関)で検討され、証拠を集める方法の多様化を目的に導入が決まった。米国のように自分の犯罪を認める代わりに刑を軽くしてもらう制度を持つ国もあるが、「日本版」は他人の犯罪を明らかにする趣旨だけであるのが特徴だ。
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対象となる犯罪は、刑法と組織犯罪処罰法が規定する一部の犯罪のほか、脱税や談合などの「財政経済犯罪」だ。贈収賄事件で起訴されたのは06年に220人だったが16年には61人に減少しており、密室で巧妙に行われる犯罪の摘発につながることが期待される。暴力団や特殊詐欺グループの犯罪への適用も想定されているが、ある検察幹部は「暴力団や詐欺グループでは、私怨で無関係の誰かを売ろうとするリスクもある。供述の信用性を考えれば、まずは『ホワイトカラー』による不正での活用が現実的だ」と話す。
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制度は、懸念される「無実の人の巻き込み」を回避するため
(1)弁護士が協議に立ち会って取引(合意)に同意する
(2)虚偽供述や偽造証拠の提出に5年以下の懲役を科す
--といった防止策を用意した。
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加えて警察庁は5月、「司法取引の協議は警察本部長が指揮する」と、犯罪捜査規範を改正。最高検察庁も3月に「地検が制度を使う際は当面、高検検事長が指揮し、高検も最高検と協議して供述の信用性を見極める」との通達を出している。
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元検事の名取俊也弁護士は「取引で合意した内容は公判で明らかにされ、裁判官に吟味される。捜査機関も当然、客観的な証拠で裏付けした上で慎重に協議・合意するか否かを判断するだろう」とみる。これに対し、笹倉香奈・甲南大教授(刑事訴訟法)は「どの程度の裏付け証拠に基づき『巻き込みの危険性はない』と判断するのかは、捜査機関側の裁量に委ねられている。不透明な部分もあり、完全に『巻き込み』を防止できるのかは疑問が残る」と指摘する。
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捜査機関にとって「新しい武器」はもろ刃の剣だ。取引が常習的になると、取り調べで「取引を約束してくれないと何も供述しない」との姿勢で臨む容疑者や被告が増える可能性がある。事件によっては、その罪の軽減に対して世論が反発するという事態が起きることも否定できない。別の検察幹部は「基本は従来の捜査。導入当初から制度を頻繁に使うことはないだろう」と慎重だ。
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合意制度の適用対象に「ホワイトカラー犯罪」が含まれているため、経済界の関心は強い。捜査機関のメスが及ぶ可能性がある不祥事が発覚した場合などの対応を学んでもらおうと、あるコンサルティング会社は5月中旬に東京都内でセミナーを開催。企業の法務担当者ら約130人が参加し、講師の話に耳を傾けた。
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講師の早川真崇弁護士は「(制度が)企業のリスクマネジメントに与える影響は大きい」と発言。メーカーの品質偽装事件などを例に挙げ、社内で早期に不祥事を把握する必要があると指摘した。
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企業側からは「制度が始まってみないと、使い勝手が分からない」と戸惑う声も漏れる。似た仕組みを持ち、企業が公正取引委員会に談合などの不正を申告すれば課徴金の減免を受けられる「リーニエンシー制度」は法務担当者の間である程度定着した。このリーニエンシーは企業側がルール通りに手続きをすれば公取委が成立を認めるが、合意制度では捜査側と「協議」し、さらに「合意」に至らなければならない。
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大手企業の法令順守(コンプライアンス)に詳しい元検事の平尾覚弁護士は「罪の軽減が可視化される(どの程度の罪が科されるのかが読みやすくなる)ため、制度は企業に利点もあるはず。
ただし、運用基準が明確とは言えないので検察は具体的に示していく必要がある」と話す。
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