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   比・ドゥテルテ大統領:ミンダナオのISISにどう対処!
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ドゥテルテ訪日中止・「アジアの未来」会議欠席!
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 イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」はイラクやシリアでは劣勢に追い込まれているが、組織を再編成し、中東の紛争地ではない欧州などを標的とした攻撃に「これまで以上に重点を置いている」と、国連(UN)の専門家が6月8日、警鐘を鳴らした。
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 国連のジェフリー・フェルトマン政治問題担当事務次長は、ISについて「継続して軍事的圧力を受けているにもかかわらず、(イラクの)モスルやシリアのラッカをはじめ各地で抵抗を続けている」と指摘。その上で「ISIL(ISの別称)は、部隊の組織再編を行って前線の司令官により大きな権限を与え、紛争地以外の場所での攻撃をしやすくすることに今までになく注力している」と警告している。
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 この1年半、ISがソーシャルメディア上でメッセージを発信する回数は減ったが、フェルトマン氏は「シリアやイラク以外の地域で、ISの支持者らがプロパガンダを集めてはソーシャルメディアに再投稿して拡散しており、脅威は持続している」と述べた。
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 また、ISに勧誘される外国人戦闘員の人数は減っているものの「戦闘員が母国に帰国したり、(モスルやラッカなどの)紛争地以外の場所に再配置されたりしているため、国際平和にとって著しい脅威になっている」と警鐘を鳴らした。
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 6月5日と6日、国際交流会議「アジアの未来」が東京で開催された。「アジアの未来」は、例年、首脳をはじめアジアの名だたる要人が招待される日本有数の大型国際会議だが、今年の目玉は、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領の出席だった。
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 ところが、会議当日、ドゥテルテ大統領の姿はなかった。フィリピン政府は、会議のわずか1週間前の5月30日、大統領の訪日中止を発表したのである。
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 5月23日、ドゥテルテ大統領は、訪問中のロシアにおいて南部ミンダナオ島に戒厳令を布告した。
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 同日、戒厳令に先立ち、ミンダナオ島で活動するイスラム武装勢力「マウテ」は、西部マラウイ市でフィリピン国軍と警察との間で大規模な交戦に入った。これにより、国軍兵士と警察官3人が死亡。マウテは病院や市庁舎を占拠し、マラウイ市民を「人間の盾」として人質にとった。
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 戒厳令は、マラウイを占拠する武装勢力含め、ミンダナオ島におけるイスラム武装勢力を掃討し、治安を回復することを目的に布告されたものである。
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 ドゥテルテ大統領は、ロシア訪問の日程を短縮して急遽帰国。プーチン大統領との会談は前倒しで実現したが、メドベージェフ首相との会談はキャンセルされた。
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 6月7日時点で、マラウイ市での交戦は続いている。国軍兵士と警察官の死者は38人、武装勢力側の死者は120人に上った。ドゥテルテ大統領は、「安全が保証されるまで戒厳令は続ける」「必要であれば全土に拡大する」と宣言し、治安回復のため一歩も引くことのない強い決意を明らかにした。
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 訪日中止は、このような緊急事態を背景に決定されたものである。
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 ミンダナオ島は、キリスト教徒が多数を占めるフィリピンにおいて全人口の5%を占めるイスラム教徒が集中して居住している。この島では、長年にわたり、分離独立を目指すイスラム系武装勢力とフィリピン政府との間で武力衝突が続いてきた。
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 ドゥテルテ大統領は、イスラム系武装勢力との和平を政権の重要課題と位置づけ、就任以来、並々ならぬ意欲をもって取り組んできた。
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 大統領就任前、ミンダナオ島の最大都市であるダバオ市において、市長、副市長、下院議員などを務め、約30年の長きにわたり同市のリーダーとして君臨したドゥテルテ氏は、イスラム教徒への理解が深く、長男パオロ・ドゥテルテ氏(現ダバオ副市長)はイスラム教徒の女性と結婚している。代表的なイスラム系武装勢力であるモロ民族解放戦線(MNLF)とモロ・イスラム解放戦線(MILF)のトップとは個人的な親交がある。
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 それだけに、自分であれば、歴代政権が解決できなかったイスラム教徒との和解を実現できるという、強い自負と自信があるのだろう。ドゥテルテ大統領は、アブ・サヤフ、バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)、マウテといった武装勢力に対しては徹底的に弾圧する構えを見せている。
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 これらは、1990年代ないし2000年代から活動を開始し、アルカイダなど国際テロリズムとの関係が深い新興のグループであり、70年代ないし80年代から分離独立を目指してきたMNLFとMILFとは性質が異なる。これらのグループはいずれも、近年、「イスラム国」への忠誠を誓っている。
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 今回、マラウイ市で交戦に入った武装勢力はマウテとアブ・サヤフである。しかも、戦闘員の中には、イエメン、サウジアラビア、チェチェンなどの外国人が含まれているという。ドゥテルテ大統領は、「敵はマウテではなく『イスラム国』だ」と断言した。 独立のために戦うイスラム教徒などではなく、外国からやってきたテロリストであると主張するものであり、その活動はフィリピンのみならず東南アジア全体にとって脅威になることを示唆したといえる。
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 MNLFとMILFとの和平交渉は難航しており、ドゥテルテ大統領も「楽観的にはなれない」と述べている。交渉が難しい理由の一つには武装勢力同士の関係が複雑なことがある。アキノ前政権ではMILFとの和平交渉を進めており、MNLFはその和平プロセスに加わることには消極的であった。また、フィリピン政府とたびたび軍事衝突しているアブ・サヤフとBIFFはMNLFとMILFとつながっているという疑惑もある。他方、今回のマウテ掃討戦においては、MNLFとMILFはフィリピン政府に協力する姿勢をみせている。
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 ドゥテルテ政権、掛け声で終わるのか、徹底制圧が出来るのか、試練が待っている。甘く見ると手ひどい目に合うのだが、、、。
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