無料カウンター    2016.10.04.
   役所の常套手段:議会には小さく・追加は大きく!
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議会チエックは意味があるのか!
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利権に群がる議員・業者・役所幹部!
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 2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、2015年7月22日、都内の日本記者クラブで開かれた記者会見で「(2014年冬季五輪の)ソチには5兆円かかっている。五輪は大変なおカネがかかると、あえて申し上げたい」と、述べた。
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「5兆円」を出したのは、この日、東京オリンピックにかかる経費が、「最終的に2兆円を超すことになるかもしれない」と、初めて五輪予算の急騰を明らかにした森氏が、驚きを“中和”させるためだった。
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 五輪招致当時の見積もり額との落差は、あまりに大きかった。大会の当初経費は、施設関連費として、新国立競技場約1300億円、新設10施設約1538億円、仮設11施設約723億円で総額約3561億円。これに諸経費を加えて約7340億円と見積もられていたのが、約3倍に跳ね上がり、1年以上経った今も、森・組織委は、五輪総費用を正式には明らかにしていない。加えて、8月に国際オリンピック委員会総会で野球・ソフトボールなど5競技18種目が追加されたこともあり、舛添要一前都知事が在任中に口にした「3兆円かかるかもしれない」という言葉が現実味を帯びてきた。
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 民間企業なら当初予算が3倍、4倍に跳ね上がることは考えられないし、事業そのものは中止となり、担当者と責任者は責任を取らされ、退職する事になる。
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 就任した小池百合子都知事は「都政改革」の最重要課題に五輪費用のチェックをあげ、「都政改革本部」において、調査チームを立ち上げ、「見えないところで、どのように費用が高騰したのかを徹底的に調べる」と宣言した。
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 森・組織委会長は、組織委が立ち上がる前の招致委に問題があったとして、「オリンピックの立候補ファイルは、あげればきりがないくらい問題だらけ」と、語っている。
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 役所のやることは数字合わせと寄せ集めの計画書を並べ立て、他国のかかった費用を参考に、ズサンな五輪計画を作っただけだ。象徴的な出来事は、国が負担する新国立競技場の約1300億円(ザハ案の2,650億円を設計変更で1,550億円に)だが、都が負担する恒久10施設は約1583億円が約3倍の約4584億円に膨らむ見通しとなったことから、3施設を取りやめて約2000億円を圧縮。組織委負担の仮説施設は、約723億円が4倍以上の約3000億円に膨らんだ。
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 日本の役所が、ビックプロジェクトを手がける時の“決まり事”に「小さく産んで大きく育てる」という常套手段がある。
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 事業企画から事業構想に進み、予算組をしていくが、当初は議員向けの文章を作成し根回しをしていく、この段階で予算は再停戦を組みながら議員諸侯の意向を汲んでデコレーショ ンを着けていくが、そのデコレーションの度に計画予算額もジワジワと増えていく。
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 当初計画の段階から大きい額では「無駄遣い」と議員や事業関連の地元ボスの批判を浴び、事業がスタートしない。そこで小さく予算化し、事業が具体化するに従い、修正、見直し、追加で予算を膨らませ、役所が目論んでいた当初構想に近づける。
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 この「役所の知恵」は、政治家にとっても都合がいい。後援者や支援企業からさまざまな形で陳情を受け付けるのが政治家の仕事だが、当初予算での仕事は、ガッチリとした利権構造のなか、大物政治家が仕切っているので参入しにくい。だが、修正、追加、設計変更などは、チェックが行き届かず、役所に無理をいいやすい。
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「役所の知恵」の具体的例は五輪仮設施設を担当する組織委が、都に負担を押し付けた事例がある。
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 平成28年度東京都予算特別委員会の最終日の前日、締めくくり総括質疑のなかで、組織 委が負担することになっている仮設会場「有明体操競技場」が、組織委ではなく都の負担になっていることが判明したという。
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〈 大会後は都が引き取り、中小企業振興の一環として展示場とし、4億8000万円を負担することが判明した。国民やマスコミが注目しやすい、オリンピック・パラリンピック予算ではなく、産業労働局予算『国際展示場の運営費等』約200億円のなかにもぐりこませていたのだ 〉
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 この手の誤魔化しは枚挙にいとまない。巨額工費に批判が集まった「海の森競技場」では、コースをまたぐ橋の整備費を別事業として除外。東京ビッグサイトに設営されるプレスセンター関連施設は、五輪施設整備の枠から外すことで経費を削減した。
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 自分の懐は傷まないから自由に予算を増額し、批判があれば削減するか付け替える。招致委を批判した森・組織委会長だが、その発想は森氏にも染み付いている。
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 新国立競技場の建設がやり直しとなったことについて、「国がたった25000億円を出せなかったのかね。何を基準に高いというんだね」、ザハ案変更を受けての森発言は東京五輪は組織委員会好きなだけ金を使っても良いという奢った考え、国の金は俺のカネ的思想が骨の髄までしみこんでいるからだ。国民感情とのズレはとてつもなく大きい。
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 若狭勝代議士が、「高額家賃に背任の疑い」とまでいった虎ノ門ヒルズ森タワーに月4300万円のオフィスを構えている問題もそうだろう。(都庁のある)新宿ではないのは、近距離の森ビル系列に森会長が個人事務所を構えていることと関係するのではないか。
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 ゼネコンを始めとする業界が、ビッグプロジェクトを望むのは、五輪施設整備に伴い、都内の再開発は玉突き状態で整備されているし、五輪が終わっても再開発は続くのだ。
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 豊洲移転と並行する形で2016年東京五輪招致が持ち上がると、築地は高層のメディアセンターになるという青写真が引かれ、「オリンピック閉幕後はNHKが移転する」と、石原慎太郎元知事は明言。それは、NHKのある渋谷・代々木・神宮外苑を含む一大再開発事業計画へとつながっている。
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 政界と業界は、常に事業を先取りし、それに連れ添うように官僚が公共事業を展開してゆく。小さく産んで大きく育てるのが完了ビジネスの神髄であり、それと表裏一体で政官業が進むこの一帯構造を「利権構造」と呼ぶ。
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 7340億円が2兆円以上に膨張する東京オリンピックは、利権の宝庫であり、過去の都 政はどのような知事が就任しようが「中枢と政官業は一体」の構造できただけに、小池新知事が伏魔殿の解明を進めても、都庁の役人が抵抗し始めたとき、都政改革が順調に進むか官僚に飲まれるのか、小池都知事の大なぎなたが何度も空振りするようだと、都民の落胆は大きく、矛先は小池知事への厳しい批判となって跳ね返ってくる。
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