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参院選後・またも分裂か!
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将来の政権交代を目指し、民主党と維新の党が合流して結成した民進党。結党3カ月そ こそこで、この参院選では旧民主と旧維新が同一選挙区で衝突するなど、早くも不協和音
が吹き出している。その象徴する選挙区が参院選神奈川選挙区で見られた。
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「この神奈川において、金子洋一さんは民進党の代表であり、素晴らしい政治家です。どうか皆さんの後押しをお願いします」
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5月25日の昼下がり、横浜市南区の弘明寺商店街。民進党の岡田克也代表は、党公認の金子洋一参院議員の応援演説に立ち、こう訴えた。金子氏は旧民主党の出身だ。
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この日、会期末が迫った国会では、安倍晋三内閣の不信任決議案提出をめぐる野党間の調整が続いていた。そんな多忙の中、岡田氏は5時間にわたり金子氏につきっきりで横浜市内を回った。買い物客らとの記念撮影にも笑顔で応じ、金子氏支援を呼びかけた。
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その一部に同行した民進党市議は「民進党の候補は金子、と(有権者に)わかってもらえたのではないか」と話した。
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しかし、神奈川選挙区には元日本テレビキャスターの真山勇一参院議員も立候補する。こちらは旧維新の党の出身だ。
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岡田氏は、記者団に「党本部として全力で2人当選を目指して頑張る。真山さんは真山さんで応援に入りたい」と語った。だが、真山氏は心中穏やかではなかった。
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真山氏は岡田氏の神奈川入りを知ったのは前日。陣営は「党のトップが来るのなら、県連が事前に連絡すべきだ」と不満を隠さない。その県連のトップは、金子氏が務めており、「もともと出遅れている上、(選挙戦の実動部隊である)県連の全面的なバックアップは期待できない」(旧維新の国会議員)との疑念も消えない。6月14日、岡田氏はようやく真山氏の応援にも駆けつけたが、陣営は出遅れに危機感を募らせている。
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金子氏陣営にも不満はある。もともと出馬を表明していたのは旧民主で現職の金子氏だ。改選1議席を死守するため、労働組合や民主党系の県議・市議の支援を着々と固めていた。その矢先の4月19日、民進党本部は比例代表選出の真山氏を選挙区で公認することを決めた。
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決定のプロセスでは、地元・神奈川での旧維新系の勢力拡大を目指す江田憲司・元維新の党共同代表=衆院神奈川8区=の意向が強く働いた。真山氏の出馬が決まると、金子氏は「大変驚いている。知名度のある方でもあり、大変今後の状況は厳しくなると思っている」とのコメントを発表し、ライバル意識をあらわにした。
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つまり、労働組合の支援を受ける旧民主系と、江田氏をトップとする旧維新系の亀裂が背景にあるというわけだ。民進党は表向き「シナジー(相乗効果)」を強調するが、実態は少し異なっている。
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軋轢が生じたケースは他にもある。衆院東京2区の公認候補選びで、旧民主系と旧維新 系の2人が定数1の選挙区で「内定したのは自分だ」と主張したのだ。
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民進党発足(3月27日)の直後、旧民主で東京2区を地盤としてきた中山義活氏が引退を表明し、新人で弁護士の松尾明弘氏を後継指名した。ところが、旧維新で同区を地盤としていた大熊利昭氏がこれに反発。民進党結党大会で渡された「衆議院公認内定候補者.
東京2区 大熊利昭」と記された名札の写真を自身のオフィシャルサイトに掲載し、自身こそが正統な内定者だと主張した。
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これを調整できなかった党本部は、「最終的に強い方に絞り込む」(枝野幸男幹事長)として両氏ともに公認に内定した。5月、労働組合などの支援を中山氏から引き継ぎ、旧民主系の地方議員の多くからも支持された松尾氏が内定。組織の後ろ盾が弱い大熊氏ははじき出された。その大熊氏にはおおさか維新の会が触手を伸ばしている。
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旧民主と旧維新は、結党前から衆院で統一会派を結成し、結束をアピールしてきたが、いざ選挙となれば綻ほころびが隠せなかった。今後、同様の混乱は衆院選の他の選挙区で
も生まれる可能性がある。
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最大の支援組織である連合(労働組合)も、官公労を行政改革の抵抗勢力だと名指ししてきた旧維新の党の議員に対し、不信感を払拭できないでいる。
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民進党の支持率が一桁台に低迷する中、今回の参院選では党単体の改選数(43)を超えることは困難との見方が強い。そんな中、岡田氏は選挙後の責任問題を意識しているのか、参院選(改選数121)の勝敗ラインを明示していない。
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共産党と選挙協力して臨んだ選挙で改選議席を減らせば、「岡田おろし」が始まる可能 性はある。旧維新勢力がその中心になるかもしれない。またも参院選後に民進党は分裂し
かねない。
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