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   海底断層のズレは:岩石調べ予測・手法開発!
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深さ10km程度なら・30~50m動く!
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 大阪大学や海洋研究開発機構などは、将来巨大地震が起きたとき、海底の断層がどれくらい動くかを精度よく予測する手法を開発した。断層の動きがわかると発生する津波の大きさを推定でき、有効な対策を立てるのに役立つ。
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 研究チームは、海底探査船「ちきゅう」で、巨大地震の発生が危惧されている南海トラフの海底を数百m掘削し、断層付近の岩石を採取した。
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 岩石に力をかけて滑りやすさなどを測定し、コンピューターを使って、地震発生時の断層の動きを計算した。震源が深さ10km程度と比較的浅かった場合、断層が30~50m動くと予測された。
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 東日本大震災で実際に断層が動いた海底から岩石を採取して同じ方法で計算したところ、80m動くとの結果が出た。震災後に判明した動きとほぼ一致し、この方法で精度よく予測できることが確認できた。
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 今後、南海トラフの海底をより深く、広い範囲で掘削して岩石を採取する。震源が深い場合も含め、様々な状況を想定して断層の動きを細かく予測する計画だ。
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2016年6月20日
リリース概要・大阪大学
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大阪大学大学院理学研究科の廣野哲朗准教授、清水建設技術研究所の津田健一博士、国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所の谷川亘博士、カリフォルニア工科大学のJean-Paul Ampuero教授、建築研究所の芝崎文一郎博士、東京大学地震研究所の木下正高教授、京都大学防災研究所のJames J. Mori教授の研究グループは、統合国際深海掘削計画(IODP)※2 における、地球深部探査船「ちきゅう」の研究航海で得られた断層掘削試料を用いて、断層の鉱物組成と各種物理特性(摩擦係数、透水率、熱重量変化など)を分析し、海溝付近の断層のすべり量を解析しました。
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まず東日本大震災を引き起こした日本海溝のプレート境界断層の試料を分析・解析した結果、同震災で観測されたすべり量とほぼ同じ、約80mの巨大すべりが再現され、本解析手法の有効性を確認しました。その解析方法で南海トラフの断層試料を解析した結果、海溝付近のすべり量は約30-50m程度になる可能性が、世界で初めて明らかになりました。
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これまで、断層試料の分析結果から、地震時に断層がどの程度滑るのかを定量的に予測することは不可能でしたが、今後、地球深部探査船でより深く掘削し、採取した断層試料を本手法で解析することで、将来の発生が危惧される南海トラフ地震時の深部固着域(地震の巣)の断層すべりの規模をより正確に評価できることが期待されます。
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本研究成果は、英国Nature Publishing Groupの「Scientific Reports」に、日本時間6月20日(月)18時にオンライン公開されました。
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※2 統合国際深海掘削計画(IODP:Integrated Ocean Drilling Program)
日・米が主導国となり、2003年~2013年までの10年間行われた多国間国際協力プロジェクト。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデスレゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、海底下生命圏等の解明を目的とした研究航海を実施した。2013年10月からは、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)という新たな枠組みの多国間国際協力プロジェクトに移行している。
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